新しい仲間
日が沈み始める夕刻。
村人たちは仕事用具を片付けて夕食をとり、デュオをはじめとする見張りは村の高台に上って夜襲に備え始める。
ランハルは村人の好意を受けて一泊し、リラとコノハもそれに従う。
「ほれ、飯だ」
隙間風の吹く木製のボロ屋。
その一室に軟禁されたアンカラにダンが食事を置く。
「なんだ、これは…家畜の餌か?」
野菜スープとパンだけの粗末なメニューに不満を口にするアンカラ。
拘束は解かれたものの、ダンとリラが交互に監視している。
「我は龍ぞ?せめて肉はないのか?」
「大分前に狩ったゴブリンの肉ならあるぞ。腐っているから人間の俺達は食えないが、龍のお前ならいけるか?」
「いけるわけないだろ!人間の分際で我に生ごみを食わすつもりか!?」
腐敗物を食べさせようとしてきたダンにアンカラは怒りを表す。
「わがままな奴だな。素材にしちまうぞ?」
戦斧をチラつかせるダン、その眼には殺意が宿っている。
「クソ、力さえあれば貴様らなんぞ…」
黒天の龍として太古を支配していた時から一転、目の前の村人一人さえどうすることもできない現状に悔しさをにじませながら、用意された食事にしぶしぶ口をつける。
何の味付けもない、つまらない食事。
不意に扉が開き、ルーベンスとアンナが部屋に入る。
「どうだ、様子は?」
「反抗的なままだ。さすがに腹は減るようだがな…」
「そうか」
ダンの言葉に考え込むアンナ、少しの間をおいてゆっくりと口を開く。
「アンカラといったか?ここで私たちと一緒に暮らすつもりはないか?」
「ハ、我が人間と一緒に暮らすだと!?」
白い八重歯を見せながら、アンナの提案をカカカと笑い飛ばす。
「素直に応じたほうが良いと思うぞ?今のそなたが一人で暮らしていけるとは思えぬ」
「ジジイのくせに我を馬鹿にしやがって…」
ルーベンスの言葉にそう言い放つアンカラ。
しかし、今の彼女が目の前にいる村人にすら敵わないのも事実であり、いたずらに反抗したところで素材にされるのは目に見えている。
「わかった、わかったよ。降参だ。あんたらに従うよ」
一転して態度を改めるアンカラ。
投降するフリなのは明らかではあるが、農作業の人手が欲しいアンナはおもむろに手を差し伸べる。
「そうか、なら歓迎しよう。ようこそ、アルジャーノ村へ」
(クソ、今に見ていろよ人間共。力を取り戻した暁には手始めにこの村を滅ぼしてくれるわ…)
くすぶる憎悪と屈辱を心中に残したまま、アンカラはゆっくりと彼女の手を取る。




