エージェントとしての番号
「やあ、遅かったね。せっかく君に朗報を届けようと思ってたのにさ」
「…朗報というのはなんだ?時間が惜しい、良い話と悪い話があるなら同時に教えてくれ」
唐突にアマデウスが脇道から転げ出て来る。
何処から出て来たのかと怒鳴ろうとして、サルマンデルは言葉を飲み込んだ。
毒の谷を抜けたのだから彼の方が早いのは当然として、この男は幻覚を使わなかったか?
どうせ本体は別の場所だろうと思いながら、男の性格を先読みしながら尋ねる事にした。
「壊れた端末を見つけたんだけどね。七番…。君の彼氏がちょっと前に、山の方に行ったのを確認したんだって」
「その話なら伯爵に聞いたし、私の男では無い。だが奴が直接に来ていたというのは朗報だな、向こうに行くまでに間に合うかもしれん」
名前では無く、問題解決に起こされた順番を告げて煽りに来た。
からかわれていると判っていれば、やんわりと話を反らしようもある…。なんて判り易い逃避をするのだが、流石に通用しはしない。
素直じゃないなぁとか再び煽れるはめになった。
「私はモルガナの所で調達次第に出立する。他の者には貴様の方から言っておいてくれ」
「五番…。医局のファタ・モルガーナの所へかい?彼も素直じゃないからね、ホレ薬の一つも必要だろうね」
適当に別の人物の話を持ち出した段階で、きっと彼女はアマデウスの罠に嵌っていたに違いない。
…もっとも道化じみた彼のこと、重要事に気がついても別の愉しみ方を見つけただろうけど。
ともあれ、混迷する事態は面白かしくトリックスターの手によって調律されて行く。
「ホレ薬と媚薬は同じ物では…。いや、なんでもない。貴様には関係ない話だ」
「人の命なんて短いもんだよ。せっかく会えたなら…って、気が早いなぁ。そんなにも早く会いたいんだね六番さん♪」
男が番号で呼ぶのは、きっとからかっているのだろう。
そう思って瞬間湯沸かし器のサルマンデルはズカズカと早足で歩き始めた。
アマデウスとしては親切に事件解決のヒントを言っているつもりなのに、心外極まりない。
「…まあいいか。どの道、真相を調べている彼と出会えば判るだろうからね。いってらっしゃ~い」
直情な彼女がヒントに気がついた時、どんなに怒り狂うか見てみたいので、訂正し無い事にした。
怒っているのか恥ずかしいのか判らないが、足早に立ち去る彼女の背中に、愉快な未来を想像して愉しむ。
「まったく。あいつの性で余計な時間を喰った。どの道知っているのと同じ情報なのだから…」
自分でも身勝手だと思いながら、サルマンデルは自問自答する。
目新しい事が判れば教えてくれと言ったのは彼女なのだから、責められるとしたらアマデウスの方では無い。
そう理解してなお、理不尽な怒りを抑え用が無かった。
「別に嫌いじゃないんだ。だがその感情は好きと直結する訳でも無く…ああもうっ」
どちらかと言えば、無い物ねだりだろうか?
自分にない能力だからこそ、求める物だし、必要だと判り合う物だ。
明らかに自分とは違う系統の司書やクロガネ達とは違い、問題解決のエージェントとしてアドベンチャーは心強い相棒であるだけなのだ。
…そう自分自身を説得して、サルマンデルは道を突き進む。
「いかん。モルガナの所を通り過ぎてしまったか。…行く先々でモジュールを調整する方が面倒だな。戻るか」
そのうち必要な場所を通り越し、目的よりも進んでしまった事にようやく頭脳が追いついた。
これというのも、からかったアマデウスが悪い、ここに居ないアドベンチャーが悪い。
そう口にしながら、幾つかの道を戻って医局を尋ねる事にした。
「たった7人しか利用し無い医局というのもなんだが…。これからは重要になるのだろうな」
食料生産のメドがつき、暮らしていける人数増大へ道筋がついた。
これからは工作具やモジュールの備蓄次第で、少しずつ覚醒作業に移るだろう。
そうすれば当面はクロガネやアマデウスの所に出入りする技術部や、彼女の警備部に人員が増えて行くはずであった。
「この星の、真の開発と言うのはこれから…という所か。まあ事故がなければもう少し順調だったと思うが」
もっとも、その場合は自分達の覚醒は更に後だったろう。
黎明期の責任者である司書の元、一定の時間が経過するまで眠ったまま過ごし…。
統治系統の専門家である伯爵たちの元で、今とは違った通し番号で目覚めていたはずだ。
「…いや言っても仕方ないな。現実は目の前、選択されなかった未来など暇な時に考えればいい」
そう言って彼女は頭から余計な考えを追いだした。
今起きている異常事態に対処し、解決するのが彼女たちの役目である。
ならば邪魔する者をなぎ倒し、少しでも早く、より良い未来を手にするべきなのだ。
「いつ来てもここの花畑は不思議な物だ」
薬草園に辿り着いたサルマンデルは、自生させた植物に見慣れた植物がない事に慣れない。
この星の環境に合わせて調整された草木を見る度に、故郷を離れて遠い星に辿り着いたという感慨に至るのである。
ゲーム風解説第三回とオマケ
・神出鬼没で多彩なアマデウス、門派:精霊門
惑星の混沌とした環境に適応し
良くも悪くも能力の安定しない特殊性を取得したアマデウス。
彼は安定しない能力でも愉しむ為に、属性の方向性を研究する事にした。
これが門派の始まりであり、基本系である精霊門の始まりでもある。
アマデウスは良く似た能力・干渉し易い方向性を用いて、実際に彼が所有する以上のモジュール能力を操れる。
門派:精霊門
精霊門はモジュールを使った新技術『魔法』を扱い易く加工する物。
良く似た・干渉し易い方向性を研究し、上位下位の存在を見つけ出す事に成功した。
この為、精霊門に所属する者は、特典として精霊表を取得する。
表に記載された干渉法(術式)によって、下位に当たる能力・成長すれば上位に当たる能力もを使用する事が出来る。
ゲーム的には上位・下位の相性を得て
無条件で下位への攻撃・防御・抵抗に対して数値上のボーナス、コスト消費でモジュール能力の一時変更が可能。
オマケ:ドミネーターの番号管理
惑星開発の状況によって、責任者の元に必要な人数のドミネーターが選出される。
物語においては、マスターである司書が0番として
戦闘担当であるサルマンデルが6番、探索役のアドベンチャーが7番となる。
続いて他の担当が必要な場合は8、9、10、と続いて加算され
同局の中に、増援が必要な場合は、局の長であるドミネーターの下に配属され、番号も付属する。
クロガネ傘下の技術者ならば21、22、23。モルガナ傘下の医者ならば51、52、53。
という風に番号管理される。
(よって正確に言えば、他のドミネーターは0番の下に付属するので、サルマンデルは06、アドベンチャーは07と言う事になる)
将来に大幅増員する必要のある戦闘員・冒険者に関しては、桁数が何処まで行くのか現時点で不明。




