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オリガミ - 妹AIを神にするため、俺は成り上がる【カクヨム完結済/なろう連載中・累計59万PV】  作者: けーきまる
研究所を建設しよう

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弁護士・藤崎柚希

オリガミとの会話は続いた。


『被害届を確実に受理してもらうためには、弁護士が必要です。』


「弁護士?」


『はい。弁護士が入れば警察は、被害届を受理せざるを得ません。もともと、被害届を受理するのは警察の義務です。弁護士の前でも不受理をつらぬけば、職権濫用罪や公務執行妨害罪に該当する可能性があります。』


「そっか。じゃあ、弁護士を探さないとな」


俺が駅前で見かけた弁護士事務所の看板を思い出していると、その考えをオリガミが遮ってくる。


『お兄様、この土地の弁護士は避けましょう。』


「え?なんで?」


『この土地は人間関係が濃密すぎます。警察と弁護士がつながっている可能性も考えられます。』


「なるほど……この地域以外から探したほうがいいってことか」


『はい。不本意ですが、藤崎柚希に頼るのが一番効率的でしょうね。』


たしかに、弁護士といえば柚希さんだな。


ただ「不本意」か……なんでオリガミはそんなに柚希さんにだけ微妙な反応を見せるんだろう?


ちょうどいい機会だし、この際理由をはっきり聞いてみよう。


「オリガミはさ、なんで、そんなに柚希さんに対抗心を出すんだ?」


オリガミは少し間を置いてから答えた。


『……おそらくですが、お兄様が藤崎柚希に本能的な恐怖心を持っているからかもしれません。その不安を感じ取った私の使命感が、少し妙な形で表に出てしまっているのだと思います。』


え?俺のせい?でも……


「否定できない……」


確かに俺は柚希さんに対してどこか怖さを感じてる気がする。名前を聞くだけでちょっと緊張するし。これ……早瀬さんと同じじゃね?


理性では味方だろうと分かってるんだけど、本能的な部分でどうしてもね……


「昔はそんなこと無かったんだけどな」


『それだけお兄様が成長されたということです。……藤崎柚希に関しては私が警戒しますので。お兄様はいままで通りでいらして下さい。』


俺の柚希さんに対する恐怖心がなくならない限り、オリガミの反応も変わらないってことか。……これは、簡単には克服できそうにないな。


あきらめよう。オリガミにはそのままでいてもらおう。


※※※


オリガミと今後の行動について一通り話を終えた。


俺はすぐに叔父さんに電話をかけることにする。


冷静に考えれば、爺ちゃんと婆ちゃんは叔父さんにとって実の両親だ。完全に事件の当事者と言える。


この状況を相談すれば、特に無理を頼まなくてもきっと最適な弁護士を紹介してくれるはずだ。


プルルルル……プルルルル……


ガチャ。


『正太郎か?どうした?』


「えっと、今、じいちゃんの家にいるんですけど……」


『放火の件か?』


「ええ。やっぱり知ってたんですね」


『そりゃあ、自分の父親と母親のことなんだからな。事情は全部聞いてる』


「そうですか……すみません。俺が男を挑発しすぎたせいの放火だったかもしれません」


『いやいや。ちょっとくらい挑発されたくらいで放火なんてするやつ、元々頭おかしいんだよ。お前のせいじゃない。それに、お前が放火を防いでくれたんだろ?ありがとうな』


「いえ……でも、これからはもう少し慎重に行動しようと思います」


『慎重になりすぎるのも駄目だぞ?こんなことに正解なんて無いんだから。ただ……マキャベリの言葉に「恐れられても憎まれてはならない」ってのがある。少しは行動の指針になるかもな?』


