第三話
路地裏にも光が差し込み、漁師達の声が聞こえる頃、猫達はまだ惰眠を貪っていた。それはなにも今日に限ったことではない。猫は一日の大半を寝て過ごす。
そんな中、一人……いや、一匹起きていたのは、ソラ。昨日大分早くに寝たため、いつもより随分と早く目が覚めた。
「ふぁぁぁああ」
ソラはマヌケなあくびをし、うっすら目に涙を浮かべた。
猫は人間とは違い、何もするべき事が無い。でもそれが猫の魅力、とソラは自負している。
もう一度寝てもよかったのだが、路地裏の出入り口に薄い茶色の猫の尻尾が見え、好奇心から眠気は世界の隅に吹っ飛んでいった。
ソラは体を元の猫型に戻し、二人の眠る路地裏を後にした。
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コンクリートに爪があたり、カツカツと音をたてる。
人間の子供は学校へ登校する時間のようでランドセルを背負った者がたくさんいた。
町の大人は猫がいても気にしないのだが、子供はやけに騒いで猫を捕まえる。ソラはそれがどうも苦手だったため、人通りの少ない道を歩いて情報収集へと向かっていた。
カツカツと歩いていると早速知り合いを見つけた。飼い猫のミミだ。
「そんなに急いでどこに行くのさ?」
「ちょっとな。薄い茶色の尻尾を持つ猫を探してんだ」
ミミは「ふ〜ん」とつまらなそうに返事をした。どうやら心当たりは無いようだ。
「知らないなら、別にいいけど。まあ……なんかわかったら教えてくれよ」
そう言うとミミは何も言わずに部屋の奥へと消えていった。
別にソラの言動で機嫌を損ねた訳ではない。気分屋なのだ、ミミは。猫はそういう者が多いため、ソラは特に気にはならなかった。
そして、また歩きだすのだった。




