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挿話2 城下町の店主の一人から見た転移者

私は城下町でピザ屋の店主をやっている。


今回、工場に来た彼らは私達の為に生活を良くしてくれるらしい。

彼らの中で面識があるのは、道上と言う人だけ。


彼が初めて私を見た時、不思議そうな顔で見ていたけど

「俺は道上。おそらく、これからかなりお世話になると思うけど、

  他の人達があなたの所に来た時は優しくしてやってくれ」

彼の言葉に私は

(え、この人。私の正体に気付いているの?)

思わず、警戒した。すかさず彼は

「あ、悪い。あなたを別にどうこうしようとする気じゃないから、

  気を悪くしないでくれ。国王からも事情は聞いてるから」

どうやら、私に振られている役目を知ってからの接触だった。


道上が来て以降、他に何人か城下町を通って、国王に謁見した。


赤津と言う人が来て翌日。

久しぶりに城から右後方にある工場が稼働する。


稼働すると言っても、特に道具も無く、

受付、作業場、食堂と言う空間が広がっているだけで、

現時点では何も無い。


昨夜、国王に食堂の机と椅子を用意するように言われ、

カウンターは、臨時で屠殺場で働いている子が対応する事になった。


工場が稼働した日。再び国王からの伝言で

「すまぬが、木板とアクリル樹脂を用意してくれないかの」

と言う事だった。何だかこれからの私の役目が何となく分かった。


私の持っているスキルの一つ。

『緊急材料確保』を使って、地球のどこかから取ってきてと言う事だろう。

意外に重要な役目だった。指定材料が無いと、彼らの仕事が止まるから。


夕方、ピザ屋の奥にある住居空間で、

こっそり緊急材料確保を使い、悪人から材料を確保した。

突如、奪われた悪人は当然。

八つ当たりで周囲に被害をもたらすので、そこで屠殺場の彼女が活躍する。


屠殺場に転移して、彼女に対象の処分をお願いして、

転移でピザ屋に戻る。後は処分されるのを待つが、数分後に彼女が姿を現す。


「やっぱり、あなたの言う通り、この人はダメな人だったよ。

  本当に人の選別が上手いね。次も喜んでやるからさ」

彼女は笑顔でこの場を去り、辺りは何事も無く、静けさを取り戻した。


私は軽く溜息を吐き

(神をも恐れない人って、実に馬鹿な人ばかり。

  こんな人達からは罪悪感も沸かないから、助かるなあ)

地球と言う所は、私にとっては都合のいい世界。


善良な人がほとんど居ないので、材料を取り上げても、

冤罪のきっかけとはならないから。

今日見たいな悪人なら処分すればいいだけの話だし。


私は今日の出来事に、特に悪びれる事も無く、寝る事にした。


■■■


翌朝。

国王から今度はアダマンタイトの補充をお願いされた。


私はすぐに現地に向かって、対象の鉱石を強引に掴み取った。

地球ではこの鉱石を『工業用ダイヤ』と呼ぶらしい。


大体の人は宝石のダイヤモンドにしか興味を示さないので、

直接、石を抉り取っても騒ぎにはならない。

(本当にアダマンタイトの価値を知らないから助かる)

鉱石から抽出するにも硬すぎて簡単に取れる物ではなく、

取ったとしても、一部の人達が活用するに留まっているから。


私の場合、スキルで物理法則を無視出来るから、

現地の人から見て価値の低い物だと、

手間がかからずに取れる代物だから助かる。


対象の鉱石を取り終えて、国王に渡す。


後は本来のピザ屋でピザを焼く仕事に戻る。

今日も昼間は、店内には周辺の店主が来たり、

店員の子達が来たりで、それなりに賑わっている。


彼らが来る以前、国王からは

「栄養が偏るので、しばらく彼らにはピザを提供しないようにの」

忠告されていた事もあり、結局は道上しか話相手が居なく、少し寂しい。


(でも、私の作るピザを美味しく食べてくれる子が多いから幸せだなあ)

別に異世界から転移して来た彼らとお近づきになるつもりはない為、

特に不満は無いが

(やっぱり、異世界の子達にも味見して欲しいかな)

