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召喚術の支配者  作者: 人間失格
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使者

それから半日足らずでセレナ王国とやらの使者が僕と美鶴の前に現れた。

村長から聞いた話だと『念話装置』というものがあるそうだ。

聞いた限りでは魔力を使い、離れた所にある『念話装置』に情報を送るそうだ。

こちらの世界のメールのようなものだろう。

また、この会話からこちらの世界には魔法があると判明した。

薄々あるのではないかと感じていたが、体感するよりも先に確認が取れたのは行幸だ。

もしいきなり攻撃性のある魔法を使われてもとっさに対応できなかったかもしれない。


「この者たちが? 」


僕達の目の前にいる男性が村長に問いかける。

恐らく使者の代表兼護衛役といったところだろうか。

そう考えるとそれなりの地位を持った人間なのかもしれない。


「たしかに」


村長は短く肯定し、僕たちに目くばせする。

村長はどうもセレナ王国の事が好きではないようだ。

先ほども話の節々に嫌悪感を感じ取れた。


「ではこの者たちの身柄はセレナ王国で預からせていただこう、これは謝礼金だ」


「いらん、持って帰れ」


村長の態度は変わらず冷たいままだ。

使者の取り出した袋、恐らくお金が入っているのだろうそれも突き返してしまった。


「そうはいかん、貴公にはこれを受け取る義務がある」


しかし使者は村長の石を無視して袋を押し付けた。

それを忌々しげに見つめ、僕にその袋を押し付けた。


「たしかに受け取った、それをこの子らに儂個人の金として渡した。

文句はあるまいな」


老人の物とは思えない気迫で使者を睨み付ける村長。

それをあざ笑うかのように使者は手をひらひらと振って見せた。

問題ないという意味なのだろう。


「すまんな、儂にできるのはこれくらいじゃ」


村長は僕たちにそういったが、情報とお金を得たことは大きい。

そう伝えようとすると何も言うな、と首を縦に振られてしまった。


「それではそろそろ行きましょう」


使者がそういい、僕と美鶴の肩に手をまわした。

美鶴はその手をいやそうにはらい除け、僕は無視して美鶴の側に立った。

美鶴は僕の腕にしがみつき、僕の脇腹を指で小さく二回つついてから、二秒ほど指の腹を押し付けた。

昔から使っていた二人だけの秘密の暗号だ。


このサインは『どうにか抜け出そう』という意味で、塾や結婚式等の場面で多用されていた。

もっともその大半は失敗に終わっていたが、美鶴も今回ばかりはと僕の目を見つめてきた。

いつもこの視線に耐えきれずに悪戯に手を貸していたが、今回は僕も美鶴の意思に賛成だ。

このセレナ王国とやらの人間からはいい空気を感じない。

表現が難しいがそれ以外に言葉が見つからないのだ。


「ふむ、お二方は恋仲とみられるが」


「それがなにか」


「いやいや、仲睦まじく良いことですな」


使者の軽口にこちらは極力声色を変えずに答える。

その視線は美鶴を撫でまわすようにねっとりと見つめていたから、おそらくろくなことにはならないだろう。

だから、先に対策をとっておく。


「【パラディン】【ガーディアン】【サモナー】」


小さくつぶやいてカードからモンスターを召喚する。

パラディンは銀色に輝く鎧のモンスター、中には誰も入っていないが、召喚者が鎧を着用することも可能とカードには書かれていた。

また筋力やHPの数値が軒並みラットの20~30倍はあったのでそれなりに強力なモンスターのようだ。

ガーディアンはパラディンの逆で真っ黒な鎧のモンスター、それ以外は基本的にパラディンと同じだがこちらの方が筋力が高いという事。

ただしパラディンのが防御力は高い。


最後のサモナーは齢モンスターを召喚して戦えるようだ。

野宿の最中試したところ、パラディンやガーディアンクラスは召喚できるようだ。

またその召喚したモンスターは僕が召喚したものよりは劣るようだが、数は無制限らしい。


「こ、これは……」


「お気になさらず、僕の魔法ですから。

僕の命令がない限りあなた方に危害を加えることはありません。

『命令、僕たちに危害を加えようとした者を殺せ』」


先に命令がなければ害はないと伝え、そのうえで危害を加えたら殺す、と言葉にして見せる。

これだけでも十分な権勢になったらしく、使者は顔色を変えていた。


「危害を加えようとした者、その意思のある者でもよかったんですけどね」


最後にもう一つくぎを刺しておくことを忘れない。

先ほどの子の使者の視線は明らかに、美鶴に何かしらのアクションを起こそうとしていたものだ。

それがろくでもないことなのは目に見えているが、それをむざむざやらせるつもりはない。


「あぁ、当然僕たち二人は同室ですよね? 」


僕の言葉に表情をひきつらせたまま使者の人がうなずいた。

これで当面の危機は脱した。

後はどうにか逃げ出すだけだ。

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