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22/26

彼女達の準備は万端だったようです。

翌朝。

彼女は既に目覚め、テーブルの席に腰を掛けていた。

テーブルには花と紙が置いており、

黒の花と紙には『あすへ』。

赤の花と紙には『ももか』。

と書いていた。


(明日へ、桃花?何の事を言っているんだろうか)

昨日の夜についての事だとは思うが、見当が付かない。

しかし、スカディはこの意味が分かっているようで

「昨日みたいな事があったら、絶対に私が守るから。

  その時にちょっとビックリすると思うけど、

   轍は自分の身を守る事だけを考えてね」

いつもとは違い、真剣な眼差しで僕に言ってくる。

僕も偽女神に命を奪われたくは無いので、首を縦に振る。


彼女は花と紙を転移を使って、どこかに移動させた。


とりあえず、日常に戻り、まずは二人で朝食を摂る。

作業服に着替え、いつも通り工場へ行く。


作業場に入ると、

いつものメンバーと、

黒いひよこの着ぐるみを来た誰かが丸椅子に座っていた。


彼女は僕を見ると、椅子から立ち上がり

「初めまして、私は花屋をやっています。

  ところでアレは、家に届きましたか?」

テーブルのメッセージの事を言っているのだろう。

僕は黙って、首を縦に振り、意思を伝える。

「今日は私の依頼もやって頂く事になるので、宜しくお願いします」

依頼兼警護の役目で来た。

と言わなくても分かる状況だ。


「今日は店で取り扱う植物の栄養剤をお願いに来ました」

彼女が説明の続きをしようとすると、道上はすかさず

「それは薬局の範疇だろう。第一、あなたの店に置いている植物。

  種類が色々あるから、傾向の絞り込みが出来ないと無理だ。

   問題はまだあって、それらしい物が出来た所で、

 薬剤との相性が悪ければ、作った物が良くても枯れてしまう」

問題点をざと説明する。


すると、彼女は微笑んで

「今日は失敗作が多く出来ても問題ありません。

  それが目的でもありますから、

   今日は赤津さんの監視を一日中、させて頂く事になります。

 その点はご容赦ください」

道上は今の言葉に、失敗作の使い道の見当が付いた。


「分かった。そういう事であれば、今日は夕方までずっと、

  試薬品を作っても問題ないと言う事だな」

他のみんなも失敗作の件については、

それとなく意図が伝わった為、仕事を始める事にした。


僕は金型を作る予定だったが、

花屋の店主が試薬品用の容器を大量に用意した為、

今日も周辺整理となった。


この日、活躍を見せたのは嶋堀と多越。

内容と言うのが嶋堀のギフト『液化融解』。これはどんな物でも、

強制的に液状化してしまう。正直、戦闘にも使えそうだが、黙っておく。

多越のカラーコーティングは容器の色付けにも使えるし、

試薬への色付けにも使える。どう言う訳か科学的な変化が一切起きない。


逆に見切の接頭語生成器は、どう言った変化が起こるのか不明な為、

僕と同じように周辺整理を手伝っていたのである。


今日は昼食の時間は無かった。これは食堂に移動した際、

偽女神があらゆる手で、僕に危害を加える事が想像された為だ。


実際、午後一時過ぎに、黒い光が僕を襲って来た。


花屋の店主に守られて事無きを得た。

その時に、午前中に作った栄養剤の失敗作を使って、

偽女神にマーキングをしていたのである。

彼女はそれ以降はしてやったりの表情をしながら、僕達を見守っていた。


終業時間となり、僕が工場を出た瞬間。

どこかで見た事のある、真っ白な空間に飛ばされた。

平和王国への転移直前に、偽女神が僕を脅しつけた場所だった。


直後、本屋の店主とスカディが現れる。そして

「結局、私のあげた同棲記念のプレゼントは役に立たなかったねー」

彼女にとっては本来の作戦よりも楽観的な状況となり、

呑気な口調で偽女神に聞こえるように言う。

対照的にスカディは、どす黒いオーラを空間全体に放つ。


「え、え?何これ、体が痛い……あああああああああ!!」

その場で突然、苦しみ出す偽女神。

スカディの放ったオーラと言うのは、

偽女神の放つそれとは、比べるのも失礼で桁外れな物。


本来、スカディ自身は相手に傷を負わせる事に特化した女神である。

悪魔の住む星の連中が全て束になっても、

犬死する程の本物と言える死のオーラだったのだ。


僕がスカディがオーラだけで、

相手を死滅させる程の戦闘特化な女神だと分かるのは、

『契約結婚』が決まった後の話である。

この許可が出ると、

女神達は自らの正体を明かしていい事になっているからだ。


話は戻り、偽女神はと言うと

「な……何なのよ、これ、魔界の話と違うじゃないのよ!」

と、実際には声が全く出ていない状態で、姿も黒い霧でしかないのである。


(それよりもスカディ、さっきより大きいような)

