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超ドSな地球の陰謀  作者: 新井S蓋
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第23話 「陸上競技大会」

神奈川県高校陸上競技大会が開催された。


この日、女子走高跳で、2m10センチという大記録が生まれた。

優勝は蒼生はるか。県央高校一年生。


これは高校女子新記録、どころか世界新記録だった。


これまでの世界最高記録2m9センチが、33年ぶりに更新されたのだ。


表彰台の真ん中に立つ蒼生に大会委員長が、

記念のメダルをかけようとする…が無理だった。


蒼生はるかの身長は、すでに2mになろうとしていたからだ。

蒼生はしゃがんで首を突き出し、その栄誉を授かった。

大会までの2日で、蒼生の身長は50センチ近く伸びていた。


大会前日の金曜日、突然180センチほどに背が伸びた蒼生は、恥ずかしそうに放課後のグラウンドに集まった。校庭にいた誰もが、目を丸くしたのは言うまでもない。

その容姿に驚いた柑子先生が、蒼生に走高跳に挑戦させてみると、軽々と190センチのバーを跳んでしまった。これは高校女子記録である。

蒼生は身体能力も見違えるようになり、そのまま走高跳にエントリーすることになった。


 そして陸上競技会の当日にはさらに身長が20センチ伸びており、高校一年生ながら世界新記録で優勝してしまったのだ。

柑子先生はその偉業に歓喜して蒼生にハグし、照れくさそうな表情を蒼生は浮かべた。


「どうやら地球は、蒼生を選んだようだな」

紅緒はスタンドから、部員たちの歓喜の輪の中にいる蒼生を見ながら言った。

隣に座った若葉も、

「青を巨大化する道を選択したんですかね~」

とため息をついた。

「地球はよっぽど、青くないといわれたことが悔しかったんですかね…」


このまま地球は青い惑星を目指していくんだろうか。

だが俺は色々と疑問だらけだった。

「巨大化したら、青いうん●をたくさん生み出せるって意図なのかな?」

「そうだね」

「でも蒼生は一人じゃとても地球を青くするのは無理だって言ってたよ。自分の生涯じゃ地球を青くするまではすかないって」

「まあ、そこは…」

紅緒が答えられずにいると、

「地球は何だってしちゃいますよ」

と若葉が答えた。

「蒼生ちゃん、今は2mくらいですけど、3mとか5mとか、もしかすると10mくらいまで大きくなるかもしれないですよ」

「それ巨人じゃないか!」

俺はあまりにも荒唐無稽な言葉にちょっといらだちを覚えた。

「そうなったら、こっそり隠れてうん●なんてできなくなるぞ。トイレにも入れないし。きっとどこかの研究所に入れられちゃうよ。外でう●こができなったら意味ないじゃないか…」

蒼生が一人だけ大きくなったところで、それは意味がなく、むしろ逆効果に思えてきた。

「うーん」

若葉が、悩むように目を細めながら言った。

「例えば蒼生ちゃんが、細胞分裂で次々に増えるとか…そんなことだってあるかもしれないですよ」

そんな馬鹿な。アメーバーじゃないんだから。

「でも今の地球には、何だってありなんですよ」

そう若葉は言った。

一方紅緒は、

「これから遅れて何かが起きるかもしれない」

とまだ望みを持っているようだった。

それに…

「あの隕石の穴に落とした白い球が、地球に何かの反応を起こしてくれれば、私も地球に来たかいがあるんだがな」

そんな風につぶやく紅緒に、若葉は、でも…と首を傾げながら、

「白い人が現れたら、私たちが地球に淘汰されるかもしれないですよね」

たとえそうだとしても、すぐ起きることなのか、まだまだ先のことなのか、誰にも分からないけどねと若葉は言った。


表彰式を終え、メダルを首からさげた蒼生がスタンドに戻ってきた。

「もらっちゃいました」

金色に輝くメダルをもらったことが、素直に嬉しそうだった。

「評価されると、やっぱりうれしいですね」

みんな喜んでくれましたし、とまんざらでもない様子で言った。

「スポーツって悪くないでしょ」

のぞみの言葉に、蒼生は素直にうなづいた。

「私、スポーツ大会なんて何の意味もないって先生にも言っちゃいましたけど、地球の人たちがこうしてスポーツを通じて競い合う気持ちが何だか分かる気がしました。意味があるとかないとか、そんなことではないのかもしれませんね」

蒼生のスポーツマンのような清々しい言葉を聞いて、

「そんなものなのかなぁ」

と、大会を見に来ていた姉がつぶやいた。

「でも身長が2mになった素人が簡単に優勝しちゃうって…」

スポーツってなんか空しい…そう嘆いた。

そんな姉も、急に身長が180センチまで伸びていた。

この二日で身体の変調が起きたのは、蒼生と姉の向日葵だけだった。

「お姉さんの身長が伸びたのは、どういう意味なんでしょうね?」

「地球が必要としている、という事だとは思うんだけど」

「まだ地球には、黄色いものが必要なんですよ」

「お姉さんは、地球人としての未来を託されたのかもしれないねー」

確かに姉は、地球の人間としては格別なう●この生産者だ。

地球がそれを認めてくれたという事なのだろうか。

そんな皆の意見を聞いて、姉は

「このまま身長が5mとかに伸びてくれれば、地球の人間も耳を傾けるんだろうけどな。うんこの話に」

姉は自分の存在が、地球の人間たちの意識改革のきっかけになる事を期待しているようだった。

「いきなり5mまで身長が伸びた人間、そんな奇跡にでも出くわさない限り、地球の人間たちはうんこの大切さに聞く耳をもたないな」

でも5mなんかになったら、もう人間ではない、別の生き物になってしまうのでは…という不安が頭をよぎった。そんな生物になっても人間は

「姉さんは、『私は地球からたくさんうん●をするように、という使命を受けて地球の力で体を大きくしてもらったんです』って言うの?」

それはちょっとイッちゃってる人の発言のような。

普通の人間には理解しかずらいかもしれない。

「私は、別の可能性も考えている」

そんな風に紅緒が切り出した。

「地球が欲しいのは、あくまでも蒼生の青で、蒼生をどんどん大きくしたいというのが地球の願いなのだろうが、蒼生だけ大きくしたら、蒼生の理解者とか友達がいなくなってしまうよな」

