挿話1 周辺国の一つはと言うと
ここは剣と魔法の国。らしき何か。
国の名をラグノス・マイモと言う。
赤津が平和な国で仕事をしている最中、
こちらでは勇者や賢者などと称される者達が、
民家に窃盗を行ったり、魂の救済と称して、女達を慰み者として、
勇者達の欲望の餌食となっているのである。
この者達は法の下に裁かれるのでは?
と、問う者も居ると思うが、この国では
『魔物の類を討つ者には、王族を除き、絶対的服従すべし』
『勇者に寵愛されし者は即ち、魂を永遠に救済されし者』
さらには
『王族に反逆を為す者、魂を救済すべき者なり』
要は、王の権力に少しでも逆らえば、勇者達を使って、
思いのままに行動する。と言う事である。
本来ならこのような法律は犯罪者に用いるべき物だが、
その主な犯罪者に当たるのが、勇者や賢者などとして、
地球から転移された者達に与えられる権利だから本末転倒である。
どうして、このような悪魔のような国が存在出来るのか。
それは、魔王と呼ばれた者達は神の直接介入によって、
とうの昔に滅ぼされていたからである。
結局、魔王や眷属である物達を根絶やしにしたところで、
彼らのような悪人達が、国の体をなして支配するだけである。
魔王達を滅ぼした神はこの事態を重く見て、
それなら悪人達をこのような国に閉じ込めてしまおう。
と言う方針に切り替えたのである。
実のところ、前述の慰み者や国民達は全て、
前世で、多額の窃盗を行っていたり、強盗殺人、無差別殺人。
もっと酷い物になると、
権力を用いた合法的殺人などで自身の罪は不問にする。と言う事例もある。
とにかく、そのような者が生涯を終えた時に、
別に存在する『裁きの神』が一人残らず選別し、
いくつかある同様の国として、ラグノス・マイモにも割り振られている。
これが実情である。
転生した人の場合、記憶は全て消された状態で生まれる事になる。
しかし、それではやりたい放題な転移者達に憎しみを持つのではないか?
いや、そのような心が働かないように幼少の頃から、これが当たり前だと、
徹底的に情操教育と言う名目で、洗脳を行うのである。
王族達は自分達が好き勝手出来てると錯覚しているが、
前述したとおり、神達の操り人形になっているだけである。
言ってみれば、前世で悪行に勤しんでいた者達にとって、
この国は地獄として、捉えれば問題ないと思う。
しかし、蹂躙される者と悪略の限りを尽くす者。
結局、無限ループにしかなっていないような気がするが……
■■■
ん?俺は誰かだと?
(鷹の目で見て、様子を見ていただけなんだが)
道上がギフトで、他国の一つを覗き込んでいたのである。
初めて見たのは神に転移され、平和王国へと来た初日の夜だ。
赤津が来る一週間前の事だな。
初めて見てからは毎日、寝る前に監視する目的で覗いている。
(俺に冤罪をかけた奴らは、
こう言った国に割り振られているみたいだ)
彼ら彼女らに、今後も関わる気は毛頭無いな。
もし、危害を加えて来るなら、
その時は国王に頼むとしようか。
異世界に来て、これまで肌で感じた限り、
転移させた神よりもここの国王のほうが、
何十倍も得体の知れない者だと言う事は良く分かった。
(本当に一体、あの国王は何者なんだ)
頼りにしつつも、畏怖の念を感じずには居られなかった。




