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機甲戦騎キャバリアー  作者: クロイモリ
第四章:地中海邂逅編
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12-海上戦改修

 キャバリアーを見上げると、それはまた新しい装備を身に着けていた。

 恐らくはブリッツフントのものを参考にしたのであろう大型のウィングを背負っている。補助ブースターはブリッツのものよりも多い三対、ハンドキャノンは取り外されている。何となく、無駄にごてごてしている感は否めなかった。洗練されていない。


「どうだい、イスカ。こいつが空戦用のスラスターユニットだ」

「正直なところ、空を飛んで戦うのはもう止めにしたいんですけどね」

「しょうがないだろ。海の上を走って戦うわけにもいかないんだから」


 イスカの抗議はあっさりと跳ね除けられた。


「メインスラスターは背中のでっかい奴。フレキシブルな構造になっているから急制動にも対応可能。ブースターユニットはそれを補助するように出来ている」

「つまりは、ブリッツフントのパクリってことですよね」

「出来のいいものはパクってブラッシュアップすればいいんだよ」

「本当に出来ていれば、あいつともまともに打ち合うことが出来るかもしれませんね。でもすごいですねみんな、こんなものを僅かな期間に……」


 補給を終え一週間程度で新型装備を作り出すことが出来るなど、イスカには信じられなかった。小型(マイクロ)成形機(マニュファクチュア)の助けがあるとはいえ、元となる設計を行うのは人間にしか出来ない。

 とはいえ、この状況ではテストを行うことが出来ない。ぶっつけ本番での使用になることがイスカにとっては不安だった。


「もし敵の襲撃があったら、どうなるんでしょうか?」

「バトルウェア隊は甲板で固定砲台のように運用。AA隊は手動で火砲を操作。小型対空潜水艇があるからそれを使う人もいるけど……」

「前線に飛び出して行くのは僕だけ、ってことですよね。やっぱり」


 イスカはため息を吐いた。やはり一番危険な立ち位置は自分だ。


「出来る限りのサポートはするよ。頼ってくれていいんだぞ?」

「ゲゼルシャフトを飛べるようにしてほしいもんですね、それなら」

「元々の設計が飛行に対応していないから無理。キャバリアーの拡張性は凄いよ、海東博士はどんな兵器を作り出すつもりだったんだかねえ……」


 ありとあらゆる環境に飛び込み、火星人を抹殺するための虐殺兵器。喉元まで出かかった言葉をイスカはギリギリで飲み込んだ。そして自分の考えは、あながち外れていないだろうとも思った。


 このマシンは、海東良治の憎しみを体現するための存在なのだ。


(なら僕はなんだ? 僕は憎しみを表現するための媒体なのか?)


 火星人に対して恨みはない。両親を殺されたのは確かだ、だが自分も何人も殺して来た。そういう意味で、彼らとはイーブンだと思っていた。

 だが、キャバリアーに乗ると精神が高揚する。戦いの際にそれは最高潮に達し、人を殺す罪悪感すら塗り潰す。憎しみで戦うよりも性質が悪い。そういう自分のことが、イスカは一番嫌いだった。


「火力低下は避けられないからな。どうにかしてそれを補填したいと思っているんだけど……何かアイディアはあるかい、イスカ?」


 ゆっくりと考え事をする暇はなかった。


「そうですね……肩が空いてるからそこに何か付けられませんかね?」

「リボルビングキャノンみたいな? 翼との干渉を考える必要があるな」

「後はシールドを二つくっつけてガトリングガンの口径を上げてみるとか」

「重くなるからバランスは考えないといけないな。でもアイディアはいい」


 ワリと適当に言っているが、それを真面目に受け取ってくれるのは嬉しかった。もっとまじめに考えてみたいとさえ思える。


「ところで、父さんのデータを解析してるんですよね。どうですか?」

「どうですか、と抽象的なことを言われてもよく分かりませんね」


 隣で端末を弄っていた夕菜がふてくされたように言った。


「分かった、具体的に言おう。解析はどの程度まで進んでいるんだ?」

「ビームライフルの調整と、増設バッテリーシステムの構築に関してはほとんど完了しています。後は実戦テストを行うだけ、という感じです」

「……素朴な疑問だけどバッテリーの電力で動くんなら艦砲に出来ないの?」


 単純な考えだが、機動兵器に積み込むよりもいいような気がした。


「ダメですね。通常の艦船には重力制御システムが搭載されてませんから」

「えっ、そうなんだ。機動兵器にも積めるくらいだから小さいんだろ?」

「小さいけど、扱いについてはデリケートなものでねえ」


 ロナは『お手上げ』とばかりに両手を上げた。


「重力制御ユニットは中心部のコアユニットを五つの制御ユニットで操作する。それは一定の間隔で配置しなければ効果が上がらないんだ。バトルウェアでいえば胴部、頭部、両手、両足に設置しているんだな。そして重力制御の効果が適用されるのはせいぜい、コアを中心とした半径十メートル」

「つまり船をフォローするには全然足りないと。いっぱい付ければ?」

「制御装置同士が相互干渉を引き起こすからダメなんだよ」

「面倒だなあ、それ」

「面倒ですがそれに見合うだけの効果はあります。ビームライフルは重力制御システムを応用して力場を形成、ビームの起動を安定させています。そうしないとイレイザーのように拡散してしまいますからね。だからバトルウェア以外にビーム兵器は搭載出来ません」


 イスカは唸った。バトルウェアは、そしてビーム兵器は、自分が思っている以上に面倒で複雑な代物なのだと、今更ながらに分かった。


(そして、コアはまったくのブラックボックス……どうなってるんだ?)


 父はどうやって、こんなものを作り上げたのだろう? そもそも、火星はどんなテクノロジーを持っているのだろう。疑問は沸き上がったが、特に気にするようなことではない。イスカはそれを無視して話に集中した。

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