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名も無き星の冒険者  作者: 流水斎
第一章
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ロードモナーク

「僕は谷を抜けて行くけど、君はどうする?」

「貴様と一緒にするな。あんな危険な場所を通れるか」

 うんざりした顔で、女は首を振った。

 それというのも仕方あるまい、ここで言う谷とは毒素が充満しているのだ。

 同じくらいに強力な魔法の使い手とは言っても、肉体を完全に取り換えているアマデウスと違って、サルマンデルの方はあくまで普通の人間に過ぎないのだから。

 …まあ火焔魔法に特化した彼女が、扱うモジュール数・質に置いて片寄っているというのもあるのだけれど…。

「そっか。残念だなあ。僕は先にいくね」

「好きにしろ。ただし、重要な物を見つけたら、きちんと報告しろよ」

 目新しい物は僕もみたいなぁ~。

 なんて陽気にアマデウスは恐竜も獣も寄りつかぬ魔境へと踏み言って行く。

 あそこは本当に危険で、居住区が安全なのも危険な生物を根こそぎ死滅させるからであり、逆説的に言えば進出を阻む大きな障害でもあった。

 そんな魔境へ簡単に踏み入れる男に、サルマンデルは怖気と同時に小さな希望を抱く。

「この周囲で殆ど探索していないのはあそこくらいだからな。…何か見つかれば良いんだが…」

 人の良い彼女は、トリックスターの口にした単純な言葉に気がつかない。

 新し物好きの彼は目新しい物は重要で無くとも確実に報告するが、あって当然の重要物など気にもしないのだ。

 …他のメンバーがその事に気が付くのは、ずっと後の事である。


「湖を領域に組み入れ、ようやく食料の生産計画が軌道に向かうことになるな。良くやった」

「ありがとうございます伯爵。それで、何かめぼしい物件はありますか?手持無沙汰になってしまったもので」

 壮年の偉丈夫が、任務を果たした彼女を迎え入れる。

 居住区の中でも危険地域に近い辺りを担当する彼は、今日も巡回のついでに、とあるモノの回収を行っていた。

 彼女が目を移すと、柔らかい笑顔で今日の収穫だよと卵を掲げて見せた。

「君に頼むほどの急を要する任務は無かったと思うが、アドベンチャーから翼竜を見たと報告があったな。コロニーを発見した場合は要請が来るかもしれん」

「相変わらず良く動く。何処をほっつき歩いてるのかと思ったが…。判りました、待機して殲滅任務に備えます。伯爵もお気をつけて」

 休息を兼ねて、そうしておくと良い。

 『伯爵』と呼ばれた男は、短気な彼女が貴重な翼竜を今すぐ皆殺しに行くのではと、内心ヒヤヒヤしながら笑顔の仮面を守る事に成功した。

 居住区経営や野生生物の管理に長けている彼としては、現在の最大戦力と将来の労働力を天秤にかけるつもりは微塵も無い。

 どちらも生かさず殺さず、上手く利用していきたいと考えているのだから…。


「ところで、報告と言えば司書の奴はまだ見つからないのですか?」

「…私も探し出して欲しいとは思っているがね。彼が根無し草のアドベンチャー以上に神出鬼没なのは知ってるだろう」

 サルマンデルの質問に、痛い所を疲れたと伯爵も少しだけ本音を覗かせる。

 現時点での最高責任者であるだけではなく、様々な技術・生物の分類に長けたドミネーター『司書』は、対処能力においても随一であった。

 彼が居れば、宇宙母船に関わる事の他にも、色々な事が進展するのに…とお互いに苦笑する。

 さっさと出て来いと言う意味において、意味は異なるものの、二人は同じ思いであった。

「その件に関してはアマデウスに期待するしかないな」

「…お言葉ですが、アレに期待すると大変ですよ?ワインが製造出来ないからといって、酒の雨を降らしかねないような男です」

 色々な意味で、アマデウスという男は厄介者であった。

 感性が違うとは、レベルの問題では無く、方向性の違いだという言葉が良く判る。

 常人には思いつかない方向性で、対処するのではなく、適応させてしまいかねない奴だ。

 馬鹿と天才は紙一重というが、破天荒で迷惑極まりないという点に置いて、天災と言って差し支えない。

「あれで頑固者のクロガネと仲が良いのだから信じられんな。それでは私はもう少し見回る事にするよ」

「クロガネも時々ですが、奇妙極まりない物を造りますからね。…では失礼します」

 二人は別れ、それぞれ外延を目指して行く。

 伯爵は騎馬にするべく小型恐竜の卵を求めて、サルマンデルは要請があり次第に出動可能なように…。


「騎馬か…、確かに歩くのは面倒で叶わん。成功して欲しい物だが。本当に肝心な時にあいつらは居ないな」

 司書が居ればそれでうっとおしいが、居なければ居ないで面倒くさい。

 平和な時には役に立たない癖に、こういう異常事態や未知を切り開くにはすこぶる使える男だ。

 それが現時点での責任者であるといなら、事態の解決に居た方が良いだろう。

 自分が排除するしか能の無い事を自覚している彼女は、この時ばかりは本気でアドベンチャーに合流しようとしていた。

 …それが新たな事態の引き金になるとも知らずに、サルマンデルは外延にある大きな山に向かって歩き始める。


ゲーム風解説第二回。


『アマデウス』

生態系の科学者であり、もう少し広い分野の技術者でもある。

事故による欠損で身体の大部分を損ない、バイオ系のサイバーパーツに取り換えて居た。

登場時点において、この星の生態系に合わせて全ての部分を取り換えている。

躊躇という言葉を持たず、天然のトラブルメイカーとして生存している全員から厄介者として認識されている。

後のクラス概念の導入としては、『異種族』の先駆者である。


クラス:異種族

最初に設定したロケーション(地形)効果を、自らの属性として使用出来る。

適応している地形であるならば、ハザードMAPであろうと魔法に組み入れる事が出来、またペナルティを負う事が無い。

反面、その能力はロケーションに依存し、全く無い場所もあれば多重属性に達する場合もある。


なお、アマデウスの設定している属性はカオス(混沌)。

週ごとに対応する属性が全く違い、ほとんど頼りにならない物であった。

本人がこの対応能力にどこまで信頼を持っていたかは判らないが、言葉にすればきっとこう言うであろう。

「それがいいのさ」

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