表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/16

まずは初顔合わせ

翌日。

目が覚めると、ドアがノックされ、昨日の大臣が入ってくる。

「やはり、そのまま寝ておったか。

  風呂にくらいは入るのだぞ。そこに簡易風呂があるからな」


大臣の指差す右側を見るとガラス張りの空間がある。

そこには日本では一般的な湯舟がある。

さらに湯気も出ていた為、おそらくは大臣がやってくれたのだろう。


僕はぎこちない笑顔で

「ありがとうございます」

礼を言うと、大臣はさらに

「風呂に入ったら、

  食パンを一斤と紅茶を用意しておくので、今はそれを飲み食いするがよい」

朝食まで用意してくれるのである。しかし、僕は若干違和感が沸いて

(そこは食パンなのか……まあ、初日だしな、

  手早く食べるようにと言う事なのだろう)

要件を伝えると、大臣は部屋を出て行く。


僕は早速、服を脱いで、ガラス張りの風呂場へと入る。


風呂場の床は薄い灰味の青緑となって、

入って左側に良くある風呂桶と白のシャワーがあった。

(この風呂場を設定した人はどう言う発想で設計したのだろうか)

風呂桶は日本、シャワーはフランス。

と言った具合なのだが深く考えても仕方が無い。

今は何も考えずに近くにあったボディソープとシャンプーで体を洗う。


風呂に10分ほど浸かってから

入口付近に忽然と出てきた棚に目を遣ると、

タオルと支給用の服が置いてある。

タオルで体を拭いて服を着ると、

棚と元々来ていた私服も一緒にこれまた不自然に姿を消した。

(どう言う仕掛けだ?)

現代日本の技術で考えても、

出来そうにない事が平気で起こる辺り、不思議に思うしかない。

(まあいいか。服自体は歩き通しで汗臭いだろうし、

  これからはこの国にお世話になるつもりだから)

前世には特に思い入れがあるわけではないので、

既に過去の物として踏ん切りが付いていた。


風呂場を出ると、タイミングを計ったかのように大臣が部屋に入って来る。


食パン一斤と紅茶を木製の丸い盆で運んで、近くのテーブルに配置した。

その光景に思わず

「普通、メイドが持って来るのではないですか?」

大臣は何を言っているか分からないと言う表情になり

「そんなもの、わざわざメイドに頼める訳がなかろう。

  そうだな、この国の女性達なら、

   主に城下町で自分の店を持ったりして、個人で働いておる。

 これは現国王が即位した際の約束事なのだ。

  お前も見たであろう、城下町で働いている女性の姿を」


僕は城下町に入ってから今までの事を思い返してみた。

(言われてみると、城下町では確かに働いて居たな。

  それに城にはそのような小間使いの扱いを受けている女性は居なかった)

回想を終え、大臣に考えを改めると伝えると

「分かればよい。食事を終え次第、昨日の玉座まで来るようにな」

大臣はドアを閉じて、部屋を出て行った。


すぐにテーブルに置かれた食パンと紅茶を飲み食いして、

昨日、謁見した玉座まで行くと、国王が顔色を見て体調が万全か確認した。

体調に問題ないと確認した国王は大臣を呼んで要件を伝える。

今日は予定どおり、例の工場へと大臣の案内で行く事になっている。


城を出て、城門を前に見立てると、城の右後方に例の工場が見える。

道中、大臣とは特に話す事も無く、無事に工場へと着いた。

僕は工場らしき建物に入ると、

本来は受付窓口の担当が座るであろう席に国王が座っていて、

両側には各5人ずつ、こちらを見て立っていた。


国王は顔を見るなり

「揃ったようじゃの。

  早速、皆で自己紹介せよ。まずは道上からいいだろう」

僕から見て右側の一番奥に居た対象者が手を挙げた。

彼は黒のジャケットとスラックス。インナーに緑のシャツを着ている。


早速、自己紹介を始め

「俺は道上勾大みちうえ とらまさだ。

  ギフトは鷹の目だ。おそらく一番年下になるだろうが、

   異世界に来てから敬語を使うのは面倒だ。

 この工場ではみんなもフラットな状態で会話してほしい。」

国王の前でとんでもない発言をしてきた。

敬語なしで共に仕事をしようと言う物である。

確かに異世界に来ても上下関係と言うのが面倒と言うのは分かる。

しかし、それは冒頭で発言をする彼はメンタル強者なのであろう。

(なるほど、だから国王は彼を最初に自己紹介させたんだな)

国王とどう言った関係性があるのか何一つ不明だが、

妙に納得の行く流れであった。


これ以降は道上と言う人の挨拶があまりにも強烈で、

後の事はほとんど覚えていない。

次々と各人が簡単な自己紹介をして終わったが、

全く頭に入って来なかった。嫌でも仕事で関わる事になる。


初日は挨拶で終わりになる流れだったのだろう。

道上の自己紹介に驚いたのは僕だけでなく、他の皆も同じだった。

揃いも揃って、口を半開きにして呆気に取られていたのである。


城への帰りで、国王と一緒に歩いていた。

道中、国王は歩きながら

「あの道上と言う者。なかなか面白いやつであっただろう。

  しかしな、あやつは生前。殺人の冤罪をかけられたり、

   その冤罪が原因で元カノにも殺された気の毒な者での」

苦虫を嚙み締めた表情を僕に見せ

「これからは道上のような者も来ても、仲良くしてやるのじゃ」

その言葉を最後に以降は無言のまま、城へと戻る。

国王は例の玉座の左後方に姿を消し、僕は割り振られた部屋へと戻る。


部屋に入ると、テーブルには冷たい麦茶。

それに味噌汁とご飯が温かい状態で置かれていた。

おそらくは大臣が置いていったのだろうとは思うが、

どうして帰る時間まで正確に分かるのだろう。

お椀には特に保温機能が付いているとは思えず、

やはり時間を見計らって置いたのだろうが、全く不思議である。

今度、大臣に聞いてみよう。


食事を終えた1分後。

テーブル上にあった物が突如消えたのを見て

(あのテーブル、何かおかしい)

どういう仕掛けか分からないが、

気にしたら負けと思い込んでやり過ごす事にした。


改めて部屋を見てみると、ベッドの右側。

つまり部屋を入って右手前端にハンガーラックが設置されていた。

そこには普段着、外出用、作業着がハンガーに吊るされていた。

(明日からはこの作業着を着て、工場に行けと言う事なのだろう)

クローゼットでないのがいいが、

普段着と同じ所に掛けるのはいかがなものだろうか。

(こう言った部分も改善していい、と言う事だろうか)

早速、明日の仕事始めに提案する事も決まり、

風呂に入って寝る事にした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