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第7話 宇都宮関門突破 - 通行手形と新型発破

慶應四年(一八六八年)四月一九日。  

下野国しもつけのくに、宇都宮。


北関東の空は、鉛の板を敷き詰めたような重苦しい曇天に覆われていた。

 日光街道と奥州街道が交差するこの宿場町は、古来より関東平野の北の関門として機能してきた要衝である。江戸から北へ向かうあらゆる物流、人流は、必ずこの地という漏斗ろうとの底を通過せねばならない。

 逆に言えば、この一点を塞げば、関東からの脱出を試みる旧幕府側の引越しは完全に頓挫する。


 現在、この要衝を占拠しているのは、新政府軍の東山道総督府参謀・香川敬三率いる大垣・松本・彦根の連合部隊であった。彼らは宇都宮城に入城するや否や、街道に堅固な関所を設け、北へ向かう荷車や避難民を片っ端から検問し、あるいは「賊軍の協力者」として拘束・略奪を行っていた。


「ここを通りたくば、通行手形を見せろ」


 彼らの論理は中世的であり、そして致命的に物理的であった。

このプラグを抜かねば、八王子を脱出した数千台の荷車も、江戸から逃れてきた数十万の技術者家族も、すべて北関東の平野で干上がり、新政府軍の追撃に晒されることになる。





宇都宮城の南、安塚やすづかの台地。


雨上がりの湿った土の匂いの中に、南山製タバコの紫煙が漂っていた。

 旧幕府軍の前線指揮所。そこに、二人の男が並んで立っていた。一人は、泥で汚れたフロックコートに身を包み、三脚の上に据えた南山製の測量儀セオドライトを覗き込むインテリ、陸軍奉行並・大鳥圭介。


 もう一人は、洋装の軍服ながら腰に和泉守兼定を差し、戦場の空気を肺の奥まで吸い込むように鼻を鳴らす男、新選組副長・土方歳三である。


 二人の眼下には、深い堀と土塁に守られた宇都宮城が、黒々とした威容を誇っている。


「厄介な場所にフタをしてくれたもんだ」

土方は、噛み締めた葉巻を指で摘み、苛立たしげに吐き捨てた。


「香川の野郎、完全に居座りやがった。交渉でどく相手じゃねぇ。どうする、先生。迂回するか?」


「迂回路はぬかるんでいる。重量物を積んだ荷車では、車軸が折れる。それに、時間がない。南からは大山巌率いる薩摩の主力軍が迫っている」

大鳥は、冷静に測量儀のダイヤルを回しながら答えた。


 その口調は、軍人というよりは、施工不良の現場を前にした土木技師のようであった。


「物理的に、どかすしかあるまい」

大鳥は懐から懐中時計を取り出し、パチンと蓋を開いた。


「計算は済んでいる。南山の鉱山技師直伝の、瑞典(スウェーデン)製の新型発破ダイナマイトを、工兵隊に持たせた。 城門の蝶番と、土塁の脆弱なポイントを爆砕する。玄関を吹き飛ばせば、あとは君の仕事だよ、歳三くん」


「ああ。一日で落としますよ」


 土方は、腰のホルスターから愛銃を抜き、シリンダーを確認した。

スミス&ウェッソン・モデル2・アーミー。米国製の名銃を明望の工廠でライセンス生産した、三二口径の回転式拳銃リボルバーである。至近距離での制圧力を持つ「喧嘩道具」だ。


「のんびり攻城戦をやってる暇はねぇ。後ろがつかえてるんだ。 俺たちの仕事は城取りじゃねぇ。あいつらを無事に目的地に送る事だ」


          ◆


四月一九日、早朝。


 旧幕府軍による宇都宮城攻略戦が、唐突に、そして暴力的に開始された。それは、太鼓や法螺貝で合図を送り、名乗りを上げてから矢を射かけ合うような、日本古来の優雅な合戦ではなかった。フランスから導入された近代戦術、すなわち「火力集中と電撃的突入」の実践であった。


