凌遅刑
今回は拷問の描写があります。
苦手な方は閲覧を控えて下さい
王都の地下。
松明の明かりが照らす小さな牢に彼女はいた。
両手足は鎖によって壁に拘束され、衣服は下着だけ残されている。
手足と違って体毛のない露出した胴体、当然ながら防寒性はない。
「まさか陛下の執務室に侵入するとはな…」
意識のないリラを鉄格子越しに眺めるライラット。
するとそこに道具箱を携えたシャラヴェルがやってくる。
「ここで拷問するのか?」
「貴方も参加しますか?」
「いや、遠慮しておく。
…間違っても殺すなよ?」
「御心配なく、陛下の意志は理解していますので」
そう言ってライラットが地下牢を去ると、シャラヴェルはリラの牢を開けて、道具箱から取り出した薬品の入った注射器を容赦なく突き刺す。
「ひぐぅ!?」
全身に走る激痛に意識が戻るリラ。
同時に地下牢の寒さが 覚醒した彼女の体を無慈悲に襲う。
「お目覚めですね」
「貴女…やってくれたわね」
両目でキッとにらみつける。
「陛下の執務室に侵入した理由、聞かせてくれますね?」
リラの右頬に爪を立てながら、尋問に入る。
「先代の国王に頼まれたのよ。手紙を届けてほしいって」
「では、なぜ執務室に無断で侵入を?」
「門番に用件を言ったら門前払いされたから仕方なくよ。
危害を加えるつもりはなかったわ」
「見え透いた嘘を…」
シャラヴェルがパチンと指を弾くと、リラの頭上に魔法陣が現れ、そこから冷水がザバァと音を立てて降り注ぐ。
「危害を加えるつもりがないのであれば、これをどう説明するおつもりですか?」
道具箱からアームブレードを取り出して、彼女の前で展開する。
「この武器は暗殺に使われる代物です。
あなたは手紙を届ける口実で陛下に近づき、命を奪おうとした。
違いますか?」
「ち、ちちち、ちがうわよ」
冷水で体温をさらに奪われたことで呂律の回らなくなっているリラ。
「そそそそ、それにわわわわ、私はただの冒険者よ。
ここ、国王の暗殺なんて、そそそ、そんな大それたこと…熱ッ!」
再び弾かれるシャラヴェルの指。
今度は周囲の床に魔法陣が現れ、そこから青色の炎の柱が出現する。
鉄をも溶かす超高温の火焔。
リラ被せられた冷水が瞬く間に蒸発し、牢内が一気に乾燥する。
「とぼけても無駄です、リーヴェル」
「ッ!…やっぱり知っていたのね」
目の前の相手、それもよりによって魔帝の娘に正体がばれていることに、内心焦るリラもといリーヴェル。
「貴女の情報は調べていました。
先の大戦、魔帝軍相手にずいぶんな御活躍でしたね」
「なるほど、つまりこれは魔帝国としての復讐も兼ねているという訳ね。
ならさっさと殺しなさい、それでもあなた達が戦争の敗北者であることに変わりはないわ」
せめてもの抵抗、まだ自由の効く口で目の前の相手に罵声を浴びせる。
しかし彼女は一切表情を変えず、道具箱から取り出した刃物で動けない相手の体に傷を入れ始める。
「グッ…あ…」
苦痛に顔をゆがめるリラ。
「凌遅刑というのをご存じですか?
少しずつ切り刻んで長く苦痛を与える処刑方法です。
記録によれば、四千回以上も刻まれても死ねなかった人間もいるとか」
「魔族らしい陰湿な殺し方ね…」
「ああ、御心配なく。殺しはしません。
魔法でどんな傷も癒せるので、身体的後遺症も残りません。
その代わり、私が考えられるだけの苦痛を気のすむまで与えます。
まあ、暗殺業で命を奪い続けたことに対する因果応報と思って受け入れてください」
淡々と作業を進めるシャラヴェル。
目の前で発せられる彼女の悲鳴を歯牙にもかけず、名高い職人のように一刀、一刀、ゆっくりと丁寧に体を刻んでいく。