あっ、と皆がふいを打たれたような顔をした。

「友達と言ったけど、もっと現実的には、蒼生と同じサイズで身の回りの世話をする人間が必要、という事かもしれないぞ」

「そういう事もありえるのか」

「つまり蒼生専属メイドとして大きくなっていると」


「まあ、そんなのは、どっちでもいいんだけどな」

と姉は言った。

「それが地球の意思なら、それに従うから」

どうあれ、姉には自分の存在意義がちゃんとある事の方が大切なのだろう。

「そんなことよりさぁ」

姉が、俺とのぞみに話しかけた。

「彼らの人工競技会ってのはどんな風に開催されるているんだろうね?」

そんなこと彼らに聞けばすぐ分かりそうなものなのに、姉はあえて地球人だけで、一度想像してみようと思ったらしい。

「確かに。人工競技会なんて、地球人には想像が及ばないですね…。

「こういうスタジアムとかに選手と観客が集められるのかな?」

「テレビ中継とかもあったり」

「宇宙レベルの人気を誇る大規模な競技会なんだから、おそらく色々な星で観られるように中継を結んでたりするんでしょうね」

地球人レベルの知識で、勝手な妄想が始まった。


「Aブロック選手入場みたいなアナウンスでトラックに入って来るのかな」

「で、選手たちが大勢の観衆の前でパンツを脱いで、う●こをして見せる…みたいな?」

「うわあ、ありえない」

「低い文明しか持ちえない地球人には、無理ですね!」

「絶対に羞恥心には勝てない…」

「本当にそんな大会なんだとしたら、地球人が参加するためには、長い時間をかけて人間の意識を変えていかないと無理なんだろうなぁ」

「体の進化だけでなく、人の心や常識も進化していかないと無理ですね」

でも

「『中国のニーハオトイレ』みたいなことだよね…。

「ニーハオトイレって、中国の個室にドアや壁が無くて丸見えなトイレ?」

「ネットで見たことある!ああいう他人から排泄を見られても恥ずかしくないという文化こそが、実は最も進化した人類の意識なのかな」

「ニーハオトイレこそが最も進化した文明の利器…」

「誰も恥ずかしいとは思うことなく、トイレを作った人は設計して、使っている人たちも何の抵抗も無く使っているわけでしょうから」

「中国以外の国からの指摘を受けて、中国もトイレの個室一つ一つにドアを付け始めみたいだからなから。北京オリンピックがきっかけだったな確か」

「トイレでしている所を見られるのは恥ずかしい、という低い文明を持った他国人が、最先端のトイレ文明を誇る中国からその芽をつんでしまったのかもしれないですね」

「地球の進化の可能性を、消してしまったっこと?」

「トイレを恥ずかしいと感じる地球の人の方が多かった?」

「でも地球の総人口でいったら、恥ずかしくないと感じている中国の人口の方が多いんじゃないですか?14億人が恥ずかしくないわけですから、恥ずかしいと感じる人の方がむしろマイナーですよ」

「地球は進化の道を誤ったんですかね?」

「また欧米のやつらが自分たちの価値観を押し付けて、世界が間違った方向に進んでしまったのかもしれないな」

「でも…」

のぞみが言った

「そうは言ってもやっぱり恥ずかしいですよね。人が見てる所で、トイレなんて、私は無理だな…」

ありえない、とつぶやくのぞみの声に、

「いや、そうは言いますけど…」

紅緒が絡んできた。

「地球の銭湯、あれはいったい何なんだ。なぜ皆の前で平気で裸になれるのか?」

「そうそうあれこそ恥ずかしいですよね。なんで全裸にならなくてはいけないのに個室になっていないのか…」

「服を着たままとか、タオルを巻いたままでもいいはずです」

確かに

「どれが正しいとか、間違ってるという事ではないのかもな。それこそ文明の違い」

「考え方や意識の違い?」

「そうですよ」

「その中でも、地球の人たちが大きくズレちゃっているのが、うんこを恥ずかしい、汚いと思っている部分です」

「そんな自分たちの常識が正しいと地球の人たちは思いこんじゃっているので、これはそう簡単には意識が変わらないですよ」

「まずは、我々が清潔で、匂いも少ないうんこをして、それを地球の人たちに見せつけていくしかないんです」

「地球の人たちが、うらやむような美しいうんこ」

「自分もしてみたいと思うようなうんこ」

「アクセサリーとして身に着けたいと思うようなうんこ」

「そんな誰からも愛されるうんこを生み出す存在に、地球の人たちにもなってほしい」

「自分たちの体そのものが、素晴らしい『作品』を生み出す生命体なんだという事に気付いてほしいですね」

「美しいうんこを生み出す自分の体に自信を」

「美しいうんこを生み出す自分の体に誇りを」

「そして…」

「うんこをする自分の存在そのものが、生きる意味なんだと気づいてほしいです」

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