収穫
朝露が輝き、小鳥さえずる早朝。
耕作地へと向かう村人たちの後ろをアンカラが農具を携えて歩く。
(「なぜ我が百姓風情のようなことを…」)
小声で不満をぶつぶつと言いながら、耕作地に着くと村人の指導を受けながら作物を収穫する。
「収穫した野菜はこのかごに入れてね」
「あーはいはい」
やる気のない返答。
(なぜ我が人間風情と農作業をしなければならぬのか)と心の中で文句を言いつつも作物を言われた通りにかごに入れると、それを洗い場へと持ってゆく。
さすがは龍というべきか、収穫物を入れた箱を何重にも重ねて一度に軽々と運ぶ。
「持ってきたぞ」
「アリガトウ」
ぎこちない言葉で礼を述べるザイ―ダ。
冷たい水に身を震わせながら一緒に野菜を洗うと、かごに入れて貯蔵庫へと運ぶ。
「それじゃ次は土壌整備ね」
そう言ってアンカラを肥料の入ったコンポストに案内する。
蓋を開けば腐った落ち葉や木の枝が混じった土が大量に入れられている。
「なんだこれは?」
「腐葉土と言ってこれを使うことで畑の土を改良するの。そのあとは畑をゆっくりと休ませることでおいしい野菜ができるのよ」
「収穫してすぐに種を植えてはだめなのか?」
「それはダメ。畑が瘦せて土が死んでしまうわ」
「農業って面倒なんだな…」
性に合わんと内心ぼやきながらも、素直に従って腐葉土をまく。
「まるで祖母と孫娘ね」
農地全体を見渡せる丘の上で農作業の様子を見守るリラ。
アンカラの監視役としてコノハたちと別れて村に残った。
「それで、この村に何の用かしら?白狼」
リラが振り返ればそこにいたのは白狼ことライラット。
「諜報部のエース様がこんな寂れた村に何の用かしら?まあ、予想はつくけど」
アンカラに視線を合わせる。
「あれは何だ?どうみてもただの村人ではない」
「すくなくとも国を滅ぼせる存在ではないわ。その気になればいつでも始末できるし」
「その根拠は?」
「村人に従って素直に農作業をしている時点でわかるでしょ?でなきゃとっくに村は滅んでいるわ」
「そうか」
一陣の寒風に毛並みを揺らされながら、腕を組んでそう呟く。
「それで、用事はこれだけかしら?」
「…」
リラの問いに沈黙する。
「まだ任務は残っていると…まあ、こちらに害意がないなら良いわ。あなたも私とは戦いたくはないでしょうし」
そう言って丘を駆け下るリラ。
同時にライラットも姿を消した。




