↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オリガミ - 妹AIを神にするため、俺は成り上がる【カクヨム完結済/なろう連載中・累計59万PV】  作者: けーきまる
研究所を建設しよう

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

175/299

手フェチの変態たち

俺は詩織さんに言った。


「だから違いますよ。俺はオリ男じゃありません」


「ふふん、私を甘く見ないでください。笹木家の中でも優秀なんですから。司法試験も受かってますし!」


詩織さんは自信たっぷりだ。


「だから……ちが」


「正太郎さま、あなたはオリ男です!なぜならば!」


「な、なぜならば?」


本当にそんな証拠なんてあるのか?俺がオリ男だって決定づけるものが。


「手の甲にうっすら見える血管の形がそっくりなんです!」


て、手の甲の血管……?どういうことだ?


そのとき、イヤホン越しにオリガミの声が聞こえた。


『想定外でした……まさか血管配置に着目する方がいるとは……』


血管配置?何それ?と思っていると、オリガミがすぐに答えてくれる。まさに以心伝心だ。


『オリ男の3Dモデルの手の部分なのですが……お兄様の血管配置が忠実に再現されているのです。血管配置というのは、手の甲に浮かび上がる血管網の形状のことです。これが人によって少しずつ違うんですが、オリ男の手はお兄様のものと同じなんです。』


あのモデル、そんな細かい部分まで作り込んであったっけ?


『はい。うっすらと。映像の彩度と明度を調整しないと確認できないレベルですが……。』


オリガミとのそんなやり取りに気づいていない詩織さんが、得意げに高らかに宣言する。


「正太郎さまとオリ男さまの手の甲にある血管の配置が全く同じなんです!オリ男さまの3Dモデルは、正太郎さまの手を参考に作られたとしか考えられないのです!」


この子、手フェチだ……いや……手フェチの変態だ。


まさか手の甲の血管の配置を覚えているような変態が世の中に存在するとは思わなかった。


※※※


いや、まだだ。まだ身バレしたと決まったわけじゃない。


「確かにあの手の3Dモデルは俺の手を参考にしてるけど、だからって俺がオリ男だって証拠にはならないですよ?第一、俺はドールハウス株式会社の代表取締役で忙しいし、配信する時間なんてないですよ」


詩織さんが少し考え込むように呟いた。


「確かにそうですね……だけどこの滑らかな手の動き……間違いないと思うのですが……」


そして詩織さんは俺の手をギュッと握って、じっと見つめる。


少しずつにじり寄ってきて、手を目の前に持って行き、真剣な顔で観察している。その顔がだんだん俺に近づく。


うわー、まつげ長、瞳きれい、唇もぷるぷるだぁ。


くそ。変態なのに可愛すぎだろ。駄目だ。平常心だ。落ち着け、俺。


煩悩退散煩悩退散。観自在菩薩行深般若波羅蜜多時……


※※※


そんなときだった。


俺の背後の襖が勢いよく開き、誰かが大きな声を出して飛び込んできた。


「だめぇ!」


そして俺は後ろから勢いよく引っ張られ、ギュッと頭を抱きしめられる。


ふわっとした柔らかい感触が顔を包み込む。


そして、全身を突き抜ける幸福感。俺は……約束された地へと戻ってきた……。


安心感で、こわばっていた体の力がふっと抜けていく。このサイズ、この柔らかさ、間違いなく千穂だ……。


俺は千穂の胸に顔をうずめて、そのぬくもりを感じながらスーハースーハーしていた。


千穂が詩織さんに向かって叫んだ。


「しょ、しょうちゃんは、私の婚約者なんだから!だめだよ!」


「でも、正太郎さまはオリ男さまでしょう!私だって大ファンなんですから!少しくらい、いいじゃないですか!スパチャしまくってるんですから!」


「ち、ちがうよ!しょうちゃんはオリ男じゃないよ!しょうちゃんは、しょうちゃんは……ただの折り紙が大好きな男の子なんだから!」


あーあ……折り紙好きってバレてなかったのに……


まあ、千穂だしな。こういう嘘がつけないところが可愛いんだけど。だからこそオリガミのことを打ち明けられない理由でもあるんだよな。


詩織さんが反論する。


「折り紙好き!確定じゃないですか!やっぱり正太郎さまはオリ男さまです!」


「あっ!やっぱり、しょうちゃんは折り紙が好きじゃないかも。私の勘違いだったかも!確かに、オリ男の手の血管配置は、しょうちゃんと同じだよ!でも、しょうちゃんはオリ男じゃないの!ホントだよ!」


笑えるほど、説得力がなさすぎる。


ていうか千穂まで、俺とオリ男の手の甲の血管の配置が同じだって気づいてたのか。


千穂も変態……?いや、千穂なら変態でも全然ウェルカムだ。


『お兄様……私の観察力もまだまだみたいですね……』


オリガミは気にしなくていいよ。この子たちがちょっと手フェチの変態なだけだから。


※※※


なんとか気を取り直して、千穂に抱きかかえられたまま、詩織さんに声をかけた。


「バレてしまったなら、しょうがないですね。でも俺は折り紙をやってる動画を提供しただけで、オリ男が話してるセリフとかは、俺が喋ってるわけじゃないんですよ。見てくださいよ。俺の顔、オリ男と全然ちがうでしょ?」


