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超ドSな地球の陰謀  作者: 新井S蓋
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第20話 「白」

「じゃあ見せてあげるね~!」

若葉は首に下がったネックレスをつかむと、シャツの中に隠れていたその装飾物を引き出して見せた。

「うわっ!」

「わあー」

「おぉ!」

ネックレスの先端に着いた宝石のような物体は、サファイアグリーンに輝き、屈折した光を幾重にも放っていた。

えっ、これが、う●こなの??

俺は到底信じられなかった。


「素晴らしいですね」

「これが競技会一位の作品のクオリティか…」

蒼生と紅緒も溜息をつくしかなかった。

地球の人間であるのぞみも、

「人間の体から出てきたものとは思えないよ…」

と初めて見る宇宙クラスの作品に、心を奪われていた。


若葉は、ネックレスを掲げながら言った。

「べつに何色だっていんてすよ。きっと地球だって。緑だって、赤だって、それこそ黄色だって」

のぞみが固唾を飲んだ。

「ちゃんとと人間が、自らを鍛え上げて、素敵な作品を地球にあげられればいいんだと思うんですよね」

若葉の主張に紅緒も続けた。

「確かに地球では、人間たちがそれを怠ってきたからな」

「怠ったというよりも、知らなかったんですよ」

蒼生が訂正した。

「知らなかったんです。うんこがこんなにも地球に大事なことだってことを。地球の人間たちは」

「二人の言う通りだと思うんです」

若葉は俺とのぞみををしっかえ見据えて言った。

「だから、この機会にちゃんと教えてあげたいんです。

人類が変わる可能性を迎えたこの瞬間に」

4人の女子の目は、人類がなすべき共通の目標を見つけたことで、潤んでいた。


でも…ちょっと待てよ。

「地球の人間の意識を変えるのってすごく難しいぞ」

俺は口をはさんだ。

「だって人間は、うん●をするために生まれてきたって話だろ?

そんなこと、なかなか受け入れられないと思うぞ…」

どう考えても、地球の人間がそんな思考を受け入れるとは思えない。

「そうですね。この星の人たちはうんこを馬鹿にしてますからね」

「排泄物とか、汚物とか言ってるしな」

「難しいか…」

「全然わかっていないですよ」

意気消沈する蒼生、紅緒、のぞみを見て、若葉は

「だから…」

と励ますように言った。

「人間の意識から先に変えるのは、無理だと思うんです。

でも…地球そのものがアクションを起こし、人間がそれを信じるしかない状況を、ちゃんと地球上に出現させたら、信じざるをえなくなると思うんです」

確かに地球上に信じざるを得ない状況が生じたら…。それは受け入れるしかなくなるんだろう。

「子供は無意識にわかってると思うんですよ。うん…大好きだし」

 のぞみが口を開いた。

「でも社会によって、うん…が汚い、忌み嫌うべきものと教えられていくので、もうそれが刷り込まれていくんですよね。私がはっきり、その…うん、こと言えないように」

「そうですね…」

蒼生も憤りを口にした。

「地球の人たちは、そもそも匂いだけで安易に判断しすぎですよ。臭いのは、『食べないように』という地球からの配慮ですからね。そこに気づかず、匂いだけで汚いものだと判断してるんです…」

「そうなんだよな」

紅緒も思うところがあるらしい。

「匂いも、体質改善や食べるもので変えられるはずなんだ。それを放置しているから、地球の人間のうんこは必要以上に臭いんだ。それにうんこは汚い、ばい菌まみれだとか言ってるけど、腸内細菌をコントロールできていないから、不純物が混じって不潔なものになっているんだ。努力が足りないんだよ…」


確かに俺も、若葉が手にしているキラキラと光り輝くうん●を見てしまうと、人間だって努力次第で、こんな作品を生み出せるものなのかと思ってしまう。人間の努力次第でこんなものが排せつ出来ると知ったら、地球の人類の意識も変わるかもしれない。


「だから私たちは人類ではなく、地球そのものにまず教えてあげないとダメなんです。地球に体験させる、地球に本物を届けるんです」

若葉は力説した。

「蒼生さんも紅緒さんも、地球にはない立派なものを生み出せますよね。

今こそ地球が変われるチャンスなんですよ」

蒼生は若葉の言葉に呼応するように、

「確かに、私もそう思います。私だって星の期待を背負って来たんですから、地球をなびかせる事だってできますよ」

蒼生は、ポケットからイヤリングを取り出し両耳に付けた。その端に輝く装飾物は、サファイヤブルーのまばゆい光を放っていた。

紅緒もポケットから何かを取り出し、指に付けながら言った。

「私は王族だからな。人工競技会は参加するものではなくて、観るものなんだ」

そう言って両手を広げると、紅緒の手には、ルビーをさらに明るく鮮明にしたような輝きを持つ指輪が輝いていた。


勇太とのぞみは、彼女たちの装飾物のあまりのきらびやかさに、目を奪われた。

「これ、本当にう●こなのか…」


蒼生、紅緒、若葉の三人は、お互いを見つめ合いながら、歩み寄い始めた。

何か戦いが始まるのかと思ったらそれは杞憂で、彼女たちはお互いの作品を手にとり始め鑑賞会を始めた。

地球人であるのぞみも、彼女たちの作品の美しさに目を奪われその輪に加わる。

「すごい!なにこれ、まるで宝石みたい!」

「ありがとう」

若葉はお礼を言うと、のぞみに

「あなたの作品も見てみたいなー。地球の人のをちゃんと見た事ないんだよね」

「いやー無理です無理です!」

そんな恥ずかしいこと…とのぞみは拒否した。

「こんなキラキラな宝石とは比べられません。私のなんか見たら目がつぶれます!

