土木工事
視察から一週間後、アルレン公道に多くの作業員と建設資材が集められた。
各大臣との会議の結果、主要な交易路の修復が最重要課題であるとの結論になった。
交易による物流や人の往来の活発化が復興や難民の帰郷などの問題解決のほか、王国の今後の経済面においての大きな役割を持つと判断したのが理由だ。
「それでは予定通り始めてくれ」
「仰せのままに」
現場監督に指示を出すと、監督の指揮に合わせて作業員が工事を開始。
王国各地の魔石鉱山から運ばれてきた残土を穴に入れて埋め立て、馬に曳かせたローラーなどを駆使して均していく。
元々は黄土色の地面だったが、魔石鉱山の特有の黒色の土砂が混ざり、不揃いな色の見た目になっていく。
「見た目が悪いな…」
「道路としては機能しますし、あまり贅沢は…」
「そうだな」
外観の良し悪しよりも、あくまでも実用性を優先して作業を進めていく。
作業がある程度進めば重りを乗せた馬車を通して走行に問題がないかを確認、同時に道の両脇にそこそこの大きい木を植えて木陰で旅人たちが休めるようにする。
「ところで、道中にある橋の修復が完了するまでの交易はどうされますか?一応、旧道がありますがあまり整備がされておらず、その上にモンスターや野生動物に遭遇する危険があります」
「工兵を動かして仮設橋梁を造る。耐久性は低いが、橋が完成するまでの繋ぎには十分だ」
「承知いたしました」
アルトロの提案にうなづく現場監督。
「さて、次は帝国との外交だな」
着々と進む工事を一瞥しながら、地平線の先にある帝国に思考をめぐらす。
魔帝軍の侵攻により国境の都市が灰と化したとはいえ、大陸一の大国は簡単には揺るがず、いまだに帝国としての威信を保っている。
国力も諸国を圧倒しており、千軍万馬の兵力に加え、それらの兵站を支えるレンデル大穀倉地帯。
大穀倉地帯だけでもアルガン王国の年間食料生産量の三十倍に匹敵するとされ、食料を輸出にまわしても帝国民達に十二分に行き渡るほどである。
また、産業において欠かせない工業用機械や軍事の要である魔導戦車などの強力な兵器を動かすための燃料である魔鉱石を産出する魔石鉱山の大量保有はもちろん、アルガン王国全土に匹敵する広さのエトワール大森林からは都市一つが築けるほどの莫大な木材が簡単に手に入る。
軍事、経済、すべての面において圧倒する帝国は、間違いなくシャラヴェルの言う『復興戦争』のカギを握っており、先代が帝国との外交に力を入れていたのも頷ける。




