挿話3 偽女神来襲の裏側
少し時は遡り、偽女神が真っ白な空間に連れ込んだ日。
国王の創造した玉座のある白い空間では、朝から話し合いが始まっていた。
「赤津とか言った人間がここに来た時点で、
このような日が来るのは確定してたよな」
始めに発言した彼女は、なぜか黒いヒヨコの着ぐるみは身に着けていた。
「だから、あなたに裏で行動してほしいんだけどね。
セイアちゃんって普段は清楚で通ってるから適任だよねー」
次に発言するアテナは、先程の者、セイアへお願いする。
確かに普段は清楚を通そうとしている彼女だが
「清楚な奴がこんな着ぐるみ着ねえだろ」
もっともである。
そもそも、服屋の店主以外で着ぐるみを着ている時点でおかしい。
セイアは白い空間を見渡し
「あれ、そう言えばラトナはどこ行ったんだ?」
服屋の店主の事だが、アテナは特に気にせず
「ラトナちゃんは偽女神を引き寄せる為の餌だよ。
彼女の偽物に、セイアちゃんが居ても気付かれないようにわざと、
あなたを置物にしてぶつける作戦だよ。彼女、私達よりかは全然弱いし、
その点、あなたなら多少は戦えるでしょう?後は目印を仕込めば完了だから」
道上と違い、説明はあくまで適当な感じである。
セイアは何度言っても変わらないと思い、溜息を吐く。
「まあ、俺のほうがラトナより信用出来ると言う事か、分かった。
今日一日は赤津だけを守ればいいんだな?」
彼女の答えにアテナを笑顔になり
「そうそう。弱い人が居ると見せかけて、
相手が油断した隙に反撃の芽を仕込むのは、戦いの基本だよー。
だから、お願い、ね。上手く行ったら、予算多く出すから」
さらに頼み込んで、セイアを説得する。
「少し恥ずかしいが、良いだろう。
早速、工場の依頼人として行くぞ。じゃあな」
彼女は転移を使って、この場を出て行った。
「どうかの、あの合成悪魔の撃退作戦は?」
声の主は国王であった。アテナは愛想笑いで
「セイアがラトナの代わりになっただけで、まだですね。
次はスカディちゃんに連絡取るので少し待ってください」
今度は鷹の目で連絡を取る。
「スカディちゃん、悪いんだけど。
私の指示があるまで動かないでくれるかな?」
連絡した相手、鷹の目越しのスカディは、
どす黒いオーラをこちらにまで放っていた。
(これじゃあ、赤津君。あなたを嫌いになると思うよ)
心で思っただけで、彼女は涙目になる。アテナは続けて
「だったら、偽女神が彼に接触するまで、我慢しましょうね」
子供に言い聞かせる感じで宥める。
「指示はこれだけだから、それまでは力を蓄えていてね」
アテナの更なる指示に、スカディは黙って首を縦に振り、
鷹の目を強制遮断する。
(これで最低限か、次は再確認をしよう)
「国王、例の花を添えたメッセージを確認させてください」
国王は王冠に隠していたスペアを彼女に見せる。
「対象の防衛はあ・す・への三人、
突発的な遭遇時の討伐はも・も・への三人か……
多分、ヘスティアは加われない可能性が高いですが、
その時はどうします?」
アテナの問いに国王は
「気にする事はない。その為のへ、だからの。」
この人選で問題無いと言う事だ。
(また、ヘスティアが殿の役か……あの子も大変だねー)
気になる点もあるが、おそらくは討伐後の問題の為、
今は気にしないアテナである。何かに気付き、連絡を取ろうとすると
「モイラ、モラ、カルポーの三名なら、既に連絡を入れておるぞ。
あまりにも不自然な動きをすると、敵に気付かれるからの」
国王もまた、秘密裏に行動していたと言う事である。
アテナもそろそろ指示を出し終え、この場から去る準備をするが
「国王、どこが良さそうでしょうか」
機転が回るが故に、適切な場所選びに苦労しているようである。
国王は顎鬚を数度撫で
「ふむ、そうじゃの。城下町東にある水車の近くで、
隠蔽スキルで待機するのはどうかの」
(うーん、私の隠密スキルだと不安なんだよねー)
アテナは心許なく思っている。
国王は右側の口角を上げ
「そんなお主の為、今からある魔法を掛けようかの」
