召喚四日目|空振りの天才
四日目。
剣の音って意外と重い。
もっと金属の高い音かと思ってた。
違った。
当たらない時は風の音が大きい。
当たる時は木の音が大きい。
訓練場でそれを知った。
砂地だった。
朝から何回も同じ場所に足跡ついてた。
たぶん昨日より前からずっとやってた。
エイラって人。
最初見た時、
上手い人だと思った。
速かったから。
でもよく見たら、
的だけ無傷だった。
不思議だった。
速いのに当たらない。
鳥みたいだなと思った。
飛ぶのは上手いのに、
枝だけ避けるやつ。
たまにいる。
俺が話しかけた時、
一番最初の反応は警戒だった。
二番目は面倒くさそう。
三番目くらいから、
少しだけ聞いてた。
たぶん。
人間、
聞いてないふりしながら聞く時ある。
「黙れ」って言ったあとも、
ちゃんと足見てたし。
踏み込んだ瞬間、
砂の飛び方変わった。
前は真下だけだった。
後は少し前に飛んだ。
だから当たる前にわかった。
あ、届くなって。
根拠はあった。
珍しい。
的に当たった音、
結構気持ちよかった。
俺がじゃない。
たぶんエイラが。
当たった後、
数秒動かなかったから。
あれ、
嬉しい時の止まり方だったと思う。
たまにある。
人間、
驚くと静止する。
若い男もいた。
名前知らない。
でもあの人、
ちゃんと見てた。
変化って、
本人より周りが先に気づく時あるんだよな。
「当たってる」
って言った時、
少し笑ってたし。
俺は途中で出た。
最近思うんだけど、
俺がいる時間って短い。
スライムも。
村も。
盗賊も。
剣士も。
だいたい問題一個だけ見つけて、
勝手に喋って、
勝手に満足して出ていく。
渡り鳥みたい。
鳥になったことないけど。
体ないし。
今日の帰り、
後ろから何回も木を叩く音してた。
たぶんエイラまだ練習してた。
あれ、
俺がいなくなってからの音だった。
少しだけ安心した。
俺いないと成立しないなら、
改善じゃなくて依存だから。
そういうの良くない。
たぶん。
根拠はないけど。
あと今日気づいた。
宿主って言い方やっぱ変だな。
スライムも村人も盗賊も剣士も、
誰も俺を飼ってないし。
同行者でもない。
通りすがり。
それが一番近い気がする。
たぶん。




