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サヨウナラ
恋情の縺れの果てに
滝に飛び込んだ
苦しみよりも悲しみが強くて
藻掻くことを諦めれば
激しき乱流も穏やかで
泡沫が弾け──
透き通った闇が──
私を誘う
嗚呼……、
それでも
何かをつかみたくて
手を伸ばせば──
泡沫をかち割り
腕が私をつかみ
強く引き上げる
気づけば
どことも知らない世界にいた
なぜか私は自分を忘れてしまった
それでいいのだろう
あの時──
滝の中で私は死に
今の私に生まれ変わった
こちらの世界で
私を助けてくれた男性
今は愛する夫である
言葉もわからない
身元も不明の私に
本当に親切にしてくれたし
そばにいてくれた
ただただ温かかった
この人のそばにいよう
この人と生きていこう
だから
「××××」
私を呼ばないで
「どこにいるんだ?」
私を探さないで
「帰ってきてくれ」
私を求めないで
『“サヨウナラ”』
こちらの言葉で
はっきりと決別させる
もう向こうの私は
存在しないのだから