04
仕業を話したらトウマスは話を聞いて、怒りをあらわにした。
「ベッカーのやつ……! こんな卑劣な真似を……」
怒りに満ちた顔でベッカーの屋敷に向かおうとしたが、腕を掴んで止めた。
「やめてください、トウマス様。これは、私とベッカー様の問題です」
「しかし……な」
「大丈夫です。私には、私の戦い方があります」
微笑みかけたらトウマスは、強い意志を感じ取り、静かに腕を下ろした。
「わかった。だが、何かあったら、すぐに私を呼んでくれ」
トウマスはそばにいてくれた。温かい心遣いに、少しだけ胸が熱くなると翌日、ベッカーの屋敷に乗り込んだ。
「ベッカー様! あなた、私の池に何をしたか、わかっているのですか!」
怒鳴ると、ベッカーは、しらばっくれた顔で答えた。
「なんのことだ? 私は何も知らないな」
「とぼけないでください! あなたの仕業だということは、わかっています!」
「証拠はあるのか? なければ、ただの言いがかりだぞ」
ベッカーは嘲笑うので、悔しさに唇を噛みしめた。
確かに、ベッカーが汚染物質を投げ入れたという決定的な証拠はない。
「くっ……!」
何も言えずにいると、ベッカーは勝ち誇った顔で言った。
「おとなしく店を閉めれば、苦労もしなくて済むんだ。どうだ、もう諦めたらどうだ?」
心の中で固めた。
(諦める?冗談じゃない。私は、自分の力で店を守る)
深々と頭を下げた。
「ベッカー様、わかりました。あなたの言う通りにしましょう」
ベッカーは驚いた顔をした。
「本当か?」
「はい。その代わり、一つだけお願いがあります」
ベッカーに耳打ちし、ニヤリと笑う相手。
「いいだろう。その話、乗った」
提案を受け入れたのは、店を諦めたと思い、油断しているから本当の目的は、別のところにあったので漁港で、一人、釣りを行う。
「釣りスキル、発動」
夜通し釣りを続け、大量の魚を釣り上げ、魚を、ベッカーの屋敷に届けた。
「ベッカー様、約束の品です」
大量の魚を見せると、ベッカーは驚いた顔をした。
「まさか、本当にこんなに大量の魚を」
魚を渡すと、すぐにその場を離れた。
「ショップスキル、漁業組合の知識、発動」
念じると、頭の中に、漁業組合の組織図や運営方法が、詳細に浮かび上がる。
(よし、これなら)
翌日、町中の漁師たちを集めた。
「皆さん、ベッカー様は、この町の漁業を支配しようとしています。このままでは、皆さんの生活が、脅かされてしまうかもしれません」
漁師たちは、不安そうな顔をした。
「しかし、どうすれば……」
「皆で、協力するのです。漁業組合を組織して、ベッカー様に対抗しましょう!」
漁業組合の設立を提案すると、漁師たちは、熱意に心を動かされ、漁業組合の設立に同意し設立し、ベッカーとの交渉に挑んだ。
「ベッカー様、私たちは、もうあなたの支配下にはなりません。漁業組合を設立し、あなたとは、対等な立場で取引をします」
顔を真っ赤にして怒った。
「この裏切り者め! 覚えておけ!」
捨て台詞を残して去っていったが、ベッカーの脅しに屈しなかった。
「やった……!」
漁師たちと、勝利の喜びを分かち合った夜、トウマスに、ベッカーとの戦いの顛末を話す。
「君は……本当にすごい。私には、君のような強さはない」
微笑みかけた笑顔は、冷たい笑顔とは、全く違うものだったが、トウマスに認められる必要はない。組合の設立は、月夜寿司に安定したネタの供給をもたらした。
漁師たちは信頼し、最高の魚を優先的に届けてくれるようになったことでベッカーは、そのことに激怒していたが漁師たちの結束は固い。彼も手出しができない。
「クーラカーナ様、今日の大トロです! 最高の状態ですよ!」
威勢のいい声とともに漁師さんが新鮮なマグロを届けてくれ、感謝の言葉を述べ大きなマグロを丁寧に捌いた。
「すごい……まるで宝石みたい」
カウンター越しに、お客さんたちが感嘆の声を上げていき、心を込めて大トロの握りを握り、お客さんの前に出した。
「どうぞ」
一口食べたお客さんは、目を見開いて感動の涙を流し、月夜寿司は、町の誰もが知る名店へと成長していた。
連日、店の前には行列ができ、お客さんたちは何時間も待って寿司を求めたが、繁盛するにつれて、新たな問題も生じる。
「クーラカーナ様、お客さんが多すぎて、一人では回せませんよ」
常連のおじいさんが、心配そうな顔で言った言葉にハッと気づかされた。
確かに、朝から晩まで働き詰めだし、寝る間も惜しんで魚を捌き、寿司を握り、時には疲労で倒れそうになることもあると。
(このままではいけない……この店は、私一人のものじゃない。みんなの月夜寿司)
店の拡張を決意した。まずは、働く人を雇うこと、もっと広い場所で、もっとたくさんのお客さんに寿司を味わってもらうこと。
店の拡張について、トウマスに相談してみると、相手は話を聞いて、真剣な顔で言う。
「君の決意、素晴らしいと思う。だが、資金はどうするんだ? 君の家は、まだ借金を抱えているだろう」
顔を曇らせた。




