パフォーマンス用に作ったそれは
翌朝。
目覚めると、スカディは既に起きていた。
寝室を出ると、調理スペースで何かを作っていた。
10分程経って、料理が完成した。
テーブルに出されたのは、
『冷やし中華』を温かくしたような物と、
『鶏肉と白菜のピリ辛炒め』。
いい匂いで美味しそうではある。
それはともかく、もう一つ気になる点がある。
彼女に聞いてみる事にした。
「熱で死ぬんじゃなかったのか?」
彼女はすかさず
「料理を食べるだけで死ぬ事は無いから、轍も一緒に食べよう」
昨日と矛盾した事を言っているようでは無かった。
風呂のように全身を浸かる物だと駄目なのだろう。
この後、二人は他愛の無い会話を続けながら、朝食を摂った。
食べ終わり、席を立ち、作業服に着替えて
「行って来ます」
一言だけ、スカディに伝える。すると
「今日も私の為に頑張ってね」
昨日よりも僕を喜ばせる言葉で見送ってくれる。
外に出て、工場へと歩く中。
僕は思わず、気分が舞い上がってしまう。
工場に着く頃には気を引き締めて、
みんなにも挨拶をしてから、作業場へと入る。
今日は菊野が仕事の流れを話し始める。
「今日は鉄板焼きの屋台の店主からの要望で、
生地の小麦粉とキャベツを遠くから飛ばす機械を作ります」
一同が聞くと、顔をしかめて
「材料を遠くから飛ばすって、何だ?」
多越が疑問点を聞く。菊野は淡々と
「配置は屋台で店主自身が考えるとして、
複数必要になるので、10個成形すればいいと思います。
後で余った分はリサイクルに回しましょう」
以前行った、破砕機からの金型再製作。
今後は上手く行く事を願うしかないが、話を戻す。
要は材料の種類数を成形し、派手な動きをしながら
お好み焼きなどを作ると言う事である。
だとすると、10個では足りない気がするが、不足した場合は
金型から成形し、増やせばいいので問題は無い。
方針が決まり、僕は始めに円筒部の金型を創造する。
次に円筒下部に付ける材料を格納する為の角形部分を創造し、
最後に円筒下部の外側をカバーするような動力源を作る。
その後、一気に三種類の金型から成形をする。
道上がすぐに各部品を組み立て、鉄板焼き屋台の依頼品が完成した。
30分程で10個の材料飛ばし機を作り終え、
今は鉄板焼きの屋台に来ていた。
使う姿が想像出来ない為、一同が念の為に訪問したのである。
城下町の入り口から少し入って、左側にあり、国の許可の下、
広めに確保しているが、近くには本屋がある。
「なあ、これがあの本屋に飛ばさないか不安なんだが」
多越が予め、みんなに警告する。
道上も不安になり、本屋に入って店主に伝える。
「分かった。じゃあ、防壁張るから終わったら教えて」
大声でみんなに聞こえるように言った直後、本屋から圧力が出てくる。
道上が本屋から出てきて
「今、防壁張ったみたいだから、大丈夫なはずだ」
やはり、先程の圧は本屋から張られた防壁だった。
後は鉄板焼きの屋台の店主に、使用手順を説明し、
彼女自身が適当に配置する。それぞれの機械に魔力を込め、
各材料を円筒下部に入れる。
何も無い熱だけ入った鉄板の奥に構え、材料を飛ばす瞬間に備える。
最初の材料が飛ぶと、彼女は自身の顔と同じ大きさのヘラで上手く受け止める。
そして、次々と鉄板焼きを作る為の材料を飛ばし、
全てヘラで受け止め、整えたら完成。
(大道芸でもするんだろうか)
彼女のやっている事は言わば見物客へのパフォーマンスである。
同時に何をやりたいのかも知れたので安心した。しかし、その内の一人は違い
「大きなヘラで受け止めているみたいだが、これは安全に使える機械なのか?」
指摘したのは道上だった。
彼は屋台の右側に、普通サイズのヘラを床から垂直に刺して、
機械からを当てるように店主に指示する。
店主は戸惑いながらも了承し、機械を使ってみる。
次の瞬間。飛ばした刻みネギがヘラを見事に貫通する。
道上は思わず
「これじゃ、量産は出来ないな。
後で3種類の金型はやるから、上手い具合に使ってくれ」
性能が一般向きでは無かったのである。
一同は工場に戻り、一時間後に来た彼女に金型を渡す。
彼女は当たり前のように転移で移動させ、
自身はなぜか、歩いて出て行った。
僕達は気にしても仕方無いと思い込み、その日は終業とした。
僕は今日もスカディの家へと帰り、先程の事を説明すると
「多分、彼女は少しだけ落ち込んでいたと思う。
感情に出ると、すぐに転移する事を忘れるから」
鉄板焼きの店主なりに、屋台での出来事を反省していたのだろう。
ただ、今度は安全な物を依頼して欲しいと思う僕であった。
あれから一時間経ち、日が落ちる頃。
スカディは調理スペースで何かを作る。
料理が完成し、テーブルに乗る。
そこには『お好み焼き』があった。
僕は意図が分からないまま、料理を口にする。
美味しかった。鉄板焼きのお好み焼きより美味しいと思うと
「彼女にそんな事言ったらダメだからね」
いつもとは違う低い声で戒められ、僕は黙るしか無かった。
(スカディなりにも周りの人達に気を使ってるんだな)
僕は反省する。様子を見た彼女は笑顔を取り戻し、
いつもの食事風景へと戻ったのだった。
食事を終え、夜となる。
彼女は昨日と同じように体の汚れと匂いを取り除き、
二人はベッドで、共に寝た。




