二人の演奏
朝、目が覚めてからはあわただしかった。
まず宿屋の亭主に村の中で楽器を演奏してもいいか確認をとった。
村長に聞かなければわからないといわれ、村長のもとを訪ねたが二つ返事で了承された。
ただし条件として、村長もその場に居合わせる事、聞くに堪えないものであれば即刻中止させる事、その二つを約束させられた。
そして、昼になった。
昼食は軽めに済ませた後、村の広場に連れて行かれた。
そこには村中の人を集めたのか、はたまた勝手にうわさが広まって集まったのか、大勢の人がいた。
目算だが200人はいるだろう。
中には鎧を着た人もいるが、半分は何かしらの紋章が刻まれた鎧を着ている。
もう半分は皮鎧や、フルプレートメイルの人もいる。
「あわわ……」
美鶴はその人数と、剣幕に押され気味になってしまっている。
こうなると持ち直すまでに時間がかかってしまう。
……致し方あるまい。
「【魂の管楽器】」
あらかじめ取り出していたカードをポケットから取り出しピアノを召喚する。
美鶴は初めからヴァイオリンを握っていたが、今はカタカタと小さく震えているため僕がピアノを出したことにすら気づいていない。
けれど僕は美鶴を無視してピアノの前に立ち、小さく一礼した。
先ほどまでがやがやと話していた200人余りの聴衆が一斉に声を潜める。
いまだ震えている美鶴をよそに、ピアノの鍵盤を一つたたく。
そこで美鶴はようやく僕がピアノを取り出したことに気付いたようだが顔色は真っ青だ。
目くばせで任せろと伝え、演奏を始めた。
最初は僕のソロ演奏だ。
いやある意味助かった。
美鶴に先に演奏されると僕の出る幕がなかった。
『♪~♫~♪~』
昔ならっていた曲だ。
美鶴と一緒の時期に始めた曲だがあっという間に美鶴に追い越されてしまったのは今ではいい思い出だ。
そんなことを考えながら一曲弾き終える。
一度席から立ち上がり、聴衆に一礼する。
ちらりと美鶴を見ると表情が緩み、ヴァイオリンを構えてこちらを見ている。
歯を見せないように目元だけで笑うと美鶴も同じように返してきた。
再び席に付き、ポロンポロンと鍵盤をたたく。
それに合わせて美鶴が弦を引く。
ピアノとヴァイオリンの音が綺麗に溶け合うのを感じながら演奏を続ける。
間違いなく美鶴が僕に合わせてくれている。
そうでなければ僕の技量では美鶴においてけぼりにされ、ちぐはぐな音楽になってしまうだろう。
あぁ、久しぶりにやったけど、二人で合わせるのは楽しい。
違う世界に来てもそのことは変わらないんだな。
そう考えながらの無事一曲を引き終えることができた。




