空路
着々と修復の進むアルレン公道。
汗水垂らして体を動かしている屈強な作業員の頭上を、一隻の飛行船が進む。
王国の紋章が描かれた飛行船、ガリア。
今から三年前、魔帝国がニーナ大陸に侵攻を開始する直前に世を去った先々代国王の名を冠するこの船にアルトロ達は乗っていた。
「……」
飛行船の甲板。
備え付けられた大型の望遠鏡越しに王国の現状を眺める。
青々と生い茂る緑鮮やかな穀倉地帯が目に映る一方で、王都を挟んで反対側にある隣国のダンバルカン王国には大規模な侵攻を受けた際の焼け野原や瓦礫の山が広がっており、戦争の激しさをうかがい知ることができる。
「……出兵を渋った先代の判断は、正かったのかもしれないな」
先の大戦時、交易を通して諸外国と結びつきの強かったダンバルカン王国は外交を兼ねて各国に積極的な派兵をしていたが、その代償として各戦場で兵力を消耗。
結果、国内の兵力は半減し、その隙を魔帝軍に突かれる形で攻撃を受け壊滅的な損害を被った。
一方で臆病者との顰蹙を受けながらも大規模な出兵を拒み続け、国内の防衛力をひたすら上げ続けていた先代の判断によってアルガン王国には十分な戦力が残っており、シャラヴェル率いる攻撃部隊を退けることに成功した。
王が不在だったことも結果としては功を奏したことが彼女の発言で判明した。
すべては結果論にすぎない事ではあるが…
「戦争は、何があるか全く予想が付きません。
今回は先代の判断が王都を守ることにつながりましたが、何かが少しでも違っていれば、王国に最悪な結果をもたらしていた可能性もあります。
いずれにせよ、戻らない過去よりも今を見るべきかと」
「…そうだな」
シャラヴェルの言葉にうなづいて望遠鏡から離れるアルトロ。
前方にはアレハンドロ帝国の都市が広がっている。
冒険者時代に活動の拠点として一時滞在していた帝国。
皇帝マーダルネスの統治の下、機械を中心とした高度な文明を築いており、王国の百年、二百年先の未来を行っているとも言われている。
「休まれますか?」
「そうだな、部屋に戻る。
紅茶を淹れてくれるか?」
「承知いたしました」
給仕室に行って国王用の茶を淹れる。
王室御用達の特別製ではなく、市場で売られている安い代物であり、これが口に合うのだという。




