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店主達からの要望を続くが、スライサーではない。

翌日。

昨日と同じく、スカディの部屋で目が覚める。

横には同じベッドで添い寝をしている彼女の姿があった。


彼女はまだ眠っており、何か寝言を言っているが、

あまりに小さい声でつぶやいている為、何を言っているかは分からない。


上体を起こし、ベッドから離れた。


寝室のドアを開けて部屋を出ると、

どうやら、調理スペースと、

食事をする為の楕円型のテーブルと椅子が配置されていた。


僕が立ったまま、眠気に襲われて欠伸をすると

「おはよう。もう朝だね」

彼女は軽く挨拶し、調理スペースの右側にある冷蔵庫を開け、

直径5cm程度の干し肉を出した。長さは25cmぐらいだと思う。


彼女は立っていた僕へと近付き、

手の届く距離まで来た瞬間。僕の視界は急転した。


僕は床に仰向けになると同時に、

彼女に膝枕をされた状態になる。


彼女は右手に持っていた干し肉を僕の口に入れて

「ゆっくり食べてね」

何だか、赤子のような気分になった。


僕が干し肉を食べると、膝枕から解放されて

「今日も仕事頑張ってね」

笑顔で言ってくれる。何だか幸せだった。

前世で僕だけを見てくれる人は誰も居なかった為、余計にそう感じた。


僕は作業服に着替えて、店の正面から外に出た。

工場までの距離は、城の部屋からと比べ、近くなっていたので意外と早く着いた。


工場の受付正面付近には多越と百渡が居て、こちらに声をかけてきた。

「よお、何だか面白い事になってるな。

  赤津が城下町の子と同棲したって噂になってるぞ」

「アイスクリームを売ってる女の子と住むようになったって、

  国王から聞いたが、随分物好きだな」

百渡の『物好き』と言う単語が出るのが、普段のスカディに対しての評価である。


僕は昨日、彼女の部屋で目が覚め、

厚手の服装以外の彼女を見ているので、評価に対しては仕方無いと思った。

(でも、僕しか知らない彼女が見れるのは、何だか嬉しい)

油断をしていると、ついつい彼女の事ばかり考えてしまうのである。


僕は気を取り直して

「うん、急に決まった事なんだが、

  国王が早いほうがいいと判断したみたいだ」

簡潔に話し、話を切り上げる。


作業場に入ると、みんなともう一人。

なぜか本屋の店主が立って、こちらを見ていたのである。


彼女は僕を見るなり

「赤津君、おめでとう。始めの『契約同棲』は君だったねー。

  今日はそのお祝いにこれをあげるよ」

そう言って、両手を前に広げると、

手の平には楕円柱の形状をした物があった。

底面部を見ると、白く輝き続けていたが、

それ以外はただの物体である。


「これは何ですか?」

無意味に輝き続けている物体を見ながら、彼女に聞く。

「これはお守りみたいな物。本当に危ない敵が居た時は

 楕円の部分を握って、そのまま、相手に対して前に向ければいいよ」


僕は早速、彼女の指示通りにやってみたが、

特に剣のような物が出る訳でもなく、結局何なのか不明なままである。

彼女はにやっとして

「今使おうとしたって、

  何も起きる訳ないから、その時に使わないと効果は出ないよ」

言い終えると、腹を抱えて笑い出した。

「でも、お守りとしては絶大な力があるから、

  本当に危ない時は使ってね」

彼女は真顔になり「じゃあねー」と言って、姿を消した。


様子を見ていた道上は謎の物体に疑問を持ったが、

相手にしている場合ではない為、仕事の説明に入る。

「赤津の手渡された物についてはこれで終わりにしよう。

  それよりも、昨日は休業にしたから、今日から改めて、

   各スライサーの成形に戻ろうと思う」

僕は彼の言葉に

(昨日、臨時休業したんだ、悪い事したな)

