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超ドSな地球の陰謀  作者: 新井S蓋
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第16話 「隕石」

そして水曜日。

部活を終え、3人で駅を降りると駅前のファミレスに入った。

ドリンクバーは蒼生が認めないので、二人は100パーセントのオレンジジュースを選び、俺はトマトジュースを注文する。

今日この時間まで蒼生に箝口令を敷かれていた俺には、聞きたいことがたくさんあった。

「隕石はどこに落ちるの」

「このすぐそばです。後で観察が出来る安全な場所にお連れしますから」

蒼生も情報を小出しにして伝えてくれた。

「それにしても何のニュースにもなっていないし。俺の通報は役に立ったのかな」

「仮に警察からどこかの機関に連絡があっても、隕石が見つからないんだと思います」

「そんなに小さいの?」

のぞみも安心材料が欲しがっていた。

「もし隕石を見つけたとしても何もできないのなら、報道規制を敷くかもしれないですね。無用な混乱を生むだけですから」

蒼生はそう答えると、お腹すきましたね、と言ってメニューを広げた。

蒼生が選んだのは、枝豆とワカメサラダ。それを3人でシェアする。

それにしても…。

「二人は何で隕石のことを知ってたんだ」

「蒼生ちゃん、地球に来る前から知ってたの?」

蒼生はフォークでキュウリを挿しながら、うなずいた。

「そんなに重要な隕石なの」

蒼生のフォークを持つ手が止まる。

「はい」

「どういうことなの」

俺が強く問いただすと、蒼生が重い口を開いた。

「この隕石には、簡単に言うと生命の進化に関係する物質が含まれているんですよ」

「生命の進化?」

「はい。そういう隕石は、これまでも地球に何回か衝突しています。

恐竜が誕生する前とか、ヒトが出現した時とか。

それ以前にも海の生物が陸に上がる時、鳥類が誕生する時とかですね。

生態系が大きく変わる時に地球に落ちているんです。星が新しい生命を創る時に必要な物質が含まれているんですよ」

生命体のDNAに働きかけ進化の方向性を変更、促進させるもの―――と蒼生は言った。

「かと言ってすぐに何かが生まれたり、変わったりする訳ではありませんよ。

恐竜から人間に交代する時にも五百万年くらいかかってますから。

ただ地球は新しい生命を創りだすための条件を何万年ぶりかに手に入れる事になるんです。その可能性にかけて、私も紅緒さんも地球に来たわけです。

でも…。あくまでも選ぶのは地球です。私達は立候補したにすぎません」

俺は蒼生の言葉に胸騒ぎを覚えた。

「世界各地で温泉が湧いてるのと関係あるの?」

「もう地球がかなり興奮して喜んじゃってますね」

そう言うと、蒼生はスマホを見て時計を確認した。

「9時を過ぎましたね。そろそろ行きましょうか」


ファミレスを出て蒼生が俺とのぞみを連れてきたのは、いつもの河原だった。

土手の上を歩き、あの木が遠目に見えるあたりまで来ると、そこで立ち止まった。

「この土手にしばらく身を潜めて下さい」

そう言うと蒼生は、土手の川側とは反対サイド、国道に面した斜面に腹ばいになった。

ちょうどあの木からは、三人のいる位置は死角になる。

土手の上に顔だけを出して、例の木を見張るような態勢になった。

「誰も周りにいませんね。落下の被害もないと思います」

「あの木が目印なの?」

「はい。あと5分です」

蒼生が空を見上げる。

すると、一つだけ燦然と輝く星が北の空に現れた。

それはゆっくりゆっくりと大きくなっていく。

「星が膨らんでるみたいだね」

のぞみがその神秘的な光景に感嘆した。

その星は3、4分程かけてだんだんと大きくなると、突然流れ星のように大気圏に突入し、上空で火球となって、夜空に眩い光が広がった。

強い爆風が上空から吹きつけ、飛ばされそうになる。

そしてその光は、轟音とともにあの木のすぐ近くに落ちた。

顔をあげると木の脇に大きな穴が開いていた。直径十メートル位だろうか。

円の一部は川の中に接しており、川の水が穴の中に流れこんで池を作りつつあった。

 河原に人が集まる気配がした。―― 何か落ちた? すごい光ってた! 

土手の上には次第に人が集まって来た。

あの光と轟音は、この町の広範囲で確認されたに違いない。

蒼生は俺とのぞみに顔を向けると、

「小さい隕石でしたね。人への被害もありませんでした」

ちょっと笑顔になって報告した。

生命の進化に関係する隕石―――。

「この後、何か起きるのかな」

「今すぐに何かが起こる事はないと思いますよ」

隕石が落ちた穴には川の水が溜まり、水面はボコボコと泡立って湯気が昇っていた。

「ただ、これで地球は新しい生命を創り出す条件を手に入れたわけです。これから先にどんな事が起きても不思議ではありません」

大きな穴に溜まった水は、再び川へと流れ出した。そのまま海に行きつくはずだ。


遠くからパトカーと救急車のサイレンが聞こえて来た。

河原にやって来る野次馬もどんどん増えている。

「蒼生、聞きたいことがたくさんあるんだ。いつもの公園に行こう」

俺たち三人は喧騒を避け、押し寄せる人の波に逆らうように土手の上を歩き始めた。


あの隕石が落ちる日時と場所を、蒼生と紅緒は知っていた。

あの木の下で俺が蒼生に痴態をさらしたあの日、彼女があの場にいた理由が分かったような気がする。

俺たち3人は、川に橋がかかった場所まで土手の上を歩いた。

その橋を渡ろうとした時、下の川原から聞き覚えのある声が聞こえた。

「やぁ、みんなお揃いだね」

河川敷を見ると、金色の髪をなびかせたクラスメートが立っていた。

「紅緒!」

やはりここに来ていたのか。

「今の隕石を見てたの?」

紅緒は頷くと、こう答えた。

「私はそのために地球に来たんだからな」


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