今後の方針
「では第一回異世界会議を行いたいと思います。
議題は今後の方針について」
わざと冗談めかしたのは美鶴のため、ではなく僕のためだ。
正直な話をしてしまうと村にたどり着くまでは『村を探す』という目的のために平静を保っていられたが、その目的を遂げてしまった今はそうもいかない。
パニックを起こさないよう耐えるので精一杯だ。
「今後ねぇ……王道だと狩人の異世界版になるんだけどね」
美鶴が自信なさげにこたえる。
確かに以前美鶴が課してくれたマンガだとそういう展開が多かった。
「それも案の一つとして考えていこう。
もちろんそんな職業が存在しないことは念頭に置いておく」
「だよね、それ以外だと……持ち物を売っていくらかのお金を元手にどうにかするとか? 」
悪い案ではないがそれも問題がいくらかある。
例えば商売をするための権利などはどうか。
許可証や、登録が必要になってくるかもしれない。
何より持ち物を売ったところでそれほど大したお金になるとも思えないし、物価をよく知らないから何とも言えない。
「それに今地球産の物を売るのは控えたい」
もしかしたら今後の生活に必要なものがあるかもしれないし、不要でも後々高く売れる物もあるかもしれないから。
「じゃあどうするの? 」
「……一つ考えがある、美鶴はヴァイオリンを習っていたよな」
「うん、小学生のころからずっとやってたけど」
「僕はピアノを習っていた」
僕の場合は中学からだからそれほどうまいわけでもない。
けれど美鶴のヴァイオリンの腕は確かなものだ。
「まさかとは思うけど路上演奏?
さっきカバンの中一通り見たけど楽器なんかなかったよ」
「それは問題ない、【魂の弦楽器】」
アタッシュケースからカードを一枚抜き取って発動する。
永続型召喚カード、【魂の弦楽器】。
この楽器の音色を聴いた者の魂を揺さぶる。
その効力は演奏者の技量に依存する。
また町立が狂う事のない魔法の楽器である。
とカードには書かれていた。
書かれている絵柄もヴァイオリンのそれと全く同じだ。
「これで路上演奏を? 」
「小金を稼ぐ程度にできれば十分だ。
僕もピアノでサポートする、お願いしてもいい? 」
僕の言葉に美鶴が眉間にしわを寄せて悩み始める。
美鶴は確かにヴァイオリンはうまい。
けれどあがり症なところがある。
「わかった、でも本当に手伝ってよ? 」
「もちろん」
これで一つ、指針が決まった。
楽器で一稼ぎできればそれでいい。
だめならだめで別の方法を考えるしかないが……今はこれに賭けよう。
「じゃあ明日は昼頃から始めよう」




