初めての共同作業
「では行くとするか」
「チョイ待て、てめえ何処に行く気だ?」
話が決まった瞬間に、即座に歩き出す馬鹿女…。
俺はその手を引いて、行動を制止させる。
「何処って、貴様が言ったんじゃないか。ドラゴンと名前を付けるに値する、呪文を使う恐竜が居るのだとな。ならば…」
「この馬鹿。何の準備もせずに直行する奴が居るか。準備を終えるまで、この手は離さねえぞ」
恐るべき猪突猛進。
これで大概の難関は排除してしまうのだから恐ろしいが、今回ばかりは勝手が違う。
考えなしに挑めば、ブレスの範囲に入った瞬間に丸焼きにされる。
仮に近づく事が出来ても…、防御呪文で何割かを防がれて、その間に殺されるだけの話だ。
「いいか!相手は無茶苦茶タフで、こっちが倒しきる前に反撃で殺される。それじゃあ、まるで意味が…」
「あの。…その、手…離してもらってもいいかな?言いたい事は判ったから」
俺達にとって、ドラゴン退時は別に命掛けの使命って訳でも無い。
だから相討ちに持ち込まれたら、倒す事が出来ても無駄なんだと言おうとした時…。
顔を真っ赤にして、俯くのが見えた。
「これで良いだろ?とりあえず、何発か当てる事を前提に作戦を組むぞ」
「……ああ。うん、判った」
前にも思ったが、ラテン系の血がメインのくせに、なんでこんなにシャイなんだ?
いまどき男と手を握っただけで真っ赤になるなんて、女子高でも会えねえよ
…そりゃあ俺も男なので、少しくらいはそういう仲になるのも悪く無いと思うが、こいつの性格を考えると、後がおっかな過ぎる。
そうなったら面倒くさいので、少し離れて話を元に戻す。
「考え方としては2つだな。臭いなり何なりでおびき寄せ、奴の攻撃が届かない場所を確保する。もう一つは、アマデウス辺りを呼んできて、超高速で移動し続ける方法」
「…他の誰か。いや、アマデウスを呼ぶのは嫌だな。あのお茶らけた態度は好かんし、面白そうだといって近くに寄られても困る」
結局、ドラゴンの攻撃が来ない方法を選択するしかない。
トラップ型か、あるいはヒット&ウェイか。
その2つの選択肢しかない…のだが、変な事を考えたのか…助っ人が前提となる方向を否定された。
私情を持ち込むなと言いたいが、…なんというかアマデウスに関しては俺も同感なので黙って置く事にする。
「じゃあ、何処かへおびき寄せて、そこで仕留めるって方法で良いな?後は見つけた地形に合わせて、上から連続で叩き込むなり、釣り針を維持する路線にする」
「…うん。それで良い。こればっかりは、仕方無いものな」
本当を言えば、連発か釣り針かどちらかに決めて、効率を上げて置きたい。
だが、ドラゴンと名前を付けはしたが、その実態は恐竜でしかない。生物である以上、獲物を求めて徘徊するのは止めようがないのだ。
周囲の獣を壊滅させるなんて一方向に呼ぶなんて方法は、出来たとしても本末転倒だろう。
「じゃあ呪文を組むから、てめえのモジュール見せてみろ。それ次第で誘導用の呪文を考える」
「判った。だけど、人に見せるのはちょっと恥ずかしいな」
自分の部屋を見られるようなもんだしな、確かに気恥ずかしいのは判る。
だが、そんな事を言っても始まらないので、安全地帯を確保する為に『テント』を張ると、露店状に荷物を広げ始めた。
なんだかんだいって、安全圏を造り易くなったのはフィギア・スタッフさまさまと言える。
俺用のクラスであるドレッドノートには、数人用の結界型シェルターを造るスキルがあるからだ。
モジュール干渉波で一時的に造る獣避けだが、これだけで食事や仮眠が楽になったはありがたいもんだ。
「何気に初めての共同作業だな。…ほら、覚えているか?探索方と戦闘役とあって、殆ど同じ場所にはいなかっただろう?」
「ぶっ。……ああそうだな。俺がてめえと出会う時は、大概が案内くらいで、共闘するような感じでもないしな」
無視できない単語に俺は吹きそうになるが、なんとか留めて話を適当に会わせる。
なんというか、役割が全然違いすぎて接点が少ない。
それで居て顔を会わせる機会が多く…、あまりにも違い過ぎる個性だからこそ、俺達は認め合ったのかもしれない。
アマデウスの様に異色過ぎると、ちょっとドン引きしてしまうのも間違いが無いが…。
「てめえ…。こんなに加算系とか持って行ったのか?道理で俺が使う分がいつもないと思ったよ」
「わっ悪かったな。私の場合、既に完成した攻撃をアレンジした方が早いんだ。炎の弾が壁や熱波になるだけで済む…からな」
…つまりだ、この馬鹿は投射方法が違う呪文を使い分けるのではなく。
馬鹿みたいに強化した一つの呪文へ、貴重な加算系のモジュールで、別の投射方法を切り替えていたのだ。
同じ構成式で、投射パターンだけ変更すれば最低限で済むのに…。
俺は頭を抱えつつ、射程やアレンジ・パターンには困らない事だけを感謝する事にした。
ゲーム風解説第18回
@共同呪文とスキルの関係とオマケ
数人で共同呪文を造る場合、実行できる呪文が1つである以上は、特にペナルティはありません。
前にも書いた事ですが、多数のキャラクターが行動する労力が、1回の作業だけの管理で済むからです。
ゲームマスターの労力が大幅に軽減されることから、ボーナス的にペナルティはありません。
この時、どんな感じで呪文に良い影響を与えるのかですが…。
1:参加する全員のモジュール群、モジュール属性、スキルを使用しても良い。
(クラス精霊の属性3つ、レギオンのレアな杖、魔術師の…などなど、全部OKと言う事です)
2:呪文に使う能力値は、参加者の内の一番高い者の数値を採用する。
(魔力の一番強い人、唱えるのが一番早い人、管理が一番上手い人。特化型が3人で組めば、伝説の魔術師に匹敵するでしょう)
3:呪文の使用・維持にかかるMPコストは、全員が分散して支払っても良い。
(使用MPをAさんが、維持をBさんが、能力は一番高いけどMPを成長させてないCさんが管理。ということもOKです)
クラススキル:キャンプ
クラスの一つであるドレッドノート(勇者)は、探索に向いたスキルの取得が可能です。
今回の話に登場したキャンプもその一つで、強力かつ潜伏に向いた干渉派で
獣や恐竜には察知されなくなり、維持時間は数時間のみですが、食事や仮眠を安全に取れます。
ちなみに魔術師には似たようなスキルがあり、自分だけの研究部屋を造る事が出来ます。
(こちらは宇宙船にも使っている限定的な空間移動なので、簡単な荷物を置いて置く事も可能)