 腹の底に響く重低音と共に、宇都宮城の正門・松が峰門が、内側から弾けるように木っ端微塵に吹き飛んだ。大鳥配下の工兵隊が、夜陰に乗じて城壁の死角に潜り込み、設置したニトロゲル(ダイナマイトの前身)が炸裂したのである。

 舞い上がる黒煙と土埃。砕け散った門扉の破片が、散弾のように守備兵たちに降り注ぐ。何事かと動転し、右往左往する新政府軍の兵士たち。その混乱の隙を突き、土埃の向こうから、黒い風のような集団が雪崩れ込んだ。


 土方歳三率いる突撃部隊——新選組と桑名藩兵である。


「突っ込め! 止まるな! 撃ちまくれ!」

土方の裂帛の気合が飛ぶ。


 彼らの戦術は、かつての京の市中見廻りで見せた近代的近接戦闘をさらに洗練させ、仏軍の軍事顧問から叩き込まれ、鳥羽・伏見の敗戦で骨身に染みて学習した、対ゲリラ・市街地制圧戦術(CQB)の応用であった。

 狭い城門や曲輪くるわの中で、小銃は取り回しが悪く役に立たない。新選組の隊士たちは、左手にリボルバー、右手に刀、そして腰には予備のリボルバーを持つ「二刀流」、否、銃剣格闘術の変則形で突入した。


 乾いた銃声が連続して響く。彼らは、敵の姿を認めると、間合いに入る前にリボルバーを連射し、相手が怯んだ瞬間に踏み込んで斬り伏せる。あるいは、銃弾を撃ち尽くせば、即座に銃を鈍器として使い、敵の顔面を殴打する。そこに武士道はない。殺法としての効率性のみであった。


「ひ、怯むな! 槍衾やりぶすまを作れ!」


 香川敬三が叫ぶが、彼の指揮する大垣兵たちはパニックに陥っていた。彼らの知る戦の常識が通じない。爆発と共に門が消え、硝煙の中から現れた黒服の男たちが、無言で連続して鉛玉をばら撒きながら距離を詰めてくる。その恐怖は、彼らの戦意を根底からへし折った。


わずか半日。

 速度と火力。その圧倒的な暴力の前に、新政府軍の守備隊は為す術なく崩壊し、宇都宮城は旧幕府軍の手に落ちた。


だが、この戦いの異様さはここからであった。

 城を落とした直後、硝煙の匂いも消えぬ本丸において、土方は全軍に奇妙な命令を下したのである。


「城には入るな! 本丸の制圧などどうでもいい!金蔵も武器庫も火薬樽以外は無視しろ! 全軍、城下の街道筋に展開し、バリケードを築け! これからが本番だ。守り処は城じゃねぇ、ここはただの防塞だ!」


          ◆


 四月二〇日から二二日にかけて、宇都宮城下は、日本の戦史にも類を見ないシュルレアリスム的な光景に包まれた。奪還を目指して南から押し寄せる薩摩の大軍、大山巌が指揮する主力部隊に対し、旧幕府軍は城郭を盾にして激しい防衛戦を展開する。

 砲弾が飛び交い、黒煙が上がり、銃声が絶え間なく響く。その阿鼻叫喚のすぐ脇、城の背後を走る奥州街道を、異様な集団が、川のように流れ続けているのである。


 地響きのような音を立てて通過するのは、八王子から運ばれてきたジャカード織機を積んだ大八車の列。それに続くのは、桐生・足利の織物工場から解体されたボイラーや、蒸気機関のピストンを載せた牛車。そして、家財道具を背負い、子供の手を引いて歩く数万の技術者家族たち。

 彼らは皆、必死の形相で、しかし一言も発することなく、土煙を上げて北へ、北へと急ぐ。彼らの背中には、南山への片道切符が握りしめられている。


 土方歳三は、弾丸が飛び交う中、愛馬に跨り戦場全体を俯瞰していた。 顔は煤と埃で真っ黒だが、その瞳だけは冷徹に光っていた。彼の手には軍配ではなく、大鳥から借りた懐中時計が握られている。


