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機甲戦騎キャバリアー  作者: クロイモリ
第二章:オーストラリア縦断編
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05-戦いを楽しむ

 双刃を構えたイスカと剣盾を携えたアッシュ、そして銃を構えたマルグリットが向かい合う。地上戦においては機動性の面でキャバリアーに分がある、海上戦のような無様は晒さない。イスカは二人の動きを観察し、円を描くように移動し距離を測った。

 その時、湖面から水柱が上がった。撃ち出されたそれはジェット噴射で浮かび上がり、地上目掛けて飛んで来た。潜水機の短距離ミサイル攻撃だ。

 それを皮切りにしてアッシュとマルグリットは動いた。いくつかのミサイルはイスカのいるあたりを直撃するコースを取っていた。一気に敵が増えた。


「でも……困難が多ければ多いほどこういうのは楽しいんだよ!」


 イスカは自分を鼓舞すべく叫んだ。盾のへりを踏み傾け、取っ手の部分に足をかけて持ち上げる。盾はクルクル回りながら空中を舞った。


『あんな物でミサイル攻撃を防ごうというのか!?』


 アッシュは踏み込み、稲妻の如き鋭さで剣を振るった。機体の重量を生かしたパワフルで素早い一撃を、イスカは身を屈めてかわす。開脚した不安定な体勢だが、キャバリアーは苦も無く刀を振り上げアッシュの喉元を狙う。

 斜めに打ち込んだ刀は胸部装甲に防がれ、逸らされるが、内部に衝撃を与えることは出来たようだ。スピーカーから苦し気な『くっ』という呻き声が聞こえて来た。アッシュは苦し紛れに盾を振り回すがイスカには当たらない。

 一方、側方に回り込んでいたマルグリットがアサルトを撃つ。ほぼ重なり合っていたはずだが、マルグリットは器用にアッシュを避けイスカだけを撃った。しかもその一発一発の狙いが的確だ。電磁装甲に止められることなく銃弾がキャバリアーに突き刺さる。


(まだ行ける、まだ行ける。大丈夫、大丈夫だ)


 アッシュを避けているせいでマルグリットは致命的な部位を撃つことが出来ない。イスカは膝の屈伸を使い後方に跳躍、その直後頭上で何かが爆発した。シールドにミサイルが着弾したのだ。シールドは高速で地面に打ち出される。

 それがもう一撃を繰り出そうとしていたアッシュの気勢を殺いだ。シールドは地面に激突しバウンド、もう一度アッシュの目線まで持ち上がり彼の視界を塞いだ。アッシュは盾を打ち払いシールドを退ける。その眼前にはもうすでに、キャバリアーの姿があった。


『これを……計算していたのか!?』


 マルグリットは援護しようとした。が、彼女が気付かないうちに三発のロケット弾がすぐそばまで迫って来ていた。反応し切れず、彼女は装甲でそれを受け止める。ゲゼルシャフトの肩と脇腹にロケット弾が着弾。装甲を破壊した。

 シールドが地面に当たった時、砂煙が上がった。イスカはそれを見逃さずロケット弾を発射。噴射炎によって煙が上がるが、それは砂煙によって隠された。イスカはこれらのすべてを計算し、この一瞬に賭けていたのだろうか。


「出来るわけねえだろ、そんなこと! その場のノリでやってるだけだ!」

『なっ……そちらの方がよっぽど、ありえない!』


 アッシュは剣を引く。

 弓のように腕を引き絞り、そして放つ。


『お前は……戦いを楽しんでいるのか!?』


 ドラッケンの電磁シリンダーがスパークし、凄まじい力と速度で腕を前方に打ち出す。キャバリアーの、否、それ以外の機体であろうとも、全力の一撃を受け止めることなど出来ない。串刺しにされ撃墜されるのがオチだ。

 手元でクルリと刀を回転させ、逆手で持つ。イスカは左足で踏み込み、アッシュの刺突に合わせて腕を振り上げる。柄頭と拳とがぶつかり合い、刺突の軌道が大きく逸れた。強烈な直線攻撃であるがゆえに、ほんの一センチ、ほんの一ミリのズレが致命的な結果を生む。アッシュの刺突はキャバリアーの肩部装甲の一部を抉り、破壊するにとどまった。


「何が悪い、戦いを楽しんでいったい何が悪い!」

『なんだと!?』

「好きなことして人を助けられるなら、それが一番いいだろう!」


 右足で踏み込み袈裟懸けに刀を振り上げる。脇腹から入った刀はコックピットを根こそぎ破壊するだろう。アッシュは上体を傾け一撃死を避けるが、代わりに突き込んだ左腕を丸ごとイスカに捧げることとなった。


「チイッ! 運が、いや腕がいいってことだな! これは!」


 もう一撃を繰り出すだけの余裕はない。イスカは体当たりを仕掛けてアッシュを弾き飛ばした。アッシュは無様に背中から地面に投げ出される。とどめを刺そうとも思ったが、そうすればマルグリットに自分もとどめを刺されると分かっていた。イスカも後方に跳び、再び距離を取った。仕切り直しだ。


「だがもう一回打ち込めばあんたは取れる……覚悟してもらうぞ」


 状態は万全。周囲の戦況も改善しつつある。アスタルは戦車隊を指揮し前線を支え、AA隊の奇襲がそれを支える。ここで指揮官を落とすことが出来れば一気に戦況を国連優位に傾けることが出来るだろう。

 その時、眩い閃光が空に瞬いた。国連軍が上げたものではない、火星軍の撤退信号だ。そして空から二機のドラッケンがイスカたちの方に向かって接近、上空からアサルトライフルを撃ち下ろした。イスカは後方ステップで銃撃を避け、刀を戻す。キャノンを取り出し反撃を行うが、距離があり過ぎるため当たらなかった。


『隊長、撤退命令が下りました! 私たちが援護します、早く!』

『くっ、キャバリアーを目の前にして退かねばならないとは……!』


 アッシュは悔し気に立ち上がり、イスカに背を向けた。そこにキャノンを撃ち込むが、マルグリットに阻まれる。撤退支援機は攻勢を更に強める、これ以上は無理だ。イスカは岩山の影に隠れて体勢を立て直した。


(やられたな。でも指揮官を倒すことは出来た。これなら……)


 休憩しているところに、アスタルから通信が入った。


『イスカ、戻って来い。そっちもまだ生きているんだろう?』

「アスタルさん。ええ、何とか。でも、これであいつらを倒せましたね」

『何を言っている、本番はこれからだ。それに、これ以上は凌ぎ切れんな』


 アスタルは心底残念そうな声色で行った。


『斥候部隊が確認した。現在、火星軍の本体がアーガイル湖秘密基地に向かって進行している、とな。敵の戦力はざっとさっきの五倍だそうだ』

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