ダイナカイト要塞
帝国を守る要塞の一つ、ダイナカイト。
帝都エンデルへ続く道に築かれたこの要塞はアルガン王国の王城に匹敵する規模を持ち、飛行船を一撃で撃ち落とす魔導高射砲をはじめ魔導戦車や機関魔銃などのあらゆる兵器が配備されており、古今より侵略者を退けてきた。
先の大戦においても魔帝軍は五度にわたってこの要塞に挑むもついに攻略することはかなわず、死体を積み重ねるだけとなった。
「いつ見てもすごい威容だな」
城塞前の離発着場から地上に降り立ったグレゴールが見上げながら声を漏らす。
黒鉄に覆われた建造物に配備された無数の魔導砲。
無数の銃眼からは長身の機関銃が飛び出し、全ての砲口がこちらに向けられているような錯覚に陥る。
要塞の門がゴゴゴという重低音を響かせて左右に開く。
奥から現れたのは黒い衣服を身をまとった近衛兵と帝国の外交官。
シンプルながらも整ったデザインの制服をまとい、洗練された動きで国賓の前に出る。
「お待ちしておりました、外交官のデリンスキーです」
一陣の風に赤い髭を揺らしながら、アルトロ達に恭しく接する。
「……」
一方で飛行船の中で留守番を任されたシャラヴェル。
船内に取り付けられた望遠鏡でアルトロ達が要塞に入っていく様子を確認すると、望遠鏡を動かして兵装をくまなく観察する。
(魔帝軍を五度も退けたとあって、堅牢だな。
陸はもとより、空に対しても抜かりがない)
屋上に設置された高射砲にズームする。
二連装の長砲身。
三度目の侵攻時に空襲を目論んだ魔帝軍飛行隊を次々と撃ち落とした。
(話には聞いてはいたが、道理で何度攻めても落とせなかったわけだ。
ここから見える兵だけでも三千は居るうえに、正門だけでも五百挺の銃砲が銃眼からのぞいている。
しかも高射砲は置けるだけ置いていることから制空権の重要さをしっかり分かっている。
父は人間を侮りすぎたな)
戦争の転換点となったダイナカイト要塞攻防戦の報告書を思い返しながら、シャラヴェルは望遠鏡から離れる。