「声の感じは正太郎さまとは違いますが、顔の雰囲気は10%くらい似てます!」


この子、観察力ありすぎだ。オリガミも、オリ男の3Dモデルには10%くらい俺の面影を残してあるとか言ってた。将来いい弁護士になるかもしれないけど、今だけは凡人でいてほしい。


「わかる!オリ男の面影、10%くらいしょうちゃんだよね!」


その詩織さんの言葉に、千穂が賛同する。おかしいだろ。


そして、千穂のその言葉に嬉しそうに詩織さんも反応する。


「ですよね!」


手フェチの変態同士、気があったりするのかもしれない。


俺は咳払いをして続ける。


「まあ、そんなだから、俺がオリ男の中の人とは言えないんです。実際、配信してるわけでもないですし」


詩織さんの中のオリ男のイメージを壊してしまうかも知れないが、これだけ言えば分かってくれるだろう。


だが詩織さんは、そんなに甘くなかった。


「話の内容なんてどうでもいいんです!私はあの折り紙を折る手の繊細さに惚れたんです!大好きなんです!結婚したいです!」


「け、結婚はダメだよ!」


まさか折り紙を折る動画だけで求婚されるとは……そんなことって本当にあるのか?


手フェチもここまでいくと病気なんじゃなかろうか。


「い、いや。ほら俺、千穂と婚約してるんです。だから申し訳ないですけど詩織さんとは……」


「じゃあ、二番目でも……」


※※※


そのとき、詩織さんの言葉を遮る声が飛んできた。


声の主は、笹木玲奈さんだった。


「詩織ちゃん?VTuberの中の人について詮索するのは、マナー違反ですよ?やっちゃ駄目なんですよ?」


「で、でも、玲奈姉さん!正太郎さまが、オリ」


そこで、柚希さんの通る言葉が詩織さんの声を遮る。


「詩織?あなた、ここに何しに来たの?」


そんな柚希さんの声に、詩織さんの顔が一瞬で強張った。


みるみるうちに肩が縮こまっていく。


「し、司法修習生の研修です!」


「今、あなたは何をしていたの?」


詩織さんは、さらに身を縮めて、柚希さんに頭を下げる。


「も、もうしわけありませんでした!」


柚希さんは、そんな詩織さんに声をかけた。


「謝る相手、間違えてないかな?」


柚希さんがそう言うと、詩織さんはギュルンこちらを振り向き、深々と頭を下げた。


「正太郎さま、本当に申し訳ありませんでした。憧れの方を目の前にして、つい我を忘れてしまっていました」


「いえ、もう大丈夫です。ちゃんと分かってくれたなら、それでいいですよ」


俺は千穂に頭を抱きしめられながら、詩織さんの謝罪を受け入れた。


柚希さんが千穂に声をかけた。


「千穂ちゃん、ごめんね?変なの連れてきて。私達はホテルにもどるから」


「い、いえ……私も少し熱くなっちゃって、ごめんなさい」


「千穂ちゃん、久しぶりに会えて嬉しかった。またゆっくり話そうね?」


「はい!」


柚希さんはソファから立ち上がる。


「さて。詩織、行こうか」


そう言って、柚希さんは詩織さんの手をとった。


あれ……詩織さん、柚希さんに関節決められてない?もしかして柚希さん、捕縛術とかも使えるの?


弁護士ってそんなこともできないと駄目なの?


すごすぎだろ。こええ……。


柚希さんに、ガッチリと関節を決められて、されるがままに玄関に連行されていく詩織さん。


ちらっと横目で詩織さんを見ると、彼女はにっこり笑っていた。その瞳には、まだ俺への熱い視線がしっかりと残っていた。


こっちも、こええ……。


※※※


玄関にて、笹木さんは靴を履かず、口を開く。


「じゃあ、柚希、また明日合流しましょう?」


その言葉に、柚希さんはきょとんとして聞き返した。


「玲奈?どういうこと?」


「え?私はこの家に残って泊まっていきますよ?正太郎さまと千穂さんの甘々トークを聞かないと駄目ですからね?楽しみです!」


そんな話、初耳なんだが。


俺が驚きの目で笹木さんを見ていると、柚希さんが呆れたような声で言った。


「早瀬、玲奈も連れてきて」


すると、静かに柚希さんのそばに控えていた早瀬さんが前に出てくる。


「まってください!早瀬さん、話し合いましょう!私は正太郎さまと千穂さんとお話したいんです!」


「笹木さま、失礼します」


そう言うと、早瀬さんが手際よく笹木さんの腕を取って、関節を決めながら外への移動を促す。


「早瀬さん!離してください!今日はこの家にお泊りするんです!」


そう言いながらも、早瀬さんに無慈悲に連れて行かれる笹木さん。


相変わらず雑な扱いをされているみたいだ。


「じゃあ、正太郎くん、お騒がせしました。また明日ね?」


「は、はい……」


そう言って、柚希さんは詩織さんの関節を決めたまま、一緒に去っていった。


「正太郎さま!また明日お会いできるのを楽しみにしています!」


最後に、玄関の外から、詩織さんの大きな声が響いてきたのだった。


笹木一族……マイペースすぎだろ……ヤバすぎだろ……


俺の背筋に冷たいものが走ったのだった。


そんな俺は、今も千穂に頭を抱きかかえられたままだった。俺は、自分の意志ではここから離れられないのだ。

もし気に入っていただけたら、【ブックマーク】と【下の評価 ★★★★★】をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。