恐れられても憎まれてはならない……恐れられているだけなら手は出されないけど、憎まれると復讐されるリスクがあるってことか。


なるほど……別に煽る必要はなくて、ただ怖がってもらうだけでいいのか。なんだか、目の前が開けた気分だ。


「はい、肝に銘じます」


『まあ、皆無事で良かったよ。ところで、早瀬からも聞いてるけど、弁護士を探してるんだろ?』


「はい。地元の弁護士だと警察と繋がってる可能性もあるかと思いまして……」


『大丈夫。柚希が数人連れて、もうそっちに向かってるから』


「それで弁護士を紹介……えっ!?もう向かってるんですか!?」


『驚いたか?何時間か前に、もう出発してるんだ。そろそろそっちに着く頃だと思うぞ』


「そ、そうなんですか?」


『ああ。俺は介護ロボット発表の準備がまだあって忙しいからな。親父たちに危険があるわけでもなさそうだし、今回は正太郎たちに任せるよ』


「え、ええ。分かりました」


『じゃあ、あとはよろしく頼む。柚希がやりすぎないか、ちゃんと見張っててくれよ』


……見張るって言われても、それは俺には無理だと思うのですが。


※※※


そして今、じいちゃんの家の居間には、柚希さんたちが集まっていた。


今、ここには、俺、柚希さん、笹木さん、そして一人見たことがない女性がいる。


展開が早すぎる。もう少し心の準備をする時間が欲しかった。


ソファに座った柚希さんが口を開く。


「正太郎くん、久しぶりだね。東堂議員を味方につけたって話、聞いたよ。すごいね」


「お、お久しぶりです。東堂議員は話が分かる方で助かりました。はは……」


「正太郎様!お久しぶりです!さすがですね、あの東堂議員まで動かしてしまうなんて!社長、ノリノリでしたよ?正太郎様のおかげで大儲けだって言ってましたよ?」


どうして笹木さんまで来てるんだろう?柚希さんのサポート役?必要あるのかな?


「笹木さんもお久しぶりです。本日は……?」


「司法修習生のウチの親戚の子が見学にきてるので、ついてきちゃいました!」


「な、なるほど……」


司法修習生って、司法試験に合格した後の研修中の人だよな。つまり、弁護士の卵ってことか。


笹木さんとのやり取りを聞いて、柚希さんが口を開く。


「紹介するね。この子は笹木詩織(しおり)。玲奈の親戚で、今は司法修習生としてうちで研修中なの。今回の案件、現場で学ばせてもらってもいいかな?」


「かまいませんが……」


俺は、笹木詩織と紹介された女性に視線を向けた。紺色のスーツがすらりとした体に良く似合っている。身長は平均的で、ぱっちりとした大きな目が印象的だ。髪は黒く、後ろでポニーテールにまとめられている。なんだこの人、ものすごく可愛いぞ。


「お初にお目にかかります。笹木詩織と申します。今回は司法修習生として勉強させていただきます」


「ドールハウス株式会社代表取締役の藤崎正太郎と申します。こちらこそよろしくお願いします」


「いつも、玲奈姉さんと兄さんから素晴らしい方だとお話を伺っております!」


「兄さん……?ああ!卓郎さんの妹さんですか!」


確かに卓郎さんが言ってたな。超かわいい妹がいるって言ってたし、俺が気に入るだろうとも言ってた。たしかに、めちゃくちゃ可愛い。


「はい!私のことも詩織とお呼び下さい!」


「詩織さんですね?これからよろしくお願いします」


「はい!」


俺たちの自己紹介が終わると、柚希さんが再び口を開く。


「他にも二人弁護士を連れてきてるけど、今はホテルに待機させてる。警察署に向かうときに同行してもらうから」


「そんなに多くの弁護士を連れてきちゃって、大丈夫なんですか?」


それに、そんなに弁護士って必要なんだろうか?