「第三輸送隊、通過! 遅いぞ、もっと足を速めろ! 牛の尻を叩け!」


「左翼、敵の圧力が強い! 桑名隊、弾幕が薄い!援護射撃だ! 敵を街道に近づけるな! 荷車一台たりとも傷つけるんじゃねぇ!」


 彼は、軍の指揮官であると同時に、巨大な物流システムの「現場監督」であり、「交通誘導員」であった。彼の怒号と、的確な指示によって、混沌とする戦場に一本の「道」が切り開かれていく。





 夜。 戦闘が小康状態に入った頃、土方は街道脇で小休止を取っていた。焚き火のそばで、肉缶コンビーフを開けていると、一台の荷車が彼の前で止まった。車軸が泥に取られ、難儀しているようだった。


 土方が手を貸そうと立ち上がった時、荷車の陰から一人の娘が顔を出した。手ぬぐいを被り、油にまみれた作業着姿。 八王子の街道で言葉を交わした、あの製糸工場の娘であった。


「お侍さん!」


 ことという名の娘は、土方の姿を認めると、驚きと安堵の入り混じった声を上げた。


「……よう。生きてたか、嬢ちゃん」


 土方は、軍服の袖で顔の煤を拭い、苦笑した。


「ここまで来れば、もう一息だ。この先の氏家うじいえ宿を越えれば、會津の兵隊が待っている。 そうすりゃ、その大事な父ちゃんの織機も安泰だ」


琴は、深々と頭を下げた。

 そして、懐から小さな包みを取り出し、土方に差し出した。それは、美しい絹のハンカチで包まれた、握り飯であった。


「これ、食べてください。私たちのために、戦ってくれてありがとう。お侍さんたちが守ってくれなかったら、私たちは今頃……」


土方は、握り飯を受け取ると、まじまじとそれを見た。

 武骨な彼の手には似合わない、繊細な絹の感触。それは、彼が今まで斬り捨ててきた命の重さとは対極にある、生み出す者の温かさであった。


「礼を言われる筋合いじゃねぇよ。俺は、俺の喧嘩をしてるだけだ」

土方は、ぶっきらぼうに言ったが、その声は優しかった。


琴は、土方の目を真っ直ぐに見つめて言った。

「……ねえ、お侍さん。……南山に行ったら、また会えますか?」


その問いに、土方は一瞬、言葉を詰まらせた。


 未来。


かつての彼には、明日死ぬかもしれないという刹那的な覚悟しかなかった。

 だが、今は違う。この「道」の先には、南山という新天地があり、そこでこの娘たちが織機を動かし、新しい国を作っていく未来がある。その風景の中に、自分という人斬りの居場所はあるのだろうか?


「さあな。俺は、血なまぐさい事しかできねぇ男だ。平和な南の島には似合わねぇだろうよ」


「そんなことない!」

琴は、強い口調で遮った。


「だって、お侍さんは、壊す人じゃなくて、守る人だもの。南山に行ったら、私、一番いい布を織って、お侍さんに洋服を作ってあげる。……だから、必ず来てください。『ツケ』を払いに」


土方は、ハッとして娘を見た。

 八王子での冗談を、彼女は確かに覚えていたのだ。土方はふっと表情を緩め、ニヤリと笑った。それは、かつて京の都を震撼させた「鬼の副長」の顔ではなく、一人の不器用な男としての、人間味に溢れた笑顔であった。


「違えねえ。借金を踏み倒しちゃ、男が廃るな」


土方は、その絹のハンカチを懐の奥へとしまい込んだ。

 それは、ただの布切れではない。彼がこれまでの血塗られた日々で初めて手にした、明日という日を迎えるための予約票チケットであった。


 滅びゆく時代と共に己の死に場所を探し求めていた男の歩みが、この瞬間、確実に別の道へと向きを変えた。散りゆく美学を捨てることになろうとも、この名もなき娘が織り上げる新しい未来を、何としても守り抜く。それが己に課せられた新たな使命なのだと、血に塗れた魂が静かに、そして深く悟った運命の転換点であった。


