メントリアは『声』に支配されている
メントリアは占い師
占えば『声』が降りる
それは風のように
それは刃のように
ある日自らを占った
『良い仕事が来る。金が入る』
その通り大金が舞い込んだ
また占った
『知り合いが消えるが、悩みも消える』
確かに悩みの種は消えた
朝の天気を占えば
『雨が降る』
洗濯物は部屋に吊るした
夕餉の献立を占えば
『血の滴る肉を食べるといい』
無理矢理口に運んだ
いつしか
メントリアは何でも占った
ささいなことも
どうでもいいことも
そして
『声』は占いの時だけでなく
頭の奥で響くようになった
「メントリアは大天才」
『メントリアは大莫迦者。この世から消えろ』
「神さえも慄く預言者」
『悪魔も嗤う虚言癖。だから消えろ』
「聖女と称えられる者」
『魔女と恐れられる者。××しながら死ね』
メントリアの占いは当たる
だから 間違ったことはない
だから また占った
自らの運命を
『メントリアは、この世から消えたほうがいい』
──そうか
消えたほうがいいのか
『消えたほうが、世界を救うことになる』
ならば喜んで消えよう
メントリアは占い師だが
『声』が言うのだから正しいのだ
その最期は まるで
聖女のように 英雄のように
誰にも知られることなく
静かに終わりを迎えた
──
──
──
メントリアという名の女は『声』に支配されている。
その『声』がメントリアは占い師だと言うから、占い師なのだ。
だから、占いの結果である『声』に従って、自ら死んだ。
死んだ後も『声』が『死んだほうがいい』と言うので、死に続けている。
それだけ。
もちろん、その『声』は──
神でも悪魔でも天使でも精霊でもない。




