白刃煌めく
コノハたちが商人と共にアルガン王国を出てしばらく、馬宿で夜を明かした一行は小鳥のさえずる交易路を進んでいた。
「王都を出てからかなり進んだけど、まだ着かないの?」
「後二日ほどすれば目的地ですよ」
未だに着かないことに不満を漏らしたリラに商人であるランハルは馬の上からそう答える。
「ところで、お二方はどのようなご関係なのですかな?」
「そうねぇ、私のターゲットかしら」
「ターゲット?どういうことですかな?」
「秘密」
「そうですか」
無味な雑談を交えながらしばらく進むと、一向の前に鬱蒼と茂る森がやってくる。
元来ならば別の街道を通るのだが、護衛が剣聖とあって強気に最短距離を選んだ。
「お二方、お願いいたします」
視界の利かない森林。
奇襲を仕掛けるにはもってこいの環境にコノハとリラは臨戦体勢に移る。
不気味なまでに静かな道中に荷車と足音が響き渡る。
リラの鼻がピクンと動く。
「右からくるわね。構えて」
荷車を背に、剣を居合に構えて目を閉じるコノハ。
研ぎ澄まされた感覚で襲来する賊徒の気配を探知すると、目を見開いて抜刀。
鎧をまとった大男を一太刀で切り伏せると、賊徒の放つ攻撃をかわしながら次々とその首を切り落としてゆく。
「コノハ!」
リラが声を発した直後、森の奥からランハルを狙った矢が飛来。
全て撃ち落として依頼人を護る。
前衛が壊滅したのを確認するとリラは森林に伏せていた弓兵を人狼族特有の鋭い感覚で探知、両腕の篭手に取り付けたブレードを展開して制圧にむかう。
「こいつ、速いぞ!」
立ち向かってくる人狼族の少女に次々と矢を放つも、最小限の動きでかわされる。
「遅い遅い」
無邪気な表情で無防備な喉笛をブレードで掻き切るリラ。
暗殺者としての側面も持つ彼女の無慈悲な攻撃に、賊徒は次々と骸と化してゆく。
森に舞い散る血しぶき。
その容赦のなさにランハルは二人が護衛でよかったと心底安堵する。
「こんなものね」
足元に転がる賊徒の死体を歯牙にもかけず、血にまみれた体を布で拭きながらリラは一息つく。
「死体の処理は…必要ないわね」
遠くにみえる狼などの肉食モンスターの群れ。
「急いだほうがいいわ、血の匂いに誘われ始めている」
一歩一歩近づいてくるモンスターから逃げるべく、一行は足早に現場を立ち去る。




