■第2話タイトル 「眠るたびに、彼女は増えていく」
■第2話タイトル
「眠るたびに、彼女は増えていく」
雨はまだ降っていた。
夜守 恒一は、いつものように学校へ向かっていた。
昨日の出来事を思い出そうとしても、うまく形にならない。
白い空間。
少女。
白い花びら。
「夢だったのか……?」
そう思いたいのに、ポケットの中に何かがある。
白い花びら。
夜守の足が止まる。
「……やっぱり、現実か」
その日の授業中。
窓の外を見ていた瞬間だった。
一瞬だけ、視界が“白くなる”。
次の瞬間。
教室の後ろに――
少女が立っていた。
白い髪。
裸足。
あの夢の少女。
夜守は椅子から立ち上がる。
「……おい」
声は出ていた。
でも、誰も反応しない。
クラスメイトは普通に授業を受けている。
先生も、黒板を書き続けている。
少女だけが、そこにいる。
「見えてるのは、あなただけ」
少女が静かに言う。
夜守は息を呑む。
「なんでここにいる……!」
少女は少し困ったように笑う。
「あなたが眠ったから」
■能力の発動
その瞬間、教室の空気が揺れる。
黒板の文字が一瞬崩れる。
時計の針が止まる。
「また……始まってる」
少女が呟く。
夜守は混乱する。
「何がだよ!」
少女は答えない。
代わりに、教室の空間が“ひび割れる”。
■増殖
ひびの中から、もう一人の少女が現れる。
同じ顔。
同じ白い髪。
でも、表情が違う。
1人目は静か。
2人目は泣いている。
夜守は後ずさる。
「……増えてる?」
少女(最初の個体)が言う。
「あなたが眠るたびに、“可能性”が分かれるの」
「私は一つじゃない」
教室の中に、さらに“彼女たち”が現れていく。
笑っている彼女。
怒っている彼女。
無表情の彼女。
夜守は理解する。
これは夢じゃない。
■崩壊現象
世界が少しずつズレていく。
机の位置が変わる。
窓の外の景色が違う。
「このままだと、この空間は壊れる」
最初の少女が言う。
夜守は叫ぶ。
「どうすれば止まるんだよ!」
少女は夜守を見つめる。
「眠って」
一瞬、静寂。
夜守は笑う。
「ふざけるな」
「また眠れって言うのかよ」
少女は首を振る。
「違う」
「“正しく眠って”」
■初めての選択
教室の崩壊は進む。
少女たちの数は増え続ける。
夜守の頭の中に声が響く。
「眠れ」
「眠れ」
「眠れ」
彼は気づく。
これは“能力”ではなく“暴走”だ。
夜守は目を閉じる。
深く、ゆっくり。
■夢へ
白い空間。
そこには、最初の少女だけがいた。
彼女は少し怒っていた。
「勝手に広げないで」
夜守は苦笑する。
「俺のせいかよ」
少女は少しだけ近づく。
「あなたが眠ると、世界が“分岐する”」
「でも今は制御できてない」
夜守は問う。
「お前は何なんだ」
少女は一瞬黙る。
そして、言う。
「私は未来」
■引き
空間が揺れる。
少女の姿が一瞬だけブレる。
その奥に、もう一つの影が見える。
“眠れない男”。
夜守はそれを見てしまう。
そして――
目が覚める。
教室は元に戻っていた。
誰も気づいていない。
ただ一つ。
机の上に、白い花びらが“二枚”あった。
夜守 恒一は、息を呑む。
「……増えてる」




