魔獣討伐作戦!
「逃げ出したぞ!」
「判ってる!……沈め!」
恐竜の中でも大柄な個体が、情けなく逃げ出した。
それも仕方あるまい、こんな遠距離からバンバン呪文が飛んできたんじゃあ、逃げ出したくもなるだろうよ。
だからと言って逃がす気はねえし、逃がしたら朝から探しまわった甲斐がなくなるってもんだ。
続く呪文が恐竜の背中に突き刺さり、ブスブスと内側から、肉が燃けるような臭いがする。
「実戦でもこうだと良いんだがな」
「…比較検討の相手として、より大型の恐竜を倒したのだから問題無いと思うがな」
翌日、俺達は共同呪文の実験に動き出していた。
能力が近い相手で想定する為、レッサードラゴンと名付けた呪文を使う個体よりも、より大きな奴に挑んだ訳だ。
防御呪文で削り切れない分を、皮の厚さやタフネスの高さで相殺してみた感じになる。
「そうは言うけどよ、簡単な誘導に引っかかってくれた分。途中からは楽勝だった気がするぜ?だいたい、普通の恐竜なら自分一人で倒せるとか言ってたろ?」
「確かにそうだが…。あんまり自重し過ぎるのもどうかと思うぞ?あくまで相手は野生生物だ」
そう、問題はソコなんだ。
相手が本当の野生生物なら、これほど恐れはしない。
なんども使った誘導で引き寄せ、想定外にだけ気を付けて戦えば良い。
だが、相手は明らかに調整された個体だ。
呪文以外にも、知能であるとか緊急時の移動呪文だとか、隠して居てもおかしく無い。
「悪ぃが、初見だけはどんな奴でも侮らねえ事にしてる。…暗殺者の隠し玉つーほど酷く無いにしても、何があるか判らねえしな」
「その御蔭で呪文を見て引く事が出来た。…それで良いんじゃないか?ブレスが広範囲だったりくらいはありえるかもしれんが…」
考え過ぎだろうと、こいつは繰り返す…。
そりゃまあ、本当にモジュールに適応した生物という可能性もあるし、考え過ぎて動けないのも問題だろう。
だが、首尾一貫しない行動が、この手の作業で上手く行った覚えも無い。
ある程度の妥協性を示しつつ、被害無しに、なんとか勝ちたいもんだ…。つーか命を掛けたくはねえ。
「てめえの言う事も判る。なら、このまま挑むとしようか。…ただし、ヤバイと判断したら素直に撤収する」
「それで良い。案ずるより産むが易しというし、危険だったら逃げる事に異存は無い」
気は進まないが、言う通りにする。
そう告げた途端、こいつは顔を明るくして倒した恐竜の物色に向かいだした。
放っておけば焼けた肉でも食いそうな勢いだが、俺の潜ませた言葉には、まだ気がついて居ないようでありがたい。
俺の本命は、危険と判断したら、逃げると言う事を飲み込ませる為だったからだ…。
「で、ドラゴンだなんて大仰な名前をつけた奴はどの辺に居るんだ?エネルギー供給用の休息が終わったら、早速向かうとしよう」
「相変わらずの行動力だよ、てめえは…。予想より動いて無いなら、この先のはずだ。獲物と追いかけっこしてなけりゃ、昼過ぎまでには追いつけるはずだ」
…もちろん嘘だ。
俺が告げたのは御馴染の恐竜を誘導して戦わせた位置で、もちろん、本当の野生生物ならその辺に居るんだろうが…。
予想では、人間への脅威として調整された奴だ。そこまで馬鹿じゃないだろう。
あの時の怪我を考えれば…。もう少し周囲を警戒できる場所に移動しているはずだった。
その事だけは伝えずに、探索に当てる時間を取るつもりだったのだ。
まさか小揺るぎもせず、同じ場所に居るとは思いもしなかったのだが…。
「…ちょっと待て。何か様子が変だ」
「何が変なんだ?此処に居るって言ったのは貴様だろう?特に何かしている様子も無いし、あの辺の窪地を挟んだら、即座に仕掛けるぞ」
変だ。御馴染さんの恐竜は、奴に比べて確かにそれほど強い訳じゃない。
途中から防御呪文でカバーした事もあり、大怪我と言う程では無かった。
だから、この場所で餌を捕食し続けるというのも判らなくは無い。
だが、一つだけ気にかかる事がある。
「何であんなに皮が綺麗なんだ?いくらなんでも、もう少し…」
「良くは知らんが傷が浅かったんだろう。奴がこっちに気がついた!距離があるうちに足止めに入るぞ!」
俺は一つ、重要な事を見逃していた。
御馴染さんをぶつける前の話。見ちゃあいないが、確か奴は、獣どもにまとわりつかれていたはずだ。
考えられる事は唯一つ、それは…。
「あれは、回復呪文!そこまで人間の行動を模してんのかよ!調整するにしても頭良過ぎんだろうが!!」
「っ!?模して調整って、誰かが造った個体なのか?いずれにせよ、もう遅い! 突っ込んでくる以上は倒すしかない。集中しろ!」
防御呪文でダメージが減るのは覚悟済みだ。
こちらの放った牽制の攻撃呪文を受けてなお、奴は途中から治療を開始した。
ただの恐竜なら既に危険信号。大きい奴でも、何度か攻撃すれば倒せるはずなのに……。
バケモンだありゃ。
「足止めはどうした!このままじゃあ数発撃つどころじゃねえぞ。つか、回復されたんじゃあ…」
「既にやっている!抵抗された…?いや、ようやく効いた。このまま最大級の火力で押し潰すぞ」
迂闊な事に…。その光景を見ても、俺は単なる化け物レベルで考えていた。
こいつを調整した奴の、底知れぬどころか、やり過ぎ感溢れる設計に、少しも気がつかなかったのだ。
足止め用の呪文の効きが遅かった事に、もう少し考えを巡らせておくべきだった…。
ゲーム風解説第19回
@ネームド・エネミー
敵モンスターの中には、敵対的キャラクター並に厄介な敵も存在します。
このレッサードラゴンもその一つで、序盤の要として配置されたモンスター・恐竜です。
ボス・ユニットとして設定され、キャラクターと同じルールで増強された状態に成ります。
ちなみにクラスはドラゴンではなく、特に記述して無い最後のクラスであるベルセルク。
通常戦闘に置いて、恐るべき能力を持つものの呪文にはまるで関係ないので、本来は呪文を扱う事が苦手なクラスの予定。
…ボスとして構成されているので、凄い量のHP・MPがあるので、真面目に戦うと苦労する予定の敵です。
ネタばらしになるので、クラス:ベルセルクの能力は、次回公開で。




