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超ドSな地球の陰謀  作者: 新井S蓋
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第12話 「これは事件ですか」

新入部員二人の登場は、陸上女子部員お待ちかねのイベントだった。


蒼生はごく自然にタオルを外したのだが、

紅緒はバスタオルを胸から下に巻いたまま、

鏡の前のイスに腰掛け、シャワーを浴び始める。


湯船で待ち焦がれる先輩たちのブーイングを浴び、せかされて、

紅緒はバスタオルを巻いたまま、蒼生と一緒にお湯に入った。


「バスタオルはダメだよ」

先輩たちが、日本人らしい的確なアドバイスを送る。


「はい、そうですよね」

蒼生が紅緒の代わりに謝った。


幸い浴槽のお湯は濃い茶色だった。

タイルの壁に貼られた説明書きには、

「地下からくみ上げた源泉を沸かしています」

と書かれている。


お湯に浸かると湯の中の体は見えない。

紅緒はそのままバスタオルを外して湯船のヘリに置くと、

万が一に備えて両腕を組んで胸を隠した。


そんな紅緒のかたくなに体を隠す態度が、先輩たちには不満だった。

女同士とはいえ、裸の付き合いをするために銭湯に来ているのだ。


そんな浴室の空気を察した2年生女子が二人、紅緒に近寄ってきた。

「紅緒さん大きいよね」

「紅緒さんの見たいなぁ」

二人の先輩は、体育会系女子らしく正々堂々と要求してきた。


紅緒はキュッと腕を強く組み、ガードを固める。

「いや、私のを見たら、皆さん卒倒してしまうので」

「えっ、そんなにスゴイの」

「見たいっ」


紅緒の発言が、余計に興味を掻き立ててしまったようだ。

その言葉を耳にして、柑子先生も湯船に入ってきた。


「紅緒さん、顧問として選手の体質を把握しておく必要があります。

ちょっと立ってみて下さい」

教師という権力を利用して、柑子先生は教師らしからぬことを言った。


女風呂の中の会話は、壁ひとつ隔てただけの男風呂に丸聞こえだった。

壁に張り付き、会話を傍受していた砂岡が、

満足そうな笑みを浮かべて先輩に報告した。


「柑子先生、やっぱり百合だったんですね。紅緒に興味津々ですよ」

男子たちが一斉に体を洗う手を止め、女風呂との仕切りの上の空間を見つめた。


「あの…先生、代わりに私ではダメですか」

蒼生が自己犠牲を申し出た。


紅緒を守るための、決死の覚悟だったのだが、

「蒼生ちゃんはいいよ」「だいたい分かるし」「さっき見たよ」

「リアクションしにくいじゃん」

と先輩たちに面白いようにいじられ、その決意はスルーされてしまった。


「私じゃ役不足ですか…。失礼しました…」

すっかりへこむ蒼生にのぞみが寄り添う。

「蒼生ちゃん、頑張ったよ」

しょげる蒼生を、のぞみが元気づけた。


「何だ、蒼生がどうかしたのか」

キャプテンの飛鳥先輩が遅れて浴室に入って来た。

二年生部員たちがビクつく。

浴槽に入ると飛鳥先輩は、蒼生と柑子先生の間に割って入った。


二年生部員達は、蒼生をいじめていると疑われてはいけないと思い、

「飛鳥先輩、大丈夫です。蒼生さんは関係ありません。

 私たちは紅緒さんの体を見たかっただけなんですよ」

「紅緒さん、恥ずかしがって隠すんですよ…」

そう口々に言い訳した。


柑子先生も、急に指導者然として

「私も顧問として、紅緒がどんな筋肉の付き方をしているのか、確認しようと…」

そんな、もっともらしい理由を告げた。


飛鳥先輩はうなずきながら、

「そうか、それは良くないな。

 この合宿は、裸の付き合いを通じて部員同士の親睦を深めることも

目的の一つだからな。

 もちろん、アスリートとしての特徴や適性を、

 筋肉の付き方や体のバランスから見極めるという、大事な目的もある」


そう説明すると、紅緒を見据え、

「そういう訳だ。さぁ、ちょっとその場で立ち上がってくれないか?」

紅緒に全身を公開するように促した。


 

男子部員達は、女子風呂との仕切りの隙間をじっと見上げ、戦況をうかがっていた。

何か不穏な空気が、女子風呂から流れ出ている。



「キャーーーーーッ!!!!」

突然、蒼生が全身を身悶えて立ち上がった。

蒼生の胸を、誰かの手が鷲づかみにしていたのだ。


「蒼生ちゃん、意外と肌がきれいなんですよ」

のぞみが背後から蒼生の胸を揉みしだいたのだ。

驚いて腰を浮かし、思わず湯船の外に全身をさらすことになった蒼生に、

のぞみは攻撃の手を緩めない。

体中をくまなく這い回る手を外すことに必死で、

蒼生は体を隠すことに気を回すことが出来なかった。


突然、蒼生の裸を目の当たりにした飛鳥先輩は、鼻血を出さんばかりに、

「おぉ、なかなか無駄のない、いい体をしているな。私にも確認させてくれ」

興奮を抑えきれず、蒼生の体に手を伸ばした。

大声でキャーキャー騒ぎながら暴れる蒼生に、顧問も先輩も大笑いしていた。



男子風呂では、突然聞こえてきた蒼生の悲鳴に、

「これは、事件ですか」

「女子と女子の間にも犯罪は成立するんでしょうか」

「羨ましいですね、女子は…」

と、よからぬ妄想を悶々と膨らませる。



のぞみは蒼生に背後から抱きついたまま、紅緒にそっと目くばせした。

紅緒に何か事情があるらしいという事を、のぞみは察していた。

女子部員の目が蒼生に集まっているこの瞬間を狙って、

紅緒はバスタオルをつかむと、

全身を隠して、そっと湯船からあがった。


その間、蒼生は先輩女子たちの格好のおもちゃになっていた。



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