「大丈夫だよ。お義父さんとお義母さんに手を出した責任は、しっかりとってもらわないとね」


目のハイライトがなくなってる。怖い。


柚希さん、本気で警察に圧力をかけるつもりだな。


心強い。


「そうですね。同感です。今回の件に関わった人たちには、きちんと責任を取ってもらおうと思います」


「では、これからのことについてはなそうか。玲奈と詩織は、少しの間お口チャックね」


お口チャックって……つい子供に使う言葉が出てしまったのだろうか。


でも、確かに笹木の方たちがいると、話が進まなくなりそう。


静かにしててもらえると、とても助かる。


以前、笹木さんと卓郎さんの二人がかりの質問攻めを受けたときは、本当に頭がパンクしそうだったからなあ。


※※※


柚希さんが口を開いた。


「正太郎くんは、今回の件、どういう形で終わらせたい?」


単刀直入な質問だ。


「そうですね……。放火男の逮捕と収監。それと副署長にはしっかり反省してもらいたいです。あとは、所轄警察署に恩を売れるとありがたいです」


「恩を売る、というのは?」


「はい、弱みでもいいですが……できれば両方手に入れられるのが理想です」


弱みと恩、両方得られればベストだ。


「なんで副署長?」


「俺たちは、副署長が、この件を無かったことにしようとしている黒幕だと考えています」


柚希さんたちも、黒幕についてはまだ十分に調査できていない様子だ。まあ、到着したばかりだし仕方がない。


そんな調査を瞬時に完了させてしまうオリガミはやはりすごい。


柚希さんがさらに聞いてくる。


「副署長が黒幕だという根拠は?」


「こちらを見て下さい。放火男の家系図ですね。副署長は放火男の叔父です」


俺は、タブレットに表示させた放火男の家系図を見せる。


柚希さんはそれをじっくり確認し、スマホで家系図の写真を撮った。


俺はさらに説明する。


「また、放火男のSNSで、親族の後ろ盾があるという趣旨の書き込みをいくつか確認しています。それから、署内での会話を高感度マイクで録音し、音声解析した結果、俺が事情聴取を受けている間に『副署長』という名前が出てくる回数が明らかに増えていました」


「以上の理由から、副署長がもみ消しの黒幕だと考えています」


「なるほど……親族に犯罪者が出ると出世に響くから、もみ消そうとしたわけか。理屈は通るね。やっぱり正太郎くんのところのサポートAIはすごいね……」


確かにオリガミはすごい。ただ、サポートAIことオリガミについては、これ以上柚希さんと詳しく話すべきではない。


「それから……これが犯行時の映像です」


「え?犯行時の映像まであるの?」


「はい。もみ消される危険があったので、適切なタイミングで提出する予定です」


「それはいい判断だよ」


やっぱり柚希さんも、オリガミと同じ発想なのか。証拠のもみ消しなんて、本当にあるのか。法の番人がこれかよ。全くもって理不尽だ。


「これをネットで公開しないのは、何か意図があって?」


「はい。所轄警察署と全面的に争うのを避けたいので。あと、できれば検察まで話が広がらないように進めたいです」


「なるほどね。そういう形で弱みを握って、恩を売るわけか。よく考えたね」


そこを一瞬で見抜く、あなたが怖いです。


「それで、正太郎くんは私にどう動いてほしい?悠斗から、正太郎くんの指示に従うように言われてるんだよね」


「では……明日もう一度、被害届を出しに行く予定なので、ぜひ柚希さんたちにもご同行いただきたいです」


「わかった。私たち弁護士が一緒なら、警察も被害届を無視できないからね」


「それと……柚希さんたちには、できるだけ強く警察に問い詰めてほしいんです。で、その後で、俺が『まあまあ』ってなだめる役をやらせてもらえたら、と……」


「いわゆる“グッドコップ/バッドコップ作戦”ってやつかな。正太郎くんが優しい警官役、私が厳しい警官役ってことで?」


「はい。お手数をおかけしてしまいますが……」


「大丈夫。厳しい役は慣れてるから、任せて」


柚希さん、頼りになる。


それから、少し首を傾げて俺に尋ねてきた。


「でも、なんで警察に恩を売っておきたいの?」


「……将来的に、じいちゃんたちが産業スパイに標的にされるかもしれないので……できるだけ情報が入って来やすいように、この地域の警察と繋がりを作っておきたいんです」


「なるほどね。その情報、私たちにも共有してもらえる?」


「もちろんです。じいちゃんやばあちゃんを守りたい気持ちは、叔父さんたちも同じだと思いますから」


絶対に敵に回したくないけれど、味方についてくれるなら、これほど心強い人はいない。


「わかった。それじゃあ、明日からはその方針で動こう。よろしくね」


「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」


※※※


俺と柚希さんの話が一段落したと考えたのだろう。


それまで静かに俺たちの会話を聞いていた笹木詩織さんが、突然勢いよく声を上げた。


「正太郎様、オリ男さまですよね!」


は?


「え?オリ男?ち、違いますよ?」


「いえ!絶対に間違いありません!その繊細でしなやかな手の動き……オリ男さまにそっくりなんです!正太郎様がオリ男様の中の人だったんですね!それに、柚希先輩と堂々と話しているそのお姿、かっこよかったです!」


そう言いながら、熱い眼差しで俺を見つめて、両手で俺の手を包み込むように握ってきた。あっ……柔らかい。超絶美女?の行動だ。破壊力がありすぎる。


いかん、いかんぞ。心を揺らすな。俺には千穂とネムがいるじゃないか。


色即是空・空即是色。


そう言えば、以前、笹木卓郎さんが言ってたっけ。妹は大のオリ男ファンでスパチャしまくってるとかなんとか……。


これは……中の人バレだ。まずいことになった!

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