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機甲戦騎キャバリアー  作者: クロイモリ
第四章:地中海邂逅編
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13-空中の死闘

 右手は肩から先が動かない。噴射剤の量は十分、だがどこかに歪みがあるのか飛行は不安定だ。この状況で長期戦を行うのは危険だ。

 イスカは左手でアサルトライフルを掴み、戦場へと飛んだ。島から3Kmほど離れた海上では武装ヘリがドラッケンの集団に追われていた。


「お前らぁっ、退けえ!」


 銃を向け発砲。側面からの攻撃にドラッケンたちは散開、ヘリに逃げる時間を与えた。戦場を見渡すと、敵機は三機のみ。どうやら哨戒部隊と不幸にも遭遇してしまったようだ。だがおかげで味方がいるとイスカは気付けた。


『キャバリアー……海東イスカだな? よく生きて帰った』

「アスタルさん……僕のことを探しに来てくれたんですか?」

『一時は航行を優先することになりかけた。だが、石動大尉が少佐を説得してくれた』


 やはり見捨てられかけていたのか、と思うとイスカの心に黒いものが湧き上がって来る。同時に石動が助けてくれたのか、という驚きが生まれた。


『海東イスカは一時的に任務への協力をしてくれている一市民であり、難民である。難民を見捨てて逃げ出したとあれば、責任の追及は避けられない。とな』

「石動さんがそんなことを……あの人が、僕のために……」

『下がるぞ。お前の機体は損傷が激しく、こちらも武器弾薬が不足している。何より会場で戦えるのはお前だけ、本隊がこちらに来れば不利は必至――』


 アスタルは撤退を支持したが、しかし敵はそれを許さない。キャバリアーのセンサーは高速で飛来する物体を検知した。8時方向から飛んでくるのはクリンゲフントだ。


『キャバリアー、逃がしはせん! この海が貴様の墓標だァーッ!』


 前傾姿勢のまま飛行を続けるクリンゲフント。双剣をクロスさせて前方に突き出し、腕の下に仕込まれたマシンガンを発砲。弾幕がイスカとアスタルを分断した。クリンゲフントはスピードを緩めずイスカに突撃、イスカは右肩のシールドを突き出し待ち構える。


「アスタルさん、下がってくれ! こいつをどうにかしないとッ……!」

『オリバセウスもこちらに近付いて来ている。決して無理をするなよ!』


 アスタルは旋回し戦線から離脱。それを見届け、イスカは右の補助アームからシールドを切り離した。シールドは双剣に挟み込まれて真っ二つに切り裂かれる。一瞬早く脱したイスカはクリンゲフントに銃口を向けトリガーを引いた。

 至近弾が命中したはずだが、クリンゲフントは意にも介さない。電磁装甲の出力もそうだが、基礎装甲の部分もブリッツフントよりも厚いようだ。変形機構などを採用していない分、強度を持たせることが出来るのだろう。

 舌打ちしグレネードを撃ち込む。炸裂機構を発動させるために必要な距離は20m。この間のアッシュとの交戦で距離が必要なことをイスカは学んだ。そして今回は十分な距離があった。爆炎と破片が両者を襲う。


(至近距離での爆発じゃこっちへのダメージの方が大きい……だが)


 火器はもうほとんどない。イスカはクリンゲフント目掛けてライフルを投げ捨て刀を引き抜いた。ラハムはそれを無視してスラスターを起動、更に踏み込んで来る。刀を構えカウンターを叩き込もうとしたが、妨害するものがいた。

 散開していたドラッケンが戻ってきたのだ。周囲を取り囲んだドラッケンたちは弾幕を形成、イスカは逃れるために移動を余儀なくされるが、その先にはラハムが待ち受けている。イスカは細かな動きで直撃を避けるものの、いくつもの傷が刻まれて行く。


『空は我らのフィールドだ! 貴様に勝ち目などない!』


 ラハムは双剣を平行に持ち振り払う。イスカは刀を逆手に構え左膝で刀身を支え、一撃をギリギリのところで受け止める。だがクリンゲフントの出力は極めて高い。受け止め切れずにイスカは吹き飛ばされた。


『機体の性能を活かせぬまま、恐怖に溺れて死んでいけ!』

「死ねるかよ、こんなところでさぁーっ!」


 四肢のスラスターで体勢を立て直す。

 ラハムは更に追撃を行う。


『イスカ、避けろよ!』


 突如として怒声が響く。海面が盛り上がり、そこからオリバセウスが現れる。浮上と同時にオリバセウスは全砲門を解放、砲撃を始めた。周囲を旋回していたドラッケン隊はその圧力に屈し、イスカへの攻撃を中断してしまった。


『下からの攻撃……! くそっ、これは!』

「空がフィールドだのなんだのと言っていたが、お前は空のことを何も知らなかった! そうだよなあ、ずっと地べたではいずり回っていたんだからさァ!」


 イスカはラハムを嘲笑った。ラハムは激高し、双剣を構えて突撃して来た。片方は天高く掲げ、もう片方は水平に。どの方向に逃げても捉えられる必殺の型。


『くたばれ、キャバリアー! 我々の未来のためにィーッ!』

「お前の未来なんかのために死んでやるほどお人よしじゃない!」


 イスカは上に逃げた。やはりラハムは分かっていなかった、戦場は三次元なのだ。地上に縛られた人間はなお高くへ逃れることを想像出来なかった。双剣は空を切り、イスカはラハムの上を取った。

 脚部ロケットランチャーを全弾発射。8発のロケット弾がクリンゲフントの頭部で爆発、頭部とアーマーを吹き飛ばした。視界を失い、落ちて行く猟犬をイスカは追う。群れ成す犬の喉笛を食い千切り、すべてを簒奪する狼の如く。


『何なんだ、お前は……その機体で、なぜそんな動きが出来るのだ! お前は、お前は本当に人間のなのか……!? 違う、お前は……お前は!』


 悪魔。


 ラハムの呪いはイスカを止められなかった。イスカが付き立てた刀は頭部から尾てい骨までを一直線に貫き、内部にいたラハムをも殺した。

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