↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
19/24

ヒロシ

「弱味って、どんな?」


 私が聞くと、イルカは語り始めた。

イルカには、他人の心を読む力がある。

そして、作業中にヒロシさんの心の声が聞こえてきたらしい。


「社長は証拠を持っている、仕事終わらせな人生終わりや、って」


 証拠とか、人生の終わりとか、まるで人でも殺したのかって感じだけど、イルカの口から出た真相は、もっと大変なものだった。


 数年前、新宿の歌舞伎町にある「あけぼのビル」で起きた火災事故。

この時、様々な要因が絡み、中にいた55名全員が死亡した。

このビルには、クラブや飲食店、雀荘などが入っており、調べによると火元は1階の避難階段とのことだった。

厨房の火やタバコの吸い殻が原因でないことから、警察は放火と断定したが、犯人は未だに捕まっていない。

その話を聞いて、私は察した。


「その犯人が、ヒロシさんってこと?」


「俺の頭の中に、火を付けたシーンと燃えさかるビルがイメージとして入り込んできたから、間違いないよ。 その時の光景が忘れられないんじゃないかな」


 ……そんなの、忘れられるハズがないじゃない。

55人も犠牲者が出てるんだから。

でも、何で放火なんて……


「あけぼのビルには雀荘が入ってた。 ヒロシさん、その日、大負けしてるんだよ。 有り金全部賭けて、負けたんだ。 腹いせで放火して、その場面を同席してた社長に見られたのさ」


「……」


 ヒロシさんが何でこんな所で働いてるのか、合点がいった。

会社の為に働いてるなんて、嘘っぱちだったんだ。

それに付き合わされた私は、心底腹が立った。


「行きましょ、イルカ。 こんな現場、1秒だっていたくないわ」


「だな」


 話しがまとまって、立ち上がったその時、背後からおぞましい気配を感じた。

振り向くと、案の定、そこにヒロシさんが仁王立ちしている。


「おい、もう十分寝たやろ。 時間あらへんのや、続き始めるで」 


 ヒロシさんから立ち込めるオーラ。

その正体が、まさか本当に亡くなった人らの霊だとは思わなかった。


「帰らせてもらいます」


「……はあ? 何ゆーとんねん。 お前、社長に弱味握られてんのやろ」


「バレても構いません。 帰ります」


 私は、扉へと歩を進めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。