特殊効果のあるベッドを作る
時間はまだ午前11時頃だが、僕たちは次の作業に備えて、
少し早めの昼食を取る事にした。
食堂は正面受付から、右側に入った場所に配置されていて、
こちらは大きさの違う白い角形テーブルと椅子が、
縦、横、斜めと自由に配置されていた。
僕は入って左端の中央にある小さ目のテーブルの席に座る事にした。
後から、道上が隣のテーブルの席に座る。
他の人達も適当な席に座り、昼食を取る。
食事を終えると、特にやる事も無かった為、
すぐに左側の作業場へと戻った。
僕の他にも同じ考えの人が一人居たようで、
同じように作業場の左奥に座り込んでいた。
地べたに座るのはどうかと思い、
近くの棚に収納されていた木板で椅子の金型を成形し、椅子に座ってもらった。
椅子に座っている彼は先ほど発言した、見切である。
ギフトは確か『接頭語生成器』で、これから作るベッドでは
どのような回復効果のある物にするか、指定可能なオールマイティスキルである。
例えば、巨大なベッドと指定すると、小さく設計したベッドが大きく作られ……
(うん、接頭語に気を付けないと、
生産性の無い物が出来るから気を付けよう)
僕が心配したところで、ギフトを使用するのは見切だからあまり意味が無い。
数分後、道上が戻って来てどこから頂いたのか不明な大量の木板。
これで金型を成形し、見切が接頭語で効果を指定すると言う流れで進めるらしい。
他の人は規格外品やら完成品として扱う物の移動を行う事になった。
時刻は12時となり、ここから午後の作業へ入る事になる。
僕は早速、完成形のベッドを創造し、金型で成形をする。
しかし、すぐにバラバラになり、辺りに広がるの木片ばかりである。
「やはり、そのままの形はダメか」
道上は対して驚く様子も見せず
「赤津、最初は指定した長さの木材を成形してくれ」
僕は道上の指示した寸法どおりに次々と木材を成形する。
何十本か成形すると、急にふらついて、その場にへたり込んでしまう。
道上はその様子を見て
「朝しっかり食べても、ここでダメだったか。よし、赤津は端で体を休めてくれ。
次は星村。これでプラス、マイナスドライバーと電気ドリルを作ってくれ」
星村に手を広げて見せると、
そこには無骨と言う表現が相応しいさび色の鉱石が複数出てきた。
見せられた側は不思議に思い
「これは?」
道上は手のひらの鉱石の説明を始める。
「これはアダマンタイトと言うらしいが、どう見ても工業用ダイヤだ。
これなら滅多な事では折れないし、
切れ味が重要になる工具にも使える代物だ」
簡潔に説明した。星村は黙って、鉱石を手に取り
「工具、プラスドライバー」
「工具、マイナスドライバー」
「工具、電気ドリル」
連続で作る物を指定し、指定の工具を生成した。
道上は礼を言って、その場でベッドを木材から自力で組み立てた。
完成したベッドに納得するが
「これで骨組みは完成だが、掛布団と敷布団。それに特別な効果はまだだ。
効果は見切が居るからいつでも出来るとして、
布団は赤津が魔力切れだから今日は無理だ」
早速の打ち切り宣言である。
一同も仕方無く思い、この後は散らばった木片の掃除と、
各工具や備品などのレイアウトを決めたりした。
午後二時。
赤津が立ち上がれる状態まで回復すると、この日の仕事は終業となった。
赤津はみんなに謝り、息を切らしながら部屋へと戻った。
この日は栄養ドリンクらしき何かが用意されていた。
(どこで今日の体調を確認しているのだろうか)
大臣の姿も無いのに、どこかで調べているようにしか見えなかったが、
疲労が勝ったので、食事と風呂を終え、その日は寝る事にした。
■■■
翌日。
まだ、日が出る前に目覚め、寝たまま部屋を見渡すと、
右側の壁に雑に『外の景色』と言うプレートが掛かっていて、
その上には不自然に外の景色を眺める窓穴があった。
(この先って、確か別の部屋につながっているだけの気がするんだが)
ひょっとしなくても、大臣の仕業だろう。
しかし、どう言う仕掛けでこんな事が出来るのか見当が付かない。
深く考えても仕方無いので、二度寝する事にした。
日が出て、改めて起きる。
先ほどあった『外の景色』のプレートと窓穴は消えていた。
(結局、どういう仕掛けだったんだろう)
謎を残しつつ、朝食を食べる事にした。
今日のメニューはステーキとナッツ類である。
(食欲はあるから、問題ないな)
トイレにこもっていた人達にとっては地獄のメニューだが、
僕にとっては、普通に食べれる朝食であった。
食事を終え、工場の作業場に行くと
「赤津、大丈夫か?」
道上が様子を伺ってきた。首を縦に振り、問題ない事を伝える。
数分後にみんなが集まると、道上は
「昨日の方法だと、一人分作って終わりになるから、方法を変えようと思う。
今日はベッドの形を凵型で成形してくれ。
これを上下逆にすれば、ベッドの形になる。
この後、ウレタンで接頭語に高反発を付与して、高反発ウレタンとして、
床板の上に乗せて、ベッドとして完成させる事にした」
彼も魔力切れの僕を見て、今まで考えていてくれたのだろう。
気を取り直して早速、木材を凵型に成形し、ベッドの骨格が完成する。
今度は体にも負担が少なく、いくらでも成形出来そうだった。
10個ほど作ったところで道上は
「次はこれでマットレスを成形してくれ」
例のごとく、どこで入手したか不明なウレタン樹脂が手に乗せられていた。
まずは見切が「高反発」とウレタン樹脂に手をかざして宣言する。
見た目は特に変わった様子は無いが、これでいいみたいだ。
次にこちらも金型を成形し、床板に乗るマットレスを先ほどと同じ数で作った。
道上は二つを組み合わせ、寝心地を確認した。
「これならベッドとして、量産出来るな」
どうやら完成としていいようだ。
道上はまた、前を見つめて国王と話し始める。
「これで基本のベッドを完成したが、どう言う効果を付与すればいいんだ?」
一同は本来の目的を忘れていて、思わず苦笑した。
国王はその様子に構わず
「城下町の者達に使わせるなら、『オートカウンター』が妥当じゃな。
完全回復では、敵に能力吸収系が居たら、窮地に陥るからの」
道上は事務的に
「分かった。諸々の付与は『接頭語生成器』でどうにもなるから、
後は完成した時に報告して送る」
道上は鷹の目を遮断し、見切に指示して、オートカウンターを付与する。
能力を付与するだけの為、見切の魔力はほとんど減少しない。
気にする必要も無く、無事に能力付きのベッドが完成し、
国王に完成した旨を伝えた。
現時点では、プロトタイプで十分な為、
今日使った金型は工場内に保管する事にした。
仕事はこれで終わり、みんなも工場を出て、
思い思いに買い物したり、生活範囲の周辺環境を整えたりした。
夕方になり、僕も部屋に戻り、夕食を取る事にした。
今日のメニューは、大皿に乗ったフルーツと紅茶である。
フルーツはブルーベリー、キウイ、バナナ、レモンと……
(ん?これは大臣の趣味だろうか)
とても偉いおじさんが厳選した物とは言えない様相である。
(この辺も落ち着いたら聞いてみるか)
何だか、毎日のように大臣に対して、
違和感が増えているのは気のせいだろうか。
気にしても体に悪いので、風呂に入って寝る事にした。




