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召喚術の支配者  作者: 人間失格
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改めて方針

朝になって日が昇る前に宿の部屋に戻った。

こちらの世界は皆朝早くから活動するため、五時前には起床していないと宿の従業員に起こされてしまう。

僕は元々夜ふかしはしない、というかできない人間なので朝は早かったし、美鶴も朝の稽古やらで早朝から活動しているので早起きは苦ではない。

とはいえ美鶴は寝坊をよくするので僕だけ起きて美鶴はデコイでごまかすということもあるが、甘やかすのはよくないのでしっかり起こしている。


「おはようございます、失礼してもよろしいでしょうか」


身なりを整えていると部屋の外から宿の従業員から声をかけられた。


「起きてますよ、どうしました」


「騎士団の方が取り次いで欲しいとのことです」


騎士団、というと昨日の強盗たちの件だろうか。

それとも酒場で大暴れしたことだろうか。


「分かりました、すぐに行きます」


従業員にそう伝え、未だに寝ぼけ眼をこすっている美鶴を起こす。

服装を整えさせる、言うまでもないことだがいかがわしいことはしていないので寝巻きから私服に着替えさせるということだ。

それから寝癖を直させて、宿のロビーに降りる。

そこには青い顔をしたアルフォンス騎士団長と、バーテンダーがいた。

あぁこれは酒場で大暴れしたことが原因だな。


「おはようございます騎士団長殿、それと……」


「セイドリックといいます」


「セイドリックさん、昨日はお騒がせしました」


丁寧に挨拶してくれたバーテンダーさんにも挨拶をする。

その際になんの要件かわかっているぞと暗に伝える。


「要件はわかっているようですね、昨日酒場で乱闘があったと聞きましてそのことを聞こうと思いましてね」


アルフォンス騎士団長が僕の方を見る。

やはり顔色が悪いのは僕たちが二日連続で問題を起こしたことも原因だろうか。


とりあえず事の顛末を騎士団長に伝える。


「ちなみにあの後酔ってあなた方に絡んだ三人は騎士団に連れて行かれました。

まだ騎士団でこってり絞られています」


セイドリックさんも僕の言葉に補足してくれる。

それに所々でアルフォンス騎士団長が制度リックさんに視線を向けて事実を確認している。


「なるほど、分かりました。

ありがとうございました」


アルフォンス騎士団長がそう言うと、早々に立ち上がって宿から出て行ってしまった。

セイドリックさんはそのあとに続いて、僕たちに会釈してから出て行った。


「春樹……」


美鶴が僕のことを見上げている。

その視線から自分の行動の結果に嘆いているのを感じる。

すこし、へこんでいるのだろう。


「過ぎたことだ、昨日も言ったけど次を起こさなければいいよ」


美鶴の頭を撫でて、あやす。

昔から彼女は落ち込んだ時はこうされると落ち着くと言っていた。


「それより、これからの行動を改めて決めよ」


僕の言葉に美鶴が頷く。

そして周囲を見渡して人の気配を探る。

従業員の他にも数名、僕たちのことを探うているようだ。

あちらこちらで僕たちに視線を向けている。


「失礼、夫婦の営み、もとい秘め事がありますのでしばらく部屋にこもらせていただきます」


総従業員に告げ、美鶴の手を取り部屋に戻る。

従業員を中心に女性が顔を赤くしていたのが見えたが今はそれどころではない。

部屋に戻り、扉を出して僕の部屋に戻る。


「方針は三つ。

ひとつは早々にこの町を去る。

二つ目はしばらくこの街にとどまって様子を見る。

三つ目はいっそこの街に拠点を構える」


「はいっ、もうしばらくこの街にとどまりたいです」


「お、おう」


美鶴が珍しく自己主張する。

いや、美鶴も少し変わろうとしているのだろうか。


「とどまりたい理由は? 」


「この街の美味しいものを食べ尽くしていない、あの卵蒸しもまた食べたい! 」


あぁくいいじか、美鶴は食べ物に関しては人三倍執着している。

たしかおじいさんの教えだったか。

美味しいものを食べているときは敵も味方も善人も悪人も神も悪魔も関係なく幸せだ、だったかな。

その考えには同意したが……孫は曲解したのか少し歪んでしまいましたよ。


「それに、元の世界にも戻れる補償がないから早いうちにこの世界の常識を勉強しておきたいの。

お金の価値、一般的な食べ物に法律、他にもマナーとか細かいことも」


美鶴は美鶴でしっかり考えている。

今までとは違って自分なりに考えて答えを導き出したのだろう。


「いい案だ、わかったしばらくこの街に留まろう。

だけどいざという時は逃げられるように準備だけはしておこう」


たしかカードの中にはペガサス以外にも空を飛べるカードがあったはずだ。

そのカードを使えば脱走はできる。

ついでに少し目立てばその情報ばかり流れてそれ以外の情報はないがしろにされる可能性もある。


下手をすれば戦闘する必要もあるが……物量作戦を取ればその隙を突くこともできる。

最悪の場合はまた人殺しをすることも覚悟しておく必要があるかもしれない。


前に使者を殺した際は夜中に、美鶴にバレないように嘔吐したこともある。

今では夢で見ることもなくなったが……気分のいいものではない。


気分のいいものではないが、やらねばならないならやってやる。

それだけだ。

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