資金調達計画
「さてと…」
アンカラ達が収穫作業をしている最中、ルーベンスは書類をまとめていた。
目の前にあるのはリラが「世話になるわ」と言って村に提供した五千セレカ。
大方、仕事の拠点の一つとしてこの村を利用するつもりだろうが、害がないなら問題はない。
金自体も「まっとうな方法で得た金だから安心して使えるわ」と言っていた。
しかしながらアンナ曰く、冒険者を雇ってゴブリンの住処を殲滅するにはあと倍は必要らしい。
「どうにかして資金を調達せねばな」
ペンを置き、思案する。
耕作地を広げればそれで終わりではない。
農具や人手、器具や肥料、収穫物用の貯蔵庫などの施設の増築や耕作地の安全確保も必要であり、目の前の金を二倍、三倍にしただけでどうにかなるものではない。
そのうえ家や集会所などの建物の改修や建て替えのことを考えると、気が遠くなってくる。
宝玉を売ればこれらを成しえるだけの十分な資金が手に入る見込みではあったが、粉々に砕けてしまった。
「手があるとすれば…彼女か」
アンカラの顔が思い浮かぶ。
太古の世界を支配していたという彼女。
当時と比べて力は抜け落ちているらしいが、それでも常人に比べて力は強い。
彼女を冒険者にしてモンスターを狩ってくれればその素材で資金を調達できるかも知れない。
皮算用ではあるが、可能性を無視することはできない。
「アンナに相談するかの」
時計の音が十時を告げるなか、ルーベンスは書類をしまい席を立つ。
風に髭を揺らせらながら訓練所へと向かうと、遠くからカンカンカンという木刀を打ち合う音が耳に届く。
村人数人とアンナが剣を打ち合っており、隻腕にもかかわらず集団を圧倒している。
「見事じゃな、アンナ」
「ルーレイスか、どんな用事だ?」
剣を鞘に納め、用件を尋ねる。
「アンカラのことじゃ。彼女を冒険者に育てられぬだろうか?」
「冒険者?なぜだ?」
唐突な提案に驚きつつ聞き返す。
「彼女の力は常人よりも強い。冒険者になってモンスターを狩ってくれれば資金調達の役に立つじゃろう?
うまくいけば冒険者ギルドと村のつながりも出来ていざという時の当てにもできる。」
「たしかに悪くはないな。冒険者は重罪人でもなければどんな奴だってなれるわけだからな。
もっとも、彼女一人だけを向かわせるわけにはいかないな。
あれを一人で行かせたところでトラブルだらけになるのは目に見えている」
「確かにのう」
生意気な子供のような性格のアンカラを向かわせれば、間違いなく冒険者ギルドに対して大きな迷惑がかかる。
「なら、だれを同行させる?」
「そこなんだよな…」
頭を悩ませるアンナ。
冒険者は命の危険がある仕事であり、戦闘力の低い人員を同行させることはできない。
農作業の手伝いなどの平和的な仕事であればその限りではないが、村の資金調達を目的にする以上は、実入りの良い危険な仕事を引き受ける必要がある。
アンナやダン、デュオならば戦力としても十分だが、村の運営に必要な人材であるため同行させることはできない。
「そういえば一人いたのう」
「誰だ?」
「リラじゃ。彼女ならば十分じゃろう。少し、訳ありじゃがな」
「訳アリのところが気になるが、まあ、お前の話を信じよう」




