王城へ
「お客様宛てにお手紙が届いております」
翌日、宿の娘から一通の手紙が届けられる。
内容は会談について。
今日の十二時に王城の会議室にて会談を執り行うという旨の内容が記されている。
「いよいよ来たのう」
王家の紋章が記された入城証と手紙を棚に丁寧にしまうと、失礼のないように無精髭を剃って身だしなみを整える。
「まずは服装じゃな、王都に御用達の店がある」
「御用達となれば、かなりの高級店になるわね。
って、貴方お金ないじゃないの」
「貸してくれぬか?」
「仕方ないわねぇ」
今回ばかりは仕方ないと、リラは渋々承諾する。
「そういえば私も装備を整えなおさないといけないのよね」
身分証以外の仕事道具が没収された以上、一から用意しなおさなければならない。
「まあ、装備は店売りで事足りるし、今は会談を優先ね」
朝餉を終え、城下町を歩く二人。
スリに気を付けながら、目的の店にまっすぐ向かう。
王室御用達の看板の掲げられた、簡素な店構え。
屈強な警備員が入り口の左右に立っている。
「お客様、申し訳ありませんが当店は―――」
入店しようとした途端、警備員が腕組をしながら入り口に立ちはだかる。
貧しい身なりから不相応と思われたのか、入店を止められる。
「冷やかしじゃないわよ、ほら」
金貨の詰まった財布の中身を警備員に見せると、彼らは「失礼しました」と驚きの表情と共に態度を軟化させる。
店に入ると簡素な外観とは打って変わって凝った内装が視界に入る。
床には絨毯が敷かれ、陳列されている衣服は高級素材がふんだんに使われている。
「これとかいいんじゃないかしら?」
黒をベースにした紳士向けの服。
金色のボタンや装飾が入れられ、威厳は十分にある。
「良さそうじゃのう」
「試着してみましょう、お願いできるかしら?」
近くにいた店員にルーベンスの試着を要望、試着室に案内される。
「ついでに私も用意しようかしら」
今後の仕事も見据えて衣服を選び試着する。
黒を基調とした女性獣人用の服。
もちろん、尻尾を出せるように設計されている。
「とてもお似合いですよ」
おだてる店員。
代金を支払い、衣服を購入して二人で店を出ると、王城に向かう。
「お前、今度は何の用だ!?」
リラに気が付くなり、声を荒らげる門番。
「国王陛下に招待されました」
手紙に同封された入城証を見せる。
「…通って良し」
入城証があるのならば仕方ないと、門番は姿勢を正して二人を入城させる。
「いよいよじゃのう」
立ち止まって呼吸を整えるルーベンス。
長年過ごしてきた王城のはずが、踏み入れた途端に強烈な緊張と重圧に包まれる。
「いきましょう」
「うむ」
リラに促され、ルーベンスは再び足を進める。