「行きな。夜明けと共に敵が動く。 絶対に生き延びろよ」


琴の乗った荷車が、再び動き出す。

 土方はその背中を見送りながら、握り飯を一口かじった。

 塩加減が、疲れた体に染み渡った。


          ◆


 四月二三日。


 三日三晩にわたる激戦の末、新政府軍の猛攻は激しさを増し、宇都宮城の二の丸付近から火の手が上がり始めていた。城を守る土塀は崩れ、薬莢の山が塹壕を埋め尽くしていた。

 だが、土方はその炎を背にして、安堵の息を吐いた。最後の輸送団、殿しんがりを務める会津藩の輜重しちょう部隊と、負傷兵を乗せた馬車が、無事に街道を通過し、鬼怒川の橋を渡りきったのを確認したからである。


「終わったな」


土方は、馬上で呟いた。

 その時、敵弾が一発、彼の左足を掠めた。鮮血が軍袴ぐんこに滲む。

激痛が走ったが、彼は顔色一つ変えなかった。衛生兵が駆け寄り、手際よく傷口を消毒し、止血帯を巻く。


「副長、傷が。早く後方へ!」


「カスリ傷だ。骨まではいってねぇ。それより、大鳥先生に伝令だ。「荷物は全部送った。店じまいといこうとな」


 土方は、燃え上がる宇都宮城を一瞥もしなかった。かつての彼なら、武士の意地にかけて城を枕に討ち死にしたかもしれない。 だが、今の彼は戦の玄人であった。

 任務は完了した。ならば、無駄な死は契約違反である。




「総員、撤退!城なんざくれてやれ。俺たちの任務は完了だ!任務完了後は生きて帰るのが新任務だってことを忘れるな!」


 彼の号令と共に、旧幕府軍は潮が引くように北へ向かって退却を開始した。

それは敗走ではない。任務完了に伴う、計画的な転進であった。


 宇都宮の空を焦がす紅蓮の炎は、関東平野における旧幕府勢力の完全な撤退クリアランスを告げる、巨大な狼煙のようであった。

 新政府軍は、焼け落ちた城に入城し、宇都宮奪還、賊軍敗走という戦術的勝利に酔いしれ、勝鬨かちどきを上げた。だが、その実、彼らが手に入れたのは、中身の抜けた「空っぽの鳥かご」と、瓦礫の山だけであった。


 本当に価値ある鳥、すなわち、日本の産業を担う資本と人材は、すでに彼らの手の届かない北の空、會津街道、そしてその先の新潟へと飛び去っていたのである。


 北関東回廊を巡る鉄の物流戦争は、幕軍の完全なる「戦略的勝利」をもって、静かに幕を閉じた。


          ◆


慶應四年(一八六八年)四月二五日。


 土方歳三と大鳥圭介による「北関東回廊」の確保成功から二日後。江戸湾・品川沖に停泊していた幕府海軍の輸送船「長鯨丸ちょうげいまる」の船室は、春の嵐のような海面のうねりとは対照的に、冷徹な計算機の内部のような静寂に包まれていた。


 卓上には、一枚の巨大な海図が広げられている。


 それを囲むのは、この国解体プロジェクトの設計者たち、陸軍総裁・勝海舟と、勘定奉行・小栗上野介忠順であった。


「土方の野郎、やってのけたか」


 勝は、電信技師が届けたばかりの紙テープを読み終え、満足げに葉巻の煙を吐き出した。


「『宇都宮、通過完了。荷車二五〇〇両、全テ北へ抜ケル』か。 大したもんだ。あの壬生の餓狼が、立派な戦場指揮官になりやがった」


「ええ。これで、内陸部の主要資産は、會津を経由して新潟港へ流れます。かの地では河合継之助殿が、新潟港で待ち構えていますから、船積みは滞りなく進むでしょう」


 小栗は、丸眼鏡の位置を直しながら、淡々と言った。彼の手元には、すでに次の局面へ向けた計画書が用意されている。


「ですが、勝先生。内陸の動脈は確保しましたが、まだ手付かずの手足の血管が残っています」


 小栗は、海図上の太平洋沿岸部を、銀のペン先でコツコツと叩いた。房総半島の銚子、常陸の那珂湊、磐城の小名浜、そして相馬。


「江戸の主要な機械や、北関東の繊維設備は逃がしましたが、この沿岸部には、まだ我々が回収しきれていない食べ残しが点在しています」


「食べ残し、ねぇ」


「はい。例えば、銚子には南山への輸出用醤油を醸造する最新の発酵プラントと、そこで働く熟練の杜氏たち。那珂湊には、水戸藩が隠匿していた反射炉の予備部品と、大砲の鋳型。