それに、持ち歩く習慣もありませんので…」

必死に断るのぞみを見て、紅緒と蒼生も、

「地球の人のは…見ない方ががいいな」

「…まだ試作品ですよね」

そんな助け舟を出してくれた。


「そうなんだー残念!」

ほっと安堵するのぞみだったが、若葉は

「じゃあ今度、良い作品ができたときに見せてね!」

なかなか諦めてはくれなさそうだ。


「でも…こんなきれいな緑色の作品を見てしまうと、蒼生が地球の人間と緑の子供を作る…というのは、意味がなくなってしまうかもしれないな」

紅緒はそうつぶやいた。

「リスクも大きいな。地球の人間の黄色があれほど濁っているとしたら、どんなに美しい青と融合しても、きれいな緑になるんだろうか…」

蒼生は、黙っていた。

確かに、地球の人間の作品は、彼女たちとはレベルが違いすぎる。

「えー!蒼生さんは地球の人と緑の人間を作ろうとしていたんですか~!」

若葉が声をあげると紅緒は、

「いや、蒼生の青は本当にキレイだよ。なにも緑にくしなくてもそのままでいいのに…」

蒼生の青にしても、若葉の緑にしても、一人だけではどうにもならないのではないか。

何年もわたってかなりの量を排出し続けなくてはならないのだから…。

「私の緑と、地球の人の黄色が合わされば黄緑ですね。これも悪くないかな」

若葉がそんな空気を読まない発言をすると、紅緒が

「勇太の黄色は、きれいなんだけど、それはこの地球上では…という事だからな…。合わせてみた所で、どこまで濁らずキレイな色を出せるのか…」

どうでもいい事なのだが、俺はついムッとしてしまった。俺のう●こを馬鹿にするな。

それにしても…

「ちょっと気になったんだけど、黄色の人類の、その…人工競技会ってやつはあるのかよ。黄色部門って」

異星人三人は口をそろえて言った。

「もちろんありますよ」

俺ものぞみも、それは驚きだった。

そして同じ色のカテゴリーの人間として興味があった。

蒼生は、

「私が見たその作品は、もう黄色ではなくて、金色に輝くゴールドの光沢を放っていました」

「ゴールド!」

さすがにそれは無理だ…。

「その金色って、食生活に気を付けただけで、そんな風になれるの?」

のぞみが蒼生に質問した。

「うーん、やっぱりそれは生命体としての機能が備わっていないと難しい」

「金色を作るDNAを持ち合わせているか、という事だな。金色を作る生命体にならないと」

地球の人類がその域に達するには、それこそ何万年、何十万年という進化の過程を経ないと難しいのではないか、との事だった。

「でも頑張れば、ウコンの粉位の美しさにはなるのではないでしょうか?」

蒼生はそんなフォローをしてくれた。

「あーでも」

若葉がネックレスを仕舞いながら言った

「地球にあの隕石が落ちたんだから、どうなるかは分かりませんよ。何万年分もの進化が突然始まっても、不思議ではない状況ですから…」

「そんなにすごいのか、あの隕石って…」

「スゴイなんてものではないです」

「それが落下する星の位置も含めて、かなりの運を持ち合わせていないと衝突しないですからね」

「その落下を狙って、私たちは集まってきているしな」

生命体が入れ替わってしまうかもしれないような物質を持った隕石。

今の地球上には、何も大きな変化は見られないが、どこかで静かに何かが進行しているのかもしれない。


「それはそうと…」

紅緒が、突然切り出した。

「私の赤と、二人の青と緑を、一緒に混ぜてみないか?」

あっ!と気づいたような顔を蒼生と若葉は見せた。

「ヒトの3原色でしたね」

「混ぜたら、白くなるかなー」

やってみよう!と3人は目を輝かせて準備を始めた。

何それ?と、のぞみも興味深そうに身を乗り出す。


三人が、かばんやポケットから小さい紙袋を取り出すと、

それぞれ一粒ずつ、何やら粒を取り出した。


蒼生が青、赤、緑の粒をそれぞれ受け取り、手のひらでお団子を作るように混ぜてこねくり回す。

3つの色がマーブル状態に混じり合っていく。

「うわぁ何か汚い色になって来た…」

えんじ色というかドドメ色というか、お団子は何とも言えない様相を呈してきた。

「これ白くなるのか?」

「分かりません。でも理論上は…」

三人とも、この3つの人種と出会うのは初めてだったらしく、その結果は半信半疑だった。

蒼生の手のひらの中で3つの色が混じり合っていくと…。

それは、急に光を帯び、白く輝く球に色を変えた。

「できた!すごい」

「きれいですね…」

「やはり理論上は間違いではないんだな」

あまりの出来事に度肝を抜かれ、地球人の俺とのぞみは目を見合わせた。

「すげえな、うんこ!」

俺が大声で歓声を上げると、皆が成功!と叫び、自然と拍手が沸いた。


と、俺の背中を小突く感触がした。

「ん、なんだ?」

振り返ると、そこには引きこもっていた俺の姉がいた。

「あれ?なんで??」

家に閉じこもってるんじゃないのかよ

「いや隕石が見たくて、来てみた」

連日のニュースに興味津々だった姉が、隕石に誘導されて家の外に出てきたのだ。

「おまえ、こんなところで、変な叫び声あげるなよ」

いや…。

「なんとなく話が聞こえてたんだけど、白とか、うんことかって一体何だよ、」

「それはちょっと…」

俺は蒼生の顔を見た。この地球とう●こがどうのこうのという話を伝えていいものなのか、黙っておかないといけないものなのか、判断が付かなかったからだ。

だが蒼生は、俺の目を見て頷いた。


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