第5話
●酒場
前話ラストシーン。
酒場でアークに命じるライズ。
ライズ「アーク、お前を混沌領域の守護騎士に任命する。魔界からの侵攻を防いでこい」
アーク「…………」
ライズ「どうした。さすがに怖気づいたか?」
黙り込むアーク。
それを見て茶化すライズ。
アーク「あの、混沌領域って何ですか?」
ライズ「……そこからか」
サリア「アークはずっと故郷の村に暮らしていたのだから、知らないのも無理はない。私が説明しよう」
呆れるライズ。
サリアが優しく説明し始める。
サリア「混沌領域とは、人間界と魔界が混ざった境界地帯だ。危険な魔物が跋扈し、強靭な戦士でも三日と持たず死ぬことさえある。世界でも指折りの戦地だ」
アーク「なるほど……でも、どうして俺なんですか?」
ライズ「守りに長けた技能は、最前線で求められるもんでな。別にお前が嫌いだから送り込むわけじゃねえぞ」
ライズ、皮肉っぽく笑って応じる。
その後、ライズは真面目な顔で問いかける。
ライズ「混沌領域は生き地獄だ。踏み込む覚悟はあるか? やめたいなら今のうちに……」
アーク「大丈夫です、やります。こんな俺でも役に立てるなら頑張りたいです」
ライズ「よし、いい返事だ。褒美にここは俺が奢ってやろう。腹が破れるまで食っていいぞ」
アーク「ありがとうございます!」
サリア「ふふ、さすが副団長だな」
ライズ「ん? お前には奢らねえぞ」
サリア「何ィッ!?」
三人、楽しそうに食事をする。
●朝の街道
翌朝、草原にある街道を歩くアークとサリア。
アーク、不思議そうに尋ねる。
アーク「どうしてサリアさんも同行するんですか?」
サリア「混沌領域への派遣は前から志願していたんだ。魔界は人々の平和を乱す。だから己の手でどうにかしたいと思っていた」
サリア、決意に満ちた様子で答える。
サリア「担当だった竜もアークが討伐してくれたことだし、ちょうどよかったんだ」
アーク「そうだったんですね」
サリア「だから安心して頼ってくれ!」
アーク、納得する。
サリア、胸を張って応じる。
●前線基地
鬱屈とした荒野にそびえ立つ古い砦。
たくさんの負傷者が座り込んでいる。
首輪や枷で拘束された奴隷も並んでいる。
一連の光景を見まわしたアーク、息を呑む。
アーク「ここが混沌領域……」
サリア「どうだ。驚いたか?」
アーク「過酷な環境なのはよく分かります……」
アーク、緊張した様子で頷く。
その時、少し遠くから二人に声がかかる。
女(off)「おお、やっと来てくれた」
白衣を着た隻腕の女が歩いてくる。
前髪で目が隠れており、微笑を浮かべている。
女、サリアに握手を求める。
女「久しぶりだね、サリア」
サリア「ああ」
サリア、親しげに握手に応じる。
女、アークをちらりと見て尋ねる。
女「そっちの彼は?」
サリア「新人だ。とても強いぞ」
女「へぇ……」
女、アークに顔を寄せて、前髪を手で少しずらす。
ぎょろりとした目でアークを凝視し、女は愉快そうに言う。
女「キミ、一旦死んでみてくれるかなァ?」
アーク「!?!?」
仰天するアーク。