私の味付けが口に合うかどうかだけは確認して欲しかった。


今は食べてくれる機会は無いので、その時に備えて、

色々なピザを作っておく事にしようと思う。


店の閉店時間となり、店内の後片付けをしていたら

「悪い、今日はお礼が言いたくて、ここに来た」

店の鍵をまだ閉めていなかったので、道上が店に入って来た。

私は片付けを中断し

「改まって、どうしたの?わざわざここに来て」

ピザを食べに来た訳ではない彼を見たら、思わず言葉を発してしまった。


私は念の為、ある事を聞いてみる事にした。

「ひょっとして、私が目当て?」

すると、彼は慌てて

「ああ、誤解させてしまったのなら申し訳無い。

  ただ、今後もお世話になるから重ねてお礼が言いたくて。

   まあ、女はもうこりごり、いや地球の人間にこりごりが正しいか」

無欲で会いに来てくれたらしい。私は少し笑顔になり

「そう、別にいいのに。それと、

  今後そう言った関係になる事は無いからそのつもりで」

恋愛感情を持たれないように忠告する。彼は頭を掻きながら

「あなたの正体は何となく分かっているから、手を出す事はない。

  そうだな……何となくだが、とても長い付き合いになると思う。

   そう言った意味での仲良くしてくれと言う意味だからよろしく」

どうやら、友情に関する物であった。私はさらに笑顔で

「それ、別に今じゃなくてもいいんじゃないかな?

  寿命が無い場合は無限だし、落ち着いてからでもいいと思う」

彼に向き直る。彼は改めて

「まあ、そう言う訳だ。今日はこれで用事は済んだから部屋に戻る」

そして後ろを向き、手を振って店から出て行った。


私は笑顔のまま、ほっと吐息を漏らす。


中断していた店の後片付けを再開し、終わってから

夕食を摂り、私はベッドに横になる。


(私の正体を知っているか。どうして人間じゃないと分かったんだろう。

  それに国王は知っていて放置しているみたいだけど大丈夫かなあ)

先ほど、私が言った『寿命が無い場合』と言うのは、

転移者が神の候補となる時だけ。滅多に怒らない現象だけど。


(まあ、そうなったらなったで、改めて仲良くしてあげようかな)

少しだけ楽しみが増え、私は少しの幸せを実感しながら寝る事にした。


■■■


翌日。

国王からの依頼はウレタン樹脂と綿花の確保。


私の専門ではないので、一度断ったが、

他の者にも助けを借りていいと言う事だったので、引き受ける。


綿花は綿の木から取れる物で、

ウレタン樹脂はイソシアネートとポリオールを混ぜて撹拌した物。


ポリウレタンはそれこそ、工場の彼らに任せたほうが早いと思う。

国王にすぐに伝えて、道上に作ってもらうようにした。


綿花は植物だけど、どこに行けばいいんだろう。


地球の環境では育てられる所は限られてるけど……

(あ、花屋に行けば良かった)

城下町の花屋は普通の彩り豊かな花だけでなく、

食虫植物やホウキの木、ハミングバードフラワーやトリモチ類など。


地球にはおかしな植物が数多くあるみたい。


ホウキの木は箒木と言っているみたいで、果実が食べ物になり、

ハミングバードフラワーのハミングバード、

あちらではハチドリと呼ばれているらしい。

これ以外にも薬草になる植物はかなり多い。


トリモチ類は、私達には通用しない罠だけど、

種類によっては、蝋になったり、アルコールなどにしたりと、

多用的に使える便利な物だから、何かと助かる。


綿花は主には衣服類で使う代物だから、割と触れる機会は多いけど、

これが花だから、変な植物だと思う。


私のひとまずの材料確保を花屋に行って終わりになる。


これ以上、用事は無いので店に戻り、

昼のお客様への対応に戻る。


店が閉店時間となり、いつものように店内を片付ける。

(国王も私を頼りすぎじゃないのかなあ)

材料に関係すると、考えもせずに私に頼んでくる。


頼られるのはありがたいが、

今日の場合、私の力は必要無かったと思う。


明日もまた、国王に材料確保のお願いが来ると思うけど、

今は食べて寝る事にしよう。

「お休みなさい」


いつの間にか真っ暗になった空間で、

誰もいないのに囁いて、眠りに就いた。


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