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王城

 地下水路の梯子を上り、石レンガに見せかけた宝物庫のハッチを少しだけ開いて聞き耳を立てる。

(さすがに誰もいないわね)

 静かな室内に人がいないことを確認すると、静かに侵入する。

(財宝の数、減っているわね)

 復興の資金用として売り払ったのだろう、以前はあった金塊や宝石類をはじめとする換金性の高い代物が軒並み消失している。

(国民思いの王様ね。

 だけど、大丈夫かしら?)

 国営のための財源が激減していることに懸念を覚えつつ、換気口に侵入。

 人狼族の身体の柔らかさを活かして狭いダクトを進み、王城の屋根の上に出る。

 晩秋の風に吹かれながら城下町を一望すれば、仮設の建物が半分近くを占めていることが分かる。

 壁に体を近づけて屋根伝いに渡る。

 従者たちの活動音を窓越しに聞きながら、音を出さないように一歩ずつ目的地に近づく。

 

―――ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!


 突如として響き渡った悲鳴にリラの動きが止まる。

 同時に何人もの従者がどたどたと足音を鳴らして一か所に集まる。

(聞こえた場所は、トイレね。

 ご愁傷さま)

 何があったのかを察しながら、この騒ぎに乗じてリラは屋根を走って窓から執務室に侵入する。

「失礼するわ」

 窓扉を開けて、堂々と入室。

 現国王であるアルトロと対峙する。

「君は確か討伐軍にいた…」

「先代の国王陛下からの手紙を渡しに来たわ」

 突然の侵入者に、とっさに剣を取って身構えるアルトロ。

 対するリラはルーベンスからの手紙を机に置く。

「それじゃ、私の用事はこれで済んだから失礼するわ。

 あと、城の守りはしっかりした方がいいわ。

 このままだと貴方はともかく、臣下たちの命はないわよ」

 そう言って出口に向けて体を向けた直後、リラの体が止まる。

「そのまま両手を上げてください」

 右手人差し指をリラの額に突き付けながら、冷たい声で命令するシャラベル。

 言われるがままにリラは両手を上げる。

「貴女、魔帝の…」

「まさか1日に刺客が2人も現れるとは、確かに、貴女の言う通り警備体制を強化したほうが良いですね」

 直後、シャラベルが指でリラの額を弾くと、彼女はそのまま力を失ったように後ろに倒れる。

「お、おいシャラベル、何を!?」

「この者の意識を奪いました、後は私の方で処罰いたします」

 困惑するアルトロに、彼女は淡々と返す。

「それと、もう1人の刺客はトイレの配管に設けた格子にはまって動けなくなっておりましたので、とりあえず煮えたぎるお湯を顔に掛けておきました」

「そ、そうか…」

「それでは失礼いたします」

 アルトロに一礼すると、シャラベルはリラを担いで一瞬で姿を消していった。 

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