この空間に来た直後に比べると、今では五倍以上に大きくなっていた。

そして、彼女の発する声は、

お好み焼きを食べた時に注意された時と同じ、あの低い声だった。


偽女神がうわ言をつぶやくなら、

彼女はそれ以上に居合わせた人達には、

全く理解出来ない言葉をひたすら偽女神にぶつける事を繰り返していた。


偽女神はその過程で徐々に無力化された。

いや、意気消沈して、抗う気力が無くなった。

スカディが「ちょっとビックリすると思うけど」

と言っていたのはこの事であろう。


問題が解決し、国に戻れたら、

彼女には最大限の感謝の言葉を述べよう。

(後、スカディは絶対に怒らせないようにしよう)

僕はいつまでも優しい彼女を見ていたいので、心に誓ったのだった。


あの後、偽女神は完全に消滅し、

本屋の店主が国王から借りた道具を使って、

偽女神の存在していたと言う概念を消したようである。


この様子を遠くの星で見ていた一部の悪魔は全力で逃げようとした。

しかし、数日後に国王が悪さを働いた魔界を丸ごと『概念殺し』を実行し、

周囲の生命体には、

『ただの不自然な無の空間』と認識されていたようであった。


僕はその顛末を全く知る事は無く、

平和王国全体が無事であった為、

翌朝起きた頃には、すっかり忘れていた。


何かあった物が消滅し、ただの真っ白な空間が広がる。

もう何があったのか分からないのである。

心に残っているのは『何かに危害を加えられた』と言う事実だけ。

それもスカディの顔を見たら、どうでも良くなった。


本屋の店主が僕達も一緒に、転移で平和王国へと移動する。


数秒で、元の国に帰って来た。


転移した場所は、ピザ屋の前。


ピザ屋のドアから出てきた店主は僕達の顔を見るなり

「私は要らなかったね」

一言だけ。


文句を言っているようには見えない彼女に二人は

「ごめんね、もう少し余裕があれば良かったんだけど、

  スカディちゃんの我慢が限界だったから、そっちを優先しちゃった」

「ごめんなさい、最低限の怒りで止めてなかったら、

  宇宙を一つぐらいは消してしまっていたから、本当にごめん」

本屋の店主はまあいい、スカディはとんでもない発言である。

彼女の機嫌一つで、宇宙が容易に消滅してしまうらしい。


ピザ屋の店主は一回目を閉じてから開き

「別にいい。私達の日常を守る為なら仕方が無いと思う。

  だから、二人も早く戻って眠りましょう」

彼女は僕達に微笑んでみせ、店の中へと戻って行った。


ここで本屋の店主が溜息を吐き

「本当にあなた達はいい人達だよ。

  私はもう、店に戻って寝るから、赤津君も早く寝てね」

彼女は僕達に手を振り、転移でこの場を去って行った。


今居るのは、僕とスカディだけ。

彼女の大きさは元に戻り、いつものスカディだ。

「そう言えば、いつもの山登りの服じゃない」

家で二人、食事を摂っている時の格好だった。


彼女は顔を真っ赤にして

「あっ、全然気付かなかった」

その場に座り込んで、身を竦める。


今はただ、彼女を愛おしく思い

「これからは顔を隠さずに生活してほしい」

本心だった。今までも僕だけの知っている姿に優越感を覚えたが、

やはり、いつでも可愛いスカディを見ていたいからの言葉である。


彼女はその言葉に顔を上げ、僕の顔を見る。

彼女の顔を見るだけで、幸せを満たされそうになるが

「でも、部屋着は変えたほうがいいと思う」

その言葉に彼女は

「あ!着替えて無かった」

また座り込んで、顔を俯いてしまった。


僕はそんな彼女に

「もう戻ろう?今なら、誰も見てないと思うから」

スカディは一度、周りを気にしつつも、立ち上がり、

僕の左手を握って、二人で家へまで歩いて行く。


家に着いた。

時間の感覚が無く、

心にあるのは二人手を繋いで家まで歩いた事だけ。


正面入り口から店内奥の保管スペースへ行き、

右側の居住空間へのドアを開ける。


そこはいつも食事を摂っている部屋だ。

急に力が抜け、吸い込まれるようにテーブルの席へ座った。

「そう言えば、今日は昼ご飯を食べてなかった」

何かのせいで僕は、昼食抜きだったのである。


スカディは笑顔で、調理スペースへ行く、料理を始めた。

僕は彼女が料理を作る間、テーブルに顔を付けて、

いつの間にか気を失っていた。


料理が出来て、彼女が声をかける。

気を失ったのは時間にして、20分程であった。


今日の料理は山菜料理が5皿ほど。

二人を夜食を摂り、そのほとんどが僕の胃袋に入って行った。


食事を終え、彼女が後片付けをしてから、

僕達は寝室に行って、二人一緒にベッドに行く。


今日は、彼女と顔を合わせるように横向きで寝る事となった。

何か話そうとも思ったが、想像以上に体力の消耗が激しく、

そのまま僕は目を閉じたのである。


この話を載せて、タグを追加しました。

後、タイトルも今後、完結するまでに変更する予定です。

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