心苦しく思っていると

「いや、みんなは休業して喜んでいたぞ。

  俺はそこに居た本屋の店主を色々と手伝っていたからな」

言われてみると、僕がこの国に来てから休み無く仕事をしていた事に気付く。


これ以上考えても仕方が無いので、気持ちを切り替える事にした。

道上は改めて、説明を始める。

「今日の担当は城成(しろなり)だ。成形するのは小型自動掃除機。

  地面を這う自動掃除機だが、これを魔力を込めて動くようにする。

   始めは赤津が外装の上部と底面部を分けて、金型から成形する。

 次は内部の動力源を魔力を餌とするスライムを収納して、

  使用者が魔力を込めれば、スライムが地面のゴミを食べると言う流れだ」

初めて、魔物を使った製品を作る事もあり、多越は

「大丈夫なのか?閉じ込めたスライムがいつか暴走しそうだが」

初の試みと言うのは、常に不安が付きまとう物である。


しかし、道上は

「今日の依頼者は城下町全体の環境を任されていて、

  異変が起きた時はすぐに近くの住民が対応すると言う事だ。

   依頼者自身も毎日、スライムの傍で寝食を共にして、

 暴走しないように気を付けているとの事だから、問題ないと言っていた」

一同は不安に思いつつも、道上の指示通りに小型自動掃除機を作る事にした。


製作中、スライムを触った時に冷や汗をかく場面もあったが、

大人しく動力内部で待機し、完成してからの試運転では問題無く働いていた。


完成品は依頼者に渡したいが

「ん、依頼者はいつもはどこに居るんだろうか?」

道上が今更ながら、疑問に思う。

それもその筈、今回の依頼者は城下町全体の全通行路の保全を行う職員で、

休憩所となっている城門奥に居るのは極めて稀である。


仕方無いので、今回は試作品を僕一人で歩いて探す事にした。


始めに工場を出て、スカディの店まで歩く。

この付近には居ないようだ。


次は城門西まで歩く。

付近にはピザ屋があるが、この付近も居ない。


さらに城下町の入り口まで歩き、ここにも居ない。


最後に城門東まで歩くが結局居ない。

工場まで歩いて城を一周して、ここで変化が起きる。


五日前に遭遇した銭湯の店主であった。

「こんにちは、今日はどうかしたの?」

当たり障りの無い質問である。僕は小型自動掃除機を見せて

「この機械を使って、城下町の地面を掃除するんですが、

  依頼した通行路の整備員の居場所を知りませんか?」

すると、彼女は思い当たりがあり

「ああ、あの子なら、銭湯に来てるよ。もう少しで、

  出てくると思うから、中で待たせてあげる。

   コーヒー牛乳もサービスであげるから」

彼女は僕の手を引き、銭湯まで連れて行かれる。


銭湯の施設に入ると、正面に番頭が待機している。

番頭は無言で一礼し、依頼者へと目線を向ける。


そこには浴衣を着ていた整備員が居ると思うが、

普段の制服姿では無い為、本人か否かは不明である。


少しして、浴衣姿の彼女が僕に気付き、声をかける。

「ああ、あなただったのね。あの子と一番乗りで同棲している。

  いやー、私は嬉しいよ。あのモテない彼女が同棲するなんて」

「誰がモテないのかな?」

気分良く話している彼女の左側に転移で現れたスカディ。


「これはお仕置きが必要ね」

次の瞬間。浴衣姿の彼女の肌には霜が付き、彼女は

「風呂に入ったばかりなのに」

その場でブルブルと震えていた。


スカディはすぐに僕と腕を組んで一緒に出て行こうとする。

「あの、今日の製品を渡さないと」

僕は慌てて、彼女を止めるが

「いいの。

  彼女からの謝罪と引き換えに取りに来させればいいんだから」

今度こそ、僕と一緒に銭湯を出た。


その後は単独で帰宅した事をスカディが国王に伝え、

道上達にも伝わった為、特に問題は無かった。


さらに日が落ちてから、制服姿で現れた彼女がスカディに謝って、

依頼の品を受け取り、そのまま帰って、やっと日常が戻った。


夕食をスカディと摂っている時にある事を思い出し

「そう言えば、ここに来てから僕はまだ風呂に入ってないんだが」

銭湯に行った事がきっかけとなり、

風呂に入ってない事に気付いたのである。


それでも、彼女は笑顔で

「じゃあ、私が魔法で汚れと匂いだけ凍らせて取り除くのはどう?」

すごく便利である。

(でも、彼女は風呂に入らないんだろうか)

心で思っていると、スカディは

「それは無理かな。私って熱に弱いから死んじゃうと思うの」


衝撃の一言。

しかし良く考えると、人間とは思えない人が多く居る為、

熱に弱いと言うだけなら、変さで言えば可愛い物である。


僕はこれから、夜の日課として、

彼女に体の汚れと匂いを取り除いてもらう事にした。


彼女も僕への施しをする事に喜びを感じていた。

(何だか、申し訳無い事をしている気分だ)

スカディが段々と、

慈愛の女神に見えてきた事については内緒である。


この後、僕達は同じベッドで寝る事にした。


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