表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/83

生まれる火種

 アルガン王国とアレハンドロ帝国を結ぶ交易路の一つであるアルレン公道。

 両国の物流の要として整備されたこの道は五台の馬車が横並になっても通れるほどに広く、道中には旅宿などの休憩用の施設が多く用意されてあった。

 しかし、その利便性の高さから皮肉にも魔帝軍の主要な進軍路となってしまい、結果的に王都侵攻の要因の一つとなった。

 さらに、敗走した魔帝軍が嫌がらせに橋や旅宿などのインフラを破壊してしまったことに重ねて道路を爆破して穴だらけにした為、現在は馬車一つまともに走らせられない程に荒廃している。

「ほんと、ひどい光景だな」

 馬上から、荒れ果てた公道を眺めて溜息を吐くアルトロと土木作業を担当する現場監督。

 帰郷したときは飛行船に乗ってきた為にこの道を通らなかったが、いざ目の当たりにしてみるとその被害状況に気が遠くなってくる。

「王城から隣国へ渡る橋まで、徹底的に破壊されております。

 いえ、破壊しましたといった方が正しいでしょう。

 なにせ撤退時に公道をはじめとするインフラの破壊を指揮したのは私ですので」

 片手で書類を開きながら、シャラヴェルが悪びれることもなく、冷静沈着に話す。

「徹底的にやってくれたな、おい」

 近衛騎士として同行していたグレゴールが両手を腰に当てながら愚痴をこぼす。

「勝つ為ならば手段を選びません。

 何なら、他国への見せしめとして王都の民を鏖殺(おうさつ)した上で都市を火の海に沈めるつもりでしたから。

 仮に失敗したとしても、国王だけでも暗殺して各国の元首を脅すつもりでした。

 あいにく不在だったので出来ませんでしたが…」

 先の王都侵攻の意図を口にしながら、彼女は交易路を修復する計画を立てる。

「ひとまず、すれ違えるように馬車二台が横並びで通れる程度に修復するのがよいかと。

 提案としましては―――」

 道路の復旧計画を淡々と提案する彼女。

 鉱山の採掘で出た残土で道路の穴を埋め、一定の間隔ごとに簡易的な休憩所を設けることで現場監督と意見が一致する。

 現状、アレハンドロ帝国とアルガン王国を繋ぐ道はアルレン公道を除けば先々代からの交易路である旧道のニレスト公道やオルレス公道があるが、どれも狭い上に道中の橋は老朽化しており、交易路としては往時と比べてろくに機能していない。

 飛行船を利用して交易品を空中輸送する方法もあるが、陸路と比べて輸送量は少なく、一方で運用に莫大な魔法鉱石を消費するためコストがかかる。

 不意に吹いた一陣の風が砂埃を巻き上げる。

「ひとまず、建材と人材の手配だな。

 正規軍の兵を回せば、何とかなるか?」

「訓練されている兵士ならば、下手な労働者よりも肉体労働に向いているかと。

 問題は建材の用意です」

「というと?」

 グレゴールの疑問にシャラヴェルは再び口を開く。

「終戦に伴って世界各国では復興に向けた動きが加速しております。

 復興が落ち着くまで建築資材や食料などの必需品はほとんどが自国で消費され、外国に輸出することはまずはないでしょう」

「つまり必要なものは自給自足というわけか」

「はい、そのうえ、需要の高まりに対して供給が追い付かず、これから高騰することが考えられます。

 それを狙った悪徳商人による買い占めもすでに報告があがっており、対策が急務かと」

「このままでは資材さえもまともに手に入らなくなるか…」

「一応、資源の豊富なアレハンドロ帝国からならば交渉で輸入することも可能でしょうが、他国との競争となることが容易に想像できますし、足元を見られる可能性も十二分にあります。

 今の世界情勢を表すならば、復興資材を巡る戦争、復興戦争。

 早期に復興を果たした国々が、今後のニーナ大陸での主導権を握ることになるでしょう」

「ようやく戦争が終わったと思ったら、新たな戦争が始まるとは…皮肉なものだな…」

 そう呟きながら空を見上げるアルトロ。

 白い雲が空を速く流れていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