彼女の意思を聞く前に
「ステルスイグジスト」
すると、彼女から出ていたオーラごと、存在が遮断された。
「なるほど、存在隠密のスキルですか。聞いた事はないけど。
分かりました。これで、敵を待ってみましょう。
それでは、早速待機しますので、この辺で失礼します」
アテナも転移で、水車の近くへ行って待機した。
「これで、準備だけは終わった。
後はわしの後処理が問題じゃの」
赤津の件を解決したとしても、
根本的な問題は未解決な為、
今一度、準備しないといけなかったのである。
■■■
夜になり、いよいよ動きを見せた偽女神。
国王は鷹の目にステルススキルを重ねて、
悟られないように様子を確認した。
結果は不戦勝。
スカディの放つ、絶対的な死のオーラに成す術が無かった。
念の為、スカディが転移すると同時にこっそりと、
概念殺しのスキルを付与してやった。
策は功を奏し、偽女神が今まで存在していたと言う事実まで、
完全に消去する事に成功した。
これを同じく、鷹の目に当たる魔族のスキルで確認した者が居たが
「やはり、ステルススキルを付与しておいたのは正解じゃの。
こちらからは様子を見ているのは丸見えじゃ。」
丸見えになった鷹の目の奥の世界を確認する国王。
(んー、これは……トイフェルコラッシ、冥の悪魔。
なるほどの、星の材料も悪魔を使い、成形されている世界。
おお、少しでも逃げようとして、
星の原料となる悪魔の残骸を持ち逃げしようとしておるの)
確認した限り、星を作る為の成分が悪魔達なら、
現在生きている者達は悪魔の頂点と呼ばれる者ばかりだ。
であれば、二度と存在出来ないようにしなければならない。
「わしに必要なスキルがあって、本当に良かったの」
逃亡者を一人も逃さない為、星を包む程の大きな障壁を作り、
鷹の目越しに手をかざす。
「ドロフォノス エンノイオン」
すると、今まで存在していた悪魔達の住む星が自らの障壁ごと、
不自然な形で姿を消したのである。
「ふぅ…やっと終わったの」
国王は溜息を吐いて、ほっとする。
「後は、赤津が眠った時に『契約結婚』の件を話してやるかの」
赤津の事を考えていると
「じゃあ、私の名前を教えていいかな?」
「私も不便だから、名前を教えたい」
鷹の目越しで、別々の場所に居るアテナとヘスティアからだ。
「構わぬ。そなた達も今まで不便を掛けて悪かったの」
二人は別に気にする様子も無く国王に返答し、鷹の目を遮断した。
「さて、そろそろ話をしてやるかの」
赤津から眠りの反応を感知した為、
こちらに呼んで、例の話をした。
さらに数日後、ごく一部の存在は悪魔の星の概念を無にした。
と言う空間の違和感に気付き、こちらにやって来た。
やって来た者は今はスカディの手足となって、
平和王国の外の世界で、色々とやってくれている。
名前は……アンドロマリウス。列記とした悪魔である。
両手は複数の蛇になっており、物を掴む、本の頁を捲るなど、
全て、蛇達がやってくれる。
彼自身も元々、一般的な悪行に勤しむ者ではなく、
邪悪を見つける。
他者からの物品を奪還し、奪った者を引っ捕える。
そして、前述の対象者の宝物を見出す。
と言う、本当に悪魔なのか怪しい存在の者である。
スカディと対峙した際は、一方的にやられ、
彼女の手足となる事で生存権を与えられたと言う、
何とも不憫な物だが、わしらにも友好的な為、
彼を悪魔だと思う者はほとんど居ない。
まあ、話は逸れたが、
彼は逃げる悪魔どもを一人残らず捕え、
永劫の中で命や魂を奪われた者達に対し、
何かしらの形で奪われし者へ還した。と言う事であった。
別れ際、彼は「スカディ様によろしくお願いします」
と言って、転移で去り、持ち場へと戻ったのである。
「赤津達が生きておる間、もう何も起こる事は無かろう」
国王が未来予知をした結果、
千年先までは不穏な事は確認されなかった。
「さて、これからは事の成り行きを見守るかの」
国王は改めて、一連の騒動の終息に胸を撫で下ろしたのだった。




