難民たち
交易路の視察を終えたアルトロ達。
ボロボロの交易路と高騰する建材の問題に頭を悩ませながら、次の課題へと向かう。
王都の門を出てから一時間ほど歩いた場所にある平原。
涼しい風の吹くこのエリアは元々は王族専用の避暑地であり、堅牢な城塞に守られていたが、先代のルーベンス王が戦災から逃れた難民たちのために一部を開放。
先代の私財の下、今は難民たちが安心して暮らせるように仮設住宅が建てられているほか、収入を確保できるように簡単な仕事が与えられている。
「彼らも元の場所に返してやらないといけないな」
「しかし難民たちを故郷に返そうにも、見せしめとして彼らの故郷を徹底的に焼き払ったために帰す場所がありません。
立て直すにしても、先述した問題が立ちはだかります」
城塞の壁上から難民たちを眺めながら、グレゴールに対してシャラヴェルがそう呟く。
現状、難民たちも王国の労働力として農地や工場で働いてくれてはいるが、文化や風習などの違いによる現地民との衝突やすれ違いが相次いでおり、さらに増えすぎた難民たちが王国民の仕事を奪う事態になってしまっている。
このまま何もしなければ遅かれ早かれ国政にとって致命傷になることは容易に予見できる。
「ほんと、魔帝軍は厄介なことをしてくれたな」
隣にいるシャラヴェルに嫌味を放つグレゴール。
「恐怖を伝播させる為にわざと逃がしたのですが、こんなことになるのならば老若男女問わずに誰一人残らず殲滅するべきでした。
御命令とあれば今夜のうちにモンスターの襲撃に見せかけて殺処分いたしますが、いかがされますか?」
「......」
倫理観のない発言を無視して、アルトロは思案する。
「とりあえず、仕事の振り方を考え直そう。
今後は人種や国籍に分けて同族同士で働かせるのはどうだ?
それと住居も民族ごとに分けるとか」
「それならば民族による違いを原因とした作業現場でのすれ違いや衝突は防げるかと。
しかし、民族格差を生むことになりかねません」
「民族格差...」
「仕事や住環境による違いを始め、細かい優劣などを理由に民族同士の争いを生むことになります。
適切に対処しなければ、内戦につながっていくでしょう」
「政治って難しいな...」
統治する立場になって分かる、先代の苦労。
しかし王位に就いた以上、目の前の問題に真剣に取り組まなくてはならない。
一陣の涼風が、アルトロ達の髪を揺らす。
「陛下、そろそろ昼飯時です。
城に戻りましょう」
「そうだな、難しいことは食事を終えた後で考えよう」
グレゴールの言葉に同意すると、彼の後ろをついていく。