 そして何より、沿岸の漁村には、荒波に慣れた優秀な船乗りたちがいます。彼らは、南山の海洋立国を支えるための、何より得難い人的資源ヒューマン・リソースです」


 小栗の言葉は、まるで市場の競りで魚を品定めする仲買人のようにシビアであった。 彼は、国を捨てるにあたり、文字通り、本気で「根こそぎ」持っていく気なのだ。


「なるほど。で、どうする気だ? 横濱の船はもう手一杯だぜ」


「榎本総裁の艦隊を使います」

 小栗は、海図の上に赤い矢印を書き込んだ。それは、江戸湾を出て、本州の東海岸を舐めるように北上するルートを示していた。


「五月一五日、上野の彰義隊が暴発するタイミングに合わせて、我々も江戸湾を抜錨します。ですが、ただ北へ逃げるのではありません。 艦隊を分散させ、これらの港に寄港し、残された資産を一粒残らず船に吸い上げていくのです。 名付けて、パックマン作戦です」


「パックマン? なんだそりゃ。南山の新手の饅頭か?」

勝が怪訝な顔をする。


 小栗は、薄く笑みを浮かべた。


「明望の子供たちの間で流行り始めている、数学パズルの一種ですよ。『迷路の中に落ちているドットを、黄色い円形の捕食者が一粒残らず食べ尽くす』という概念モデルです。『パクパク食べる(Paku-Paku)』という擬音から来ているそうですが、実に我々の状況に相応しい」


「へっ、パクパク食べる、か。違えねえ。俺たちは今、日本列島って迷路の中で、新政府軍ていうオニに追われながら、徳川の遺産を食い漁ってる最中だからな」


 勝は豪快に笑い、海図をバンと叩いた。


「面白ぇ。乗ったぜ、小栗さん。新政府の連中が、江戸城の畳の数を数えている間に、俺たちは太平洋側の財産をスッカラカンにしてやろうじゃねえか」


「ええ。役人を派遣して税を取り立てようとした頃には、港にはペンペン草一本、漁船の一隻も残っていないでしょう。 奴らが手に入れるのは、波の音だけの、静かな海岸線です」


 小栗は、ちょっと意地の悪い眼差しで北の海を見据えた。それは、倒産した会社から資産を持ち出す管財人の目であり、同時に、新たな国を建設するために必要な資材を、一釘一本たりとも無駄にしないという、建設者の目でもあった。


「では、手配にかかります。各港の庄屋と網元には、すでに南山の手形を渡してあります。あとは、大きな口を開けて迎えに行くだけです」


「相変わらず手配が早いねえ」


 波に揺れる船室で、二人の男はグラスを合わせた。

 中身は、残り少ない極上のブランデー。

 それは、去りゆく旧き日本への献杯であり、これから始まる貪欲な回収劇への前祝いでもあった。


 北関東の内陸ルートと、太平洋の沿岸ルート。  二つの物流回廊が確立されたことで、徳川の店じまいと引越しは、いよいよ最終段階へと突入しようとしていた。



第四部 第7話 完

最後までお付き合いいただき感謝します。

気に入っていただけたら、ページ下部よりブックマークとポイント評価をお願いします。


渾身の新連載!

「サレ夫が神様転移で異世界へ!〜マッドなサイエンティストな部下や可愛い未亡人と一緒に、チートな要塞でまったりスローライフ建国記〜」

https://ncode.syosetu.com/n7215lz/


シリーズの短編もアップしました。

「異聞 五稜郭」

https://ncode.syosetu.com/n4984mc/


宜しければこちらもどうぞ

「南山共和国建国史シリーズ」

https://ncode.syosetu.com/s0124k/


ご興味がある方はご一読くださいませ。


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