戴冠式準備
それから十年後の現在。
若い王女たちを残し、国王のバロンはなくなってしまった。姉の彩音はこれから私がこの国を背負うのだ、父や母に恥じない国にしようと誓った。
まず初めに母が死んでから薄れていった他の国の王家とのつながりを取り戻すことにした。最初はうまくいかなかったが、徐々に繋がりが回復していき、貿易も進んでいった。それに伴って、浄化の町や郊外の村までも活気を取り戻していった。
そして、今日この日、六月六日。
王女、虹玉彩音の十八の誕生日であり、戴冠式の日である。
「うー…緊張する。」
七色のドレスを身にまとい、長い髪をなびかせて、鏡の前に立つ彼女はこの国の第一王女虹玉彩音。種族は人間だ。
「彩音様、背筋を伸ばしてください。」
彩音の隣に立つ白黒の三つ編みヘアーの燕尾服の男は、彩音の執事で、この城のすべてのことを取り仕切っている天使、ハコク・マクマホン。
「あ、ごめんなさい!でも、戴冠式の後の催し物がうまくいくのか心配で…。」
「大丈夫ですよ。あなたが失敗してもわたくしが何とかしますから。」
「は、はい…。」
その時ドアがノックされて返事をする前にバンッと開いた。
「おい、姫さん、早くしろよ。みんな待ってんだぞ」
彩音を呼びに来たこの不愛想な男は、大理石色の美しい髪を後ろで一つにまとめている。彼は彩香の従者で、天使族のタイリ・マクマホン。
「タイリ、なんだその口の利き方は。これから国のトップに立つ方に向かって失礼だとは思わないのか。もう昔のままではないんだぞ。」
「兄貴もいたのかよ、ならさっさとしてくれよ。俺に説教する前によぉ。」
「も、もうっ!顔合わせるたびに喧嘩しないで下さいよ」
ハコクとタイリは兄弟で、出来がいいと言われる兄のハコクのことを不出来な弟と呼ばれるタイリは疎んでいる。
「…早く来いよ、みんな待ってる。」
「はい」
今日は戴冠式の日、そしてそのあとに行われる催し物は歌の祭典。
彩音の母が戴冠式の時から死んだ年まで、年に一度六月六日に行っていた祭典である。六月六日は母の誕生日でもあり、私の誕生日でもある。そして、母が亡くなったのも六月六日だった…。
「何を物思いに耽っているのですか…。いきますよ。」
「へっ?あっはい!」
「全くこの調子では父君にも母君にも合わせる顔がありませんよ」
「うっ、ごめんなさい」
ハコクに続いて彩音が廊下から出ようとすると、隣の部屋から大きな物音が聞こえた。
ガッシャ―――ンッ!!!
「なに?」
「どうせまたいつもの喧嘩でしょう…」
彩音たちが今いた部屋の隣では王女の彩香が式典の衣装替えを行っているところだった。そして、そこへ彩香を呼びに行ったのが。
「ってぇな!この暴力王女が!!」
「うるさいわね!急に部屋に入ってきてあんなこと言われたらそりゃ殴るわよ!!」
タイリを殴ったこの女性。この国の第二王女にして彩音の妹である虹玉彩香だ。彼女は彩音と同じ七色のドレスを身にまとい、ぼさぼさの髪を後ろでポニーテールにしている。
「あ、彩香ちゃん?大丈夫??」
「うん。この最低男に相変わらず変な髪だなって言われて殴っただけよ。」
「そうなんだ…私はその髪質好きだけどなぁ」
「ありがとう。これだからお姉ちゃん大好き」
こんなのほほんとした会話の隣では仏頂面をしたタイリと相変わらず無表情なハコクが立っている。
「彩音様、そろそろ。彩香様もご一緒に」
「はい」
「あーあ。ハコクさんはしっかりしてていいなぁ。タイリなんて毎回文句言ってくるのに」
「タイリさんだって一生懸命お仕事していると個見るよ。だからそんな風に言わないの」
「はーい」
「・・・」
そして、会場につくと大勢の人や各国の王家の者たちがいた。




