↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名も無き星の冒険者  作者: 流水斎
第一章
PR
14/85

呪文の貸与

「あら怪我でも無いのにサルマンデルがやって来るなんて、お赤飯でも炊いた方が良いのかしら?」

「モルガナ…。貴女までからかうなんて、やめてください」

 薬草園の主を見つけた時、彼女の方から話しかけて来た。

 サルマンデルとしても離れたい話題なのだが、相手が相手だけにやりにくい。

 今から力を借りようとするのもあるが、そもそもこの女性は苦手な相手でもあった。

「その様子だとアマデウス辺りにさんざん弄られたみたいね?じゃあ程々にしておくとして、何が必要なの?」

「判っていると思いますが、旅の準備を。より正しくは、野営その他に便利な呪文を貸し出していただければ…ありがたいのですが」

 今から急いで、この場に居たはずの男を追い掛ける。

 …ハッキリいって顔から火が出そうな勢いだが、否定しようと他の言い用がないのであえて否定できない。

 司書を探す為にアドベンチャーに会いに行くんです…と言い訳を付けても、返って時間を取られるのは懲りていたのだ。

 一つ語れば十まで面倒見ようとする…。実に、薬草園の主ことモルガナは面倒くさいお姉さん系であった。


「やーねえ。いっちょ前に対処法なんて身につけちゃって。まあいいわ、男を落とす為に急いでいるって言うなら、このあたしが邪魔するのも野暮ってものよね。」

「…もう、それでいいですから早くお願いします。モノによっては、時間が掛かるんでしょう?」

 いつもはタップリとからかったり、焚きつけたりするモルガナが、何時に無く協力的だ。

 少々気になりつつも、尋ねれば藪蛇になりそうだったので質問しない事にした。

 あるいは観念したと取られてもおかしく無い殊勝さをみせつつ、サルマンデルは手袋をはずす。

「まずは左の人差し指を出しなさい。確か加算系に予備は有ったわよね?集めたい物を管理するモジュールを指定すれば、それで好きな物を出せるから」

「着火くらいなら時間を掛ければできますけど…。ああ、水とか新鮮な空気ですね」

 戦闘オンリーのお馬鹿さんだが、馬鹿ほど可愛いと人は言う。

 モルガナが水芸をやってみせると、サルマンデルはようやく納得したとばかりに手を打った。

 便利なので、ほぼ全員が覚えて置く呪文なのだが…。

「分量を増やしたい時は強化項目に適当に放りこみなさい。それで大概はなんとかなるから。食料の方は、後で一緒にパンでも焼きましょう」

「ハイ。パンは得意料理ですので、なんとかなります」

 …微妙な顔をしつつも、モルガナはそれを隠しきって輪唱魔法と分権魔法の準備を開始する。

 お互いの作業鞄…ことスタッフの機能を連結し、呪文を登録すると条件つけをに移行。

 全て終わるとサルマンデルのウインドウに新たな呪文が浮かびあがり、旅に便利な生成系呪文のできあがりである。


「次は補充系ね。薬やお酒は出せないから使いきる前にコレでなんとかしなさい。必要なモジュールの方は貸しておくから」

「回復は出来ますし、病気なんかで倒れる気はありませんが…、確かに消毒は有効そうですね。使わせていただきます」

 酒を飲ませて言いよったら?

 なんて言葉に顔を赤らめつつ、あいつも私も酒は嗜みませんと首を振る。

 少しずつモルガナのペースにはめられているなと、思いつつサルマンデルは魔法の様な光景に心躍らせた。

 モジュールによる新技術を『魔法』とは呼んで居ても、実際に何かを宙から出したり、事もなげに呪文を教えてくれるというのは、まさに魔法の…おとぎ話の様であったからだ。

「…何を考えているか丸判りだけど、それじゃあたしはシワシワのおばあちゃんなのかしら」

「い、いえそんな事は!モルガナは十分に若いですよ!」

 やっぱり年寄りだと思ってる~。

 からかわれるのは変わらないが、アマデウスと違って心許せる分だけ大違いだ。

 アレは玩具にするからねえ、と空想に相槌を打たれてまた顔に出たのだと気がついた。

 くすっと久しぶりに心からの笑いを見せて、薬草園の主に敬意を示す。

 きっと彼女なりに、心のケアもしてくれているに違いない。…何分の一かは、やっぱり趣味なのだろうけれど。


「最後に一つ。今はこんな状況だからさ、男でも決断でも、躊躇しないようにしときな」

「…ご忠告はいたみいります。ですがこればっかりはタイミングや状況もありますので」

 結局、別れる際まで言われ続けた。

 逆襲の一つもしてやりたいが、モルガナと浮名をあげた男達はみんな凍結中だ。

 忠告の形をとっているだけにサルマンデとしても言い返し用が無く、遠距離攻撃以外にもフィジカル系の移動魔法を覚えていればと、珍しく後悔した。

 後から思えばコレは何となく感づいて居たモルガナの、本心からの忠告だったのだろう。

「…明かりで生成魔法を試しながら、夜通し歩けば少しは距離を縮めれるかな?」

 言われたから意識した…。と言うだけでも無く、サルマンデルは生来のせっかちさで道を急いだ。

 何分の一かは目覚めてから有って居ない男に会いたいのもあるのだろうと、らしくもない言い訳をしながら歩いて行く。


 久々の再開が、重大な事件の再発見になるとは思いもせず…。

 この時の彼女は、ただ道を急いでいた。


ゲーム風解説の第四回


『モルガナ』またはファタ・モルガーナ

 地表活動を余儀なくされた後で、医局のトップとして覚醒した。

医療の他に、仲間同士のスキル教え合い、メンタル面でのケアも担当している。

登場時に置いては現地に適応した薬草その他を育て

モジュールの共振・増幅に着目し、門派としての創造門を創立している。

様々な便利呪文の教え合い・貸し出しをしてくれる重要な人である。


門派:創造門

 魔術流派の基本系の一つで、他者に魔法を貸し出す事が出来る。

分権魔法はその一つで、使用回数制限のある使い切り魔法を渡したり、その場で唱え直せる魔法を貸し出す物。

この回では生成呪文を唱え直し形式で貸出し、レアリティの高いモジュールを使った補充魔法を使用回数形式で渡している。


・輪唱魔法

複数の人間が協力して、属性・負担や呪文速度を共有化して魔法を使用出来る。

能力が高い方の数値を使用でき、コストなどのペナルティは好きな方が負担するなど、時間は掛かるがかなり便利な魔法形式である。

 ちなみにゲームとしては

有利であるが、二人以上の自由行動を制限できるので

マスターの対応力が減るという意味で、ボーナス的に特段のペナルティは無い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。