街を出ようか
「ところで馬の他に移動手段はありませんか。
僕はまともな移動手段がほとんどないもので」
まとも、というのは人前で問題なく使えるという意味でもある。
たぶん人目に付くところでペガサスやユニコーンを召喚したら大問題になる。
今更だけどペガサスもユニコーンも馬だったな。
あまりに乗り心地がよかったので忘れてしまっていた。
たぶん彼らと普通の馬を比べ手はいけないんだろう。
「移動手段か……大手の商人の馬車に金を払って乗せてもらうか、定期馬車を利用するくらいだな。
うちじゃ馬以外に用意できるもんなんざないからな」
定期馬車、というのはたぶんバスみたいなものだろう。
一定額を払って目的地まで乗せてもらう。
こちらの世界だと村ごと街ごとで距離があるから火をまたいでの移動になりそうだしそれなりに高額なんだろう。
「ありがとうございます、定期馬車を利用してみます」
「それがいい、商人はがめついからな。
おっと俺やお前さんも商人だったな」
馬屋の言葉に僕はクスリとわらい、かれはガハハと豪快に笑って見せた。
やっぱりこの人は裏表がない面白い人だ。
お礼に酒を一瓶渡したらものすごく喜んでくれた。
自家製梅酒、便利だな。
それから街に出て、門の所で騎士に定期馬車について尋ねると二日後の午後から一本出ているらしい。
詳しく聞くと十日に一本の定期馬車があり、道中は騎士と討伐者が護衛についているから魔獣に気を付けていれば十分らしい。
また魔獣が現れても毎回最低十人は護衛がついているので大きな問題にはならないそうだ。
何より安全な街道を選んでいるので大事になることがまずないらしい。
ここは酒は出さずお礼だけにとどめる。
前にエロ本にきょどっていた騎士が僕を睨んでいるからだ。
たしかにからかったけど……そんなに睨まれても困る。
それからは日が暮れるまで街を探索して、売れそうな物や必要そうな物を買い集めた。
何しろこれからしばらくは扉の召喚が行えない、
それすなわち、シャワーやエアコンといった文明の利器に頼ることができないという事だ。
もし僕達が準備がお粗末だったら。
商人なのに世間知らず、もしくは怪しいやつらというレッテルが張られてしまう。
そうなると、今後の商人としての人生は破綻だ。
そう考えて気づいた。
僕、商人のふりをしているだけだった。
……過程が目的に挿げ替えられる、というのはこういうことを言うんだろうな。
反省しよう。




