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召喚術の支配者  作者: 人間失格
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街めぐり

ひとまず能力の確認はここで打ち切る。

何しろカレーのせいで気絶してしまい朝になってしまっていたから宿の従業員もそろそろ声をかけてくるだろう。

そう思い服を着替えて熱いシャワーを浴びて、宿の部屋に戻る。

デコイ達の様子を見る限り昨夜は侵入者はいなかったようだ。


ひとまず安心して僕だけロビーに降りる。

美鶴はまだ扉の向こうで号泣しながらおかゆを食べている。

また朝食の最中に「今日はパラディンと組み手続けるから」と言っていたのでパラディンと、ガーディアンも置いて宿の部屋には美鶴に化けたデコイを待機させておいた。


今日は……商売について少し勉強をしようと思う。


「おはようございます、昨夜は……ずいぶんお楽しみだったようですね」


「おはようございます、おかげさまでぐっすりでした」


多少の擦れ違いは気にしない。

この場合僕が意図的に擦れ違いを発生させているわけだけど。


「それで少しお聞きしたいのですが、この街で商売を行うのに資格とかは必要ですか? 」


「資格、ですか。

そういったものは……一定額の税金くらいでしょうか。

この前の競売会は商売ではなく物々交換の一種にあたるので税金を払う必要はありませんが」


僕の問いに従業員が答えてくれる。

けれどあの競売会が商売にならないとは、基準は何処にあるのだろうか。


「たとえば商店を開いたり、屋台を出したりした場合は商売に当たります。

あの競売会は欲しい物を持っている人に個人的に譲ってくれないかとお願いしたようなものですから。

税金の事を考えても普通に商店を開いた方が利益がありますので、お客様のような駆け出しの商人の方が足場作りや資金調達のため以外で競売会をおこなう人は滅多にいません」


僕の様子を見てか従業員が答えてくれた。

なるほど、そういう基準なのか。

しかしそうなると……この街で商売をするのは控えたほうがいいだろう。


たぶん僕達の噂はもう広まっている。

上等な酒やらを撃っている商人夫婦。

けれど強盗を蹴散らす程度の実力もあるというくらいは知られていてもおかしくない。

もしかしたら酒場で暴れた件も噂として広まっているかもしれない。


珍しくて上等な品物を扱っている、高い戦闘力を誇る夫婦の営む店。

僕だったら遠巻きに見ているだけで絶対に利用しない。


「なるほど、ありがとうございました」


従業員に礼を言って宿から出る。

その際美鶴に断りを入れて、広場の中で僕の部屋の扉を召喚して、宿から広場へ続く扉は決しておく。

これも昨日知ったことだが召喚した扉の中で他の扉を召喚することができるうえに、先に召喚した扉を消しても空間内で召喚した扉は保持されたままになる。

とても便利だ。


宿から出て直ぐに雑貨屋に行き旅用のフード付きマントを二人分買う。

それを無限収納のカバンに詰め込み、今度は武器屋に向かい解体用のナイフを購入。

それから目についた店に立ち寄り、旅に必要そうな物と町の特産品を買い集めた。

旅の商人のふりをする為の道具だ。

僕には必要のないものも多いが、身分を詐称するのだからこれくらいの準備は必要だろう。


後はどうしようか、そう考えたところであるものに気付いた。

『荒野の馬屋』、ふと目についたので中に入ってみると小柄な男性がいた。


「いらっしゃい、なにが欲しいんだ」


男性の言葉に、何も考えていなかったことを思い出し少しあわてる。

なんて答えるべきか考えていたが、正直に話した方がいいという結論に行きついた。


「すみません、ひやかしです」


「正直で結構、俺もお前さんがこいつらを変えるような金持ちじゃあないってのは、まぁ見ればわかるさ」


男性の言葉に苦笑いを浮かべる。

初対面でこれだけ言える度胸は見習いたいものだが、これで商売が成り立つのだろうか。


「ここはどのようなお店ですか」


「見てわかんだろ、馬を売ってるんだよ」


たしかに見たままだ、店の名前にも馬屋とある。


「最低価格金貨200枚だ」


なるほど、高価だ。

恐らく地球でいう車のような感覚なのだろう。

あれば便利だがければ代用可能な足、とでもいうべきか。


「競売会で懐を温めたらしいが、その温もり全て吐き出すわけにはいかんだろう」


やはり、競売会で荒稼ぎしたことは知れ渡っているらしい。

少し派手にやりすぎたしこのくらいは仕方ないだろう。


「そうですね、妻の平手打ちほど怖いものはありませんから」


「がはは、違いねえ。

女房ほど怒らせちゃいけねえもんはこの世にいねえさ」


だんだんこの人の性格が読めてきた。

いい意味で裏表のない人なんだろう。

お世辞にも商人向きではないのだろう、いやもしかしたらこういう人の方が信用されやすいから商人向きなのかもしれない。

どちらにせよ、隠し事僕のような人間に同じことをするのは無理だ。

どちらかというとそれは美鶴のが得意な分野だ。


「それで、本当にただの冷やかしか」


「えぇ、馬屋とあったので今後いろいろな地域を回る際には馬も必要かな、と思いまして」


「それについては否定はしねえよ。

たしかに長距離を商品を持って移動するならこいつらは絶対に必要だ。

けれどお前さんはまだまだ必要ないだろう」


「そうですね、ですから下見です。

それに馬は移動手段としてもあれば困らないですからね」


とはいえ僕は乗馬なんて経験がないから練習が必要だ。

こちらの世界に来て体も丈夫になったので落馬しながら覚えるとしよう。

美鶴は抜けているところも多いが運動神経はいい方だから練習をすれば乗ることくらいはできるだろうし。


「それにしても乗馬か……」


昔、乗馬体験などでやったことはあるが幼稚園の頃に全身べとべとになるまで舐められたのを今でも覚えている。

あの匂いと舌のざらざらとした感覚は忘れられない。

……思い出してブルーになった